第103話 ミラの日記(一):資格のない朝
きょうから、にっきを、かく。
レオンが、いったから。「じが、かけるようになったら、まいにち、ひとつ、かくといい」って。「なにを?」ってきいたら、「なんでも」っていった。レオンは、まいにち、いたに、なにかかいてる。あれが、にっきなのかとおもって、きいてみたら、「あれは、たなおろし」だって。たなおろしって、なんだろう。おかみさんにきいたら、「かぞえることだよ」って。なにを、かぞえてるんだろう。
わたしは、じが、四十こ、かける。にじゅうさんにんの、なまえが、かける。ルナ、トビ、ネル、ハンナ。おわんのそこに、ぜんぶかいた。そしたら、とりあいが、なくなった。おかみさんが、「あんた、じが、かけるようになったのかい」って、めをまるくした。
レオンの、けいかくひょうの、おかげだ。にかげつのよていが、いっかげつでおわった。レオンは「がくしゅうこうりつこうじょうのしわざだ」って、へんなことをいった。へんなことばを、たくさんしってるひと。
きょう、エルフのひとと、はなした。
エルフィーナさん。レオンの、きょうどうけんきゅうしゃ。きれいなひとだった。みどりのめで、わたしを、ずっとみてた。みられて、こわくはなかったけど、へんなきもちだった。「せいれいが、みえるか」ってきかれた。みえない。でも、「かぜが、なでるかんじは、ある」っていったら、エルフィーナさんは、しばらくだまってた。
それから、「いつから」ってきいた。
いつからだろう。ちいさいころから、ずっとだ。しんでんで、「たいしょうがい」っていわれた、あのひも、そうだった。ゆかが、あたたかかった。しろくて、つめたいゆかなのに、わたしのあしのしただけ、あたたかかった。しんかんさまにいったら、「きのせいです」っていわれた。
さんかいはかって、さんかい、おなじだった。ななさいだった。
おかあさんは、そのとしに、いなくなった。おとうさんは、もっとまえ。おかみさんが、ひろってくれた。「おまえは、しかくがなくても、てがうごく」っていって、ちゅうぼうに、いれてくれた。
しかくが、ない。
まちのひとは、わたしを「しかくはずれ」ってよぶ。がっこうにいけない。しけんをうけられない。がんしょのときに、はじかれる。しんでんが、そういうきまりをつくったんだって。「たいしょうがいのものは、しんの、みちしるべの、そとにいる」。
みちしるべの、そと。
でも、まいにち、あさがくる。あさがくると、おなかのすいたこが、ろじにいる。だから、なべをだす。それだけだ。
レオンは、わたしのしかくのらんを、みた。あったさいしょのひに、あの、ひかるいたで。みて、わらわなかった。それどころか、「なんで、そんなにたのしそうなんだ」って、きいてきた。
はじめてだった。わたしのらんをみて、わらわなかったひとは。
レオンは、しかくのはなしばっかりしてて、たまに、わたしのこと、みてない。でも、みてるときは、わたしを「たいしょうがい」じゃなくて、「ミラ」でみてる。それが、わかる。なんでわかるのかは、わからないけど、わかる。
きょう、トビがなおった。レオンの、くさのくすりで。よがあけるまで、みんなおきてた。
レオンは、そのあとで、「まものちょうりし」っていう、しかくをとるっていった。ゲテモノしかくだって、エルフィーナさんがおこってた。
でも、レオンは、てが、ふるえてた。しかくのはなしをしてるのに、ふるえてた。あんなの、はじめてみた。
なんでふるえてたのか、あした、きく。
きょうは、ここまで。じが、まだ、へた。




