-5- 骨董(こっとう)
骨董の価値は、人それぞれで、ある人は百万円出しても手に入れられれば惜しくないっ! と思いますが、また別の人は、そんなガラクタは百円も出せんっ! と、ゴミ同様に感じますから、価値が分かれる面白い代物です。
藤川は、とある骨董市に来ていた。
「お客さん、コレなんかお買い得ですよ…」
立ち止まっていろいろとみている藤川に、店主が近づいて小声をかけた。
「コレが、かいっ?」
「ええ、こう言っちゃなんですが、コレは骨董市に出すような代物じゃないんですっ!」
疑わしく眺める藤川に、店主は強調して付け加えた。
「だって、現にこうして出てるじゃないですか…」
「ええ、それはそうなんですがね。私も暮らしに困っている人から譲り受けましてね」
「…そうなの?」
藤川はいつの間にか店主の口車に乗らなくてもいいのに乗って、その気になっていた。^^ 店主の口車はその後もいっこうに勢いの衰えを見せず、気づけば、藤川は代金を支払い、袋を下げて店を出ていた。店主の口車により、その骨董の価値は藤川の心の中で次第に増幅されていったのである。
一年ほどが経ち、藤川は図書館の図鑑で買った骨董を調べてみた。すると、ほぼ同じ骨董が国立美術館に展示されていることが判明した。
『まさか…』
藤川は最終判断した。ところが、である。その骨董は正真正銘の本物だったのである。そのことに気づかないまま、その骨董は藤川の部屋の片隅で、今も埃を被って飾られている。
価値に気づかないまま放置される、そういうことって確かにありますよね。^^
完




