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第四章 崩壊

その日は、静かだった。

何も起きない時間が続く。

それが逆に不気味だった。

夕方。

ロビーには数人が集まっていた。

姉御。

幼馴染。

探偵。

そして神父。

「……今日は平和だな」

姉御が言う。

「それが一番怖い」

探偵が返す。

「何も起きない時間は準備の時間でもある」

「やめてよそういうの」

苦笑いが漏れる。

その時だった。

ドンッ。

鈍い音。

遠く。

だがはっきりと聞こえた。

「……今の」

全員が立ち上がる。

「行くぞ」

探偵が先頭を走る。

廊下。

音のした方向へ向かう。

一つの扉が開いていた。

「ここだ」

中へ入る。

そして。

全員が止まった。

芸術家が立っていた。

壁を向いて。

微動だにしない。

「……おい」

返事はない。

姉御が声をかける。

一歩近づく。

その瞬間。

芸術家の身体が崩れ落ちた。

床へ倒れる。

赤が広がる。

「っ……!」

誰かが息を呑む。

胸元には深い傷。

探偵が確認する。

そして静かに言った。

「……死んでいる」

沈黙。

誰も言葉を発せなかった。

さっきまで生きていた人間が。

今はもう動かない。

「……なんで」

姉御が呟く。

答える者はいない。

「他を確認する」

探偵が言う。

「犯人が近くにいる可能性がある」

全員が散った。

部屋を調べる。

廊下を確認する。

誰も一人にならないよう注意しながら。

数分後。

「……おい」

姉御の声だった。

少し離れた部屋の前。

扉が半開きになっている。

全員が集まる。

探偵が扉を押し開けた。

中を見る。

そして。

言葉を失う。

正義の男が倒れていた。

動かない。

目は開いたまま。

焦点が合っていない。

「……嘘だろ」

幼馴染が呟く。

姉御が駆け寄る。

肩を揺らす。

反応はない。

探偵が脈を確認する。

そして首を振った。

「……ダメだ」

その一言で十分だった。

二人目。

今度は未遂じゃない。

完全な死だった。

誰も動けない。

芸術家。

正義の男。

短時間で二人。

「……どういうことだ」

誰かが呟く。

「一人じゃないのかよ」

自然な疑問だった。

だが。

「いや」

探偵が言う。

「一人だ」

「は?」

姉御が振り返る。

「なんでそう言える」

「状況だ」

探偵は死体を見る。

そして静かに続けた。

「同時じゃない」

「時間差だ」

「最初に芸術家」

「その後に正義の男」

「順番に殺されている」

「証拠は」

「ない」

即答だった。

「だが、それが一番自然だ」

誰も納得はできない。

だが。

否定もできなかった。

「……会議だ」

探偵が言う。

「今すぐ始める」

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