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異世界資格マスター ~最弱村人から始める資格無双。試験分析EXで世界をアップデートします~  作者: 東雲 諒杏
第五章「魔法士試験と魔導気象士」

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第102話 魔物調理師、あるじゃないか


 煎じ薬は、その夜、効いた。


 ニガヨモギモドキの乾燥草を煮出した。苦い。立ち上る湯気だけで舌の奥が苦くなるような匂いだった。

 トビは吐いた。吐いて、ミラがもう一度飲ませた。三度目で飲み込んだ。夜半に、腹の膨れが引いた。朝、トビは麦粥を一口食べた。


 図鑑。HP、十四。状態異常、なし。


 私は路地の壁にもたれて座っていた。一晩寝ていない。ミラも、ルナも。ルナはミラの膝で眠っていた。


「……レオン」


 ミラが言った。声が疲れていた。疲れていて、いつもの笑いがなかった。


「トビは、来年も拾って食べる。……去年も、その前も、誰かが拾って食べて、死んだの。解体場の裏の肉」

「……禁じられているから、捨てられる」

「捨てられるから、拾われる。……あの肉、毒さえ抜けば食べられるって、女将さんが言ってた。でも、毒を抜くのは資格が要るって」


 資格。


 私は図鑑を開いた。魔物肉。調理。検索。


【検索結果:「魔物肉」「調理」】

・『魔物調理師(C級)』 受験料:15,000G 合格率:11%

 ――魔物由来食材の、有毒部位除去・解体・調理を認定する。

  保有者は、魔物肉の、加工・流通を許可される。

 試験内容:筆記(解体学・毒物学・栄養学)

      実技(オーク肩肉の神経毒除去/ワイバーン卵の調理)

 備考:志望者数、年間十数名。「ゲテモノ資格」と俗称される。


「……あるじゃないか」


 読んで、しばらく黙っていた。


 あった。この世界には、ちゃんとある。捨てられた肉を食べられる肉に変える資格が。三千年前から、図鑑に。志望者、年間十数名。


 ゲテモノ資格。


 合格率、十一パーセント。剣士の十八より低い。魔法士の十五より低い。実技が二つ。オーク肩肉の、神経毒除去。


 神経毒を包丁で除去する。


 私の手が震えた。


 転生前の記憶を思い出す。初めてのフグ調理。まな板。白い身。白い天井。


 私は自分の手を見た。三か月、魔法で炎を出してきた手。木剣を握ってきた手。

 そういえば、包丁はこの世界でまだ一度も握っていない。きっと、怖かったのだ。


「……レオン? 顔、白いよ」


 ミラが覗き込んだ。


「……ミラ。魔物調理師って資格が、ある」

「うん。女将さんが言ってた」

「僕がそれを取る」


 ミラはきょとんとした。それから、疲れた顔のまま笑った。いつもの笑いだった。


「……それ、剣より強くなるの?」


 剣より強くなるのか。


 私は考えた。魔物調理師は、私を一ミリも強くしないだろう。オークを倒せない。魔王軍とも戦えない。年収は番付の下のほう。ゲテモノ。


 だが、トビは来年も拾って食べる。


「……わからない」


 私は言った。


「わからないけど、トビが来年拾って食べる肉を、俺が毒抜きできる。……それは剣より強いか弱いか、わからない」


 ミラはルナの髪を撫でながら言った。


「わからないなら、取るんでしょ」


 その日の午後、学院の実技場で、私はエルフィーナにそれを言った。

 彼女は共同研究の届けの写しを持っていた。「研究題目、『燃焼の第三要素と、精霊の駆動原理について』」。


「……魔物調理師?」


 彼女は写しを持ったまま言った。


「国家を救う魔法の才を。同点首席を。大魔導士の推薦枠を。……ゲテモノに?」

「面白そうだから、です」


 彼女はしばらく私を見て、それから天を仰いだ。仰いで、七度目のそれを言った。


「……気に入らん」


 だが彼女は、写しの研究題目の隣に、木炭で小さく書き足した。

『第二研究題目:魔物由来食材の、有毒部位と、魔素の関係について』


「……手伝う。エルフは魔物を食わん。食わんが、毒の理屈は知りたい」


 秋が来ようとしていた。私の第二の人生の、最初の夏が終わった。


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【人生ステータス】(第二部終了時点)

名前:レオン・シラハネ  年齢:15歳  種族:人間

Lv :16  職業:魔法士/魔導気象士/魔導理論研究者/剣士見習い/清掃員/村人/プロジェクトマネージャー

HP :126 / 126  MP :72 / 72

【基本能力値】

筋力:18 / 敏捷:15 / 魔力:37

知力:65 / 魅力:13 / 運 :15

【保有資格】10 / 12,000 + 冒険者ギルド登録(F級)

 村人E/雑草判定士E/剣士D/下水清掃士E/スライム鑑定士E

 気象観測士C/初級魔法士D/古代エルフ語通訳士C/魔導理論学士C/魔法士C

【固定スキル】資格神の祝福/資格図鑑/試験分析EX

【習得スキル】火魔法Lv3/風魔法Lv2/気流制御Lv1/熱力学制御Lv1/術式構築Lv3

 古代語解読Lv2/文法構造推定Lv2/論述Lv2/気象観測Lv1

 剣術Lv2/受け流しLv1/後の先Lv2/物理予測Lv3

 消毒Lv1/危険気体察知Lv1/鑑定Lv1/毒草判定Lv1/魔物鑑定Lv1

 農事暦Lv1/計画立案Lv1/記憶強化Lv1/学習効率向上Lv4/試験集中Lv5

【複合技能】環境管理(中級)/古文書気象解析 【称号】畑の見張り番

【人生評価ステータス】

挑戦力:46 / 共感力:20 / 幸福度:40 / 社交性:9

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(第二部「魔法士資格編 ―数式で燃やす炎―」 了 / 幕間二「ミラの日記(一)」に続く)


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