花束の魔物と落園
「うーん。そういえばこの花畑って魔物居ないなぁ」
歩いているとそう違和感を覚えた。川のせせらぎと蛾の羽ばたき音まで聞こえてきそうなほどだ。
「え?おにぃちゃん何言ってんの?」
「そうだよ!魔物ならそこら中にいるじゃん!」
と言って双子が指さしたのは屍の上に咲いた毒々しい花々だった。
「え?どういうことだ?」
と思っていると双子はポシェットの中からおもちゃのようなハサミを取り出して近くの花に近づくと。
「えい!」
と声を上げて茎から切った。
『プグキュ~~~~』
と空気が抜けるような音が響き急に萎びた。
そのまま双子は花を持って見せて来た。
「ほら!魔石!」
え?魔石ってこんな綺麗な石なの?花はユリのような形状をしているのだが、その中央の窪みの本来であれば蜜が溜まっているところに琥珀のような石がこびりついていた
「へぇー。これが魔石なんだー。初めて見た。あれ?それじゃあこの前のウサギさんとかはどうして魔石が入ってなかったんだ?」
「えっとねー。あのウサギさんはー生まれたばっかりだから」
といった。そういえばこの場所の屍って割ときれいだな。どうしてだと思っていたが、少しずつ食べていたのか?これだけ広い場所を埋め尽くすほどか。
「神のおじぃちゃんが言ってたの!なんだったっけなー。あ!ニンゲンは空気中の魔力を一番効率よく取り込めるんだっけ?その代わりに魔力を生み出す器官もないし調節する器官も弱いってー」
思い出せてよかったーとでも言うようにドヤ顔をする叶を撫でてほめ、いつの間にか横にいた真も一緒に撫でる。こういう事は平等にとは思うんだが、どうも無理なようだ。
「そうか。ってことはここはほとんど魔物ってことになるな」
なんか不思議な感じだ、こういうときってこう、襲ってような花弁の隙間から樹液を垂らしながら
『シュルルルルルルル~』
人も丸のみにできそうなほど巨大で、
ボゴボゴボコ
根とツタを使って拘束するような。
ビュン!ビュン!
そうそう丁度このような見た目のー。・・・え?
満面の笑みで振り返るとさっきまで地面に埋まっていたであろう花畑が丸ごと持ち上がったような頭をし、体?は人骨を纏ったような見た目をしている。
「モ〇ボル?」
『シュルルァア(ごちそうみっけ♡)』
少し時間が止まったような感覚があり、次に俺が動き出したのと、モ〇ボルが動き出したのがほぼ同時だった。俺は足元にいる双子を両腕に抱え上げて後ろに飛び退く。
『シャルァア!(ごちそういただきます!!)』
飛び退いた先にまたモ〇ボルがいた。やばい!止められない!食われる!
「おにぃちゃん!『君が食べるのは岩だよ!』」
真がそういった瞬間にモルボルの丁度上の岩の塊が落ちてきて、口の中に入ってモ〇ボルが破裂した。
それを皮切りに地面の花畑が蠢き、大小さまざまなモ〇ボルが姿を現した。・・・きめぇそういえばこいつって何て名前なんだろう。
そんなことを考えながら俺は双子を動きやすいように位置を変えると包囲網を突破しようと考えを巡らせる。
近くにいるモ〇ボルは五体。真後ろ5時の方向に一体、正面1時、11時、2時の方向に計三体。距離目測3くらいか?それとさっき倒した串刺しのやつ。
武器が短くなったおかげで取り回しが楽になった。とりま試し切りを始める。
「叶は後ろの警戒とできれば防御をお願い!真は岩で攻撃、崩落させないようにね!」
保護者として子供に頼むのはどうかと思うんだが、この場面だと仕方がないと割り切ることにする。
正面のモ〇ボルに集中し、武器を構える。本当なら根元の幹の部分を切りたいところだが、子供たちを危険に晒すことになる。それは大人として見過ごせない!・・・同い年くらいだけど!!見た目が大事なの!
そうこう考えているうちにモ〇ボルの一体がツルを鞭のようにしならせて俺たちを捕獲しようとしてきた。
それを左手で捕まえ、双子にツルが当たらないように気を付けながら勢いを利用し、ジャンプし、ツルを押さえつけ、得物でなるべく根元を切る。割とすっぱりと切れたので耐久性はそれほどない様子だ。
ツルが一瞬赤くなったように見えたが今は気にせずに今度はこちらから攻撃を仕掛ける。
「おにぃちゃん!後ろ!『地面の岩がひっくり返るよ?!』」
真がそういった瞬間俺の真後ろにあった骨の土の下にあった岩が畳返しのようにひっくり返り、後ろのモ〇ボルの飛来物を受け止めた。
「おにぃちゃん!そのマントを掴んで殴って!!『衝撃で破裂するようにできてるから!』」
一瞬で判断した俺はマントの黒い靄を魔力を流して顕現させ掴み、こぶしに纏わせて岩を全力で殴る!
その衝撃で岩が黒炎に包まれ、散弾のように弾け跳び、モ〇ボルに着弾した。すごい威力だ。
「おにぃちゃん後ろ!」
叶がそういった瞬間にバリン!と音を立ててさっきの遠距離攻撃が空中で止まった。これってもしかして
「人間の肋骨に、背骨?随分と鋭利だな」
といいながら黒いマントを翻して燃やす。よく燃える。どうやらこの黒いマントスートライトで鍛えた武器は追加効果で火をつける様だ。しかもなんか違うような火だな。確か植物って意外と燃えにくいんだっけ?しかもこのモ〇ボルって明らかに瑞々しい感じだしな。
なんてことを考えているとさっき俺がツルを切ったモ〇ボルがいきなり苦しみだし、奇声を上げて火に包まれた。
え?え?え?どういう事だ?マジで意味が分からん。あ、もしかしてさっきのあれか!切った時に赤いものが見えたが。ってかなんか顔が見える気が。
「おにぃちゃん!出来たら一か所にまとめて!」
「叶?あ、ああ分かった!」
何を言いたいのかわからないが少なくともここにいる連中を一か所にまとめればいい事だけはわかった!
「ちょっと揺れるぞ!!」
というと双子は俺のマント下に隠れて自分のマントに魔力を流して巻き付く。
そして背を低くして足に魔力を集中させ、勢いよく走る。靴が特別製なのでいつもより走りやすい。そしてモ〇ボルの足のような根を魔力を流さずに切り落とすと、真が地面の岩を持ち上げてモ〇ボルを引っぺがす。
「ありがとう!真!」
次に一番遠かったモ〇ボルに近づくと今度は琥珀色の濃厚な蜜を放って来た。おや?魔法の気がする!!
ラウンドシールドに魔力を流し、魔法を受けようとする。
蜜はかなりの速度で撃ち出されていたが、俺が盾を構えるとほぼ同時にその速度が遅くなり、次第に勢いを無くして俺の少し前に落ちた。
踏まないように気を付けながら撃ちだした器官目掛けナイフを投げて引き裂く。撃って来たモ〇ボルの足元を見るとまだ新しい骨が黒く染まっていた。
「これはもしかして・・・」
剣を構えて地面に突き刺して魔力を流すと、モ〇ボルの足元が燃えはじめ、屍の部分が燃え尽きた。
「真!頼める?」
というと真が頷いて岩を動かしてすべてのモルボルを一か所に集めた。
「叶!集めたぞ!」
と言った瞬間にモ〇ボルの炎が引火した。
「うん!じゃあこのままちょっと待ってから浄化するね!」
へ?待つの?!まあいいか。この調子ならすぐに燃え尽きるだろうからと、双子を地面に降ろす。
「さてと。どういう事か神様のいう事を教えてくれるか?」
と聞いてみるとある意味想像通りの結果だった。
「うん。おじちゃんが言うにはこの魔物たちは人をたくさん食べたんだってー。それ自体は自然のコトワリ?ってやつだから別にいいんだけど、問題なのはこの人たちに意思がまだあって、魂?ってのが囚われているといってたー!」
という事なのだそう。嘘だろ?外に出ようとした矢先にこんなトラップってな。最悪だ。趣味が悪い吐き気がするな。




