浄怨の焔と勇者たちの事情
「こっちこっちー」
叶に手を引かれてそのままついて行くと新しく出来た切れた岩間の隣の棺に新しく石で出来た棺がデンと鎮座していた。
「ここに入れてってさー」
というので壺からイタコ・ザ・エンプレスだった子供の骨をその中に納める。
すると俺が何も触っていないのにもかかわらず勝手に石蓋が動き出して石棺が閉じた。
「……で?これから何かあるのか?」
暫くの間静寂があったが、何も変わらないので叶に聞いてみたところかわいく首を傾げて。
「さぁ?おじちゃんたちからは待てば分かるってー。何か集中しているー?見たい」
うーんそれならしばらくかかりそうな予感がするなあ。
「それじゃあ先に飯にするか!」
というと同時に双子の腹の虫が大合唱を始めた。
「っくくははは!」
腹を抱えて笑う。さて。ご飯にしようかなー。あ、そういえばちょっと試してみたいことがあるんだよなー。
「じゃあご飯を食べたら一緒に風呂に入るか?先がいい?」
というとすごく元気になった。
「先にご飯!お腹空いたー!」
キッチンに移動してから大きめのグラスを用意して冷凍庫に冷やし、アイスを仕込みながら先にアイスを作る様のミックスを作る。
1生クリームに蜂蜜、バニラエッセンス(仮)、塩を少々入れる。
2生クリームを少しずつ温めながら全体を馴染ませるように混ぜる。
3終わったので空気を含ませるように勢いよく混ぜる。
4冷凍の魔道具に入れながら再び混ぜてアイスを作る。
5ペインバタフライの蜜を鍋にかけ、イチゴを潰しながら入れ、半分を賽の目切りにしていれる。
6作りだめしておいたパイ生地を持ってきて料理用に3分の2を冷蔵庫に収納して、残りのパイ生地をある程度砕いてコーンフレークの替わりにする。
さて。パフェの仕込みはこれで完成っと。さて次はっとご飯にするかなー。
うーん。さっさと食べたいしドリアにするかなー。と適当に野菜や食材を取り出して適当に一口大に切る。
次に鍋に水を少し入れてトマトを入れて潰し、ミンチと一緒に煮込み、追加で新しい肉をサイコロサイズに切って再び煮て、塩コショウと香草を入れ、更に煮詰める。
そしてご飯をよそって煮詰めたソースを入れてチーズを入れて焼き上げる。
焼き上げている間に試してみたかったことをして見ようと思う。
今回先程のイタコ・ザ・エンプレスの呪いっぽい炎を吸収して、整備してみたところ、管の奥の方にかなり粘度の高い蜜が取れた。まるででんぷん糊の様だった。
今回はそれに薬草をすり入れて、柑橘の皮を煮詰めた汁を混ぜる。最後にそれをお湯で薄めて完成!
さぁてとっとそろそろいいかなー窯からドリアを取り出してテーブルに持って行くと既に双子がテーブルについて大人しく座っていた。本当に行儀がいいな。
「「「いただきます!!」」」
「熱いから気を付けろよー」
といって双子によそって手渡してあげる。
「うん!ありがとう!」
双子はスプーンを順手に持ち食べ始めた。この子たちって見た目五歳児なのに実は同い年なんだよなぁ。見えないけど。
ご飯を食べた後、薬湯風呂を入れて一緒に入る
「あ゛~~~~~ぎぼぢいー」
ともはやすごい声が思いっきり漏れでた。子供たちもくたくたの様子で湯船の中でうつらうつらと船を漕いでいる。
眠たい二人が溺れないようにお湯から上げて体を拭いて服を着せてベッドに二人を寝かせてオレも他の部屋で寝ることにする。
疲れすぎてベッドに入った瞬間俺は底なし沼に沈むように眠りの海に旅立った。
次に目を覚ましたのは推定真夜中だった。一応この空間にも暗くなる時間がある。俺はそれを便宜上夜と呼んでいる。
家の裏からガタガタという音がした気がした。
俺は寝ぼけ眼を擦りながら双子を念のために見て見ると小さな山が二つ出来ていたのでいることが確認できた。ってことは他の誰かというか何かかな?
武器とカンテラの骨組み、回復薬を手に取って静かに家の裏手の石棺のある場所に移動する。
「全く、眠たいのに誰だよ全く」
音のする場所を見て見ると石棺がお重さなんてないかのようにガタガタと揺れ始め、さらに普通の木棺も大量に地面から生えてきていた
全く、こんなことに気が付かないなんてさ、よほど疲れていたんだなぁ。おや?ようやく生え終わった様子だ。
なんだこれッと思っていたら俺と石棺の間に生えていた木棺たちがズズズと鈍い音を立てながら道を空けた。
空いた道に沿って石棺の近くまで歩いて行くと石棺が再び動き出し、ふたが開いて夕方(仮)に納めたイタコ・ザ・エンプレスの子供?が出て来た。
俺は慌てて武器を構えると無警戒な表情を向けて来た。なんだ?なぜ顔が見えないのに表情が?朗らかというか優しい目をしている。
俺が自然と警戒を解くと話しかけて来た。
『君が私たちをここに連れてきてくれたのかい?…薄れている意識の中でも覚えているよ』
「……」
確かに運んだのは俺だが、どう答えたものか。……いや。大丈夫そうだな。
「ああ、確かに俺が運んだが、礼を言うのなら今眠っている双子に言え」
『ふふっ確かにそうだね。だけど彼らの保護者は君だろう?だから君に礼を言っているんだよ』
そうか。それならいいかな
「それで?どうしてこんなところに連れてこさせたのか未だにわからないんだが」
『ああ、そうだったね。私たちはね君にお礼がしたいんだよ。ようやく皆還ることが出来るってね』
「帰れる?それはよかった」
『まぁ事情を話させておくれよ。おっとその前に私たちのことはそうだねぇアースとでも呼んでくれよ』
それならいいかな。俺はおとなしく話を聞いてみることにした。
『私たちは君の想像通り異世界人さ。特に勇者と呼ばれる人たちも居たかな。その数幾百人以上にものぼる』
『その人たちはみんな元々停滞していたこの世界にあらゆるアイデアを、刺激を出して文明を、技術をどんどんと上げ、生活を豊かにしていった。冒険者ギルドも、魔法も勇者たちがもたらしたものだよ』
と話したところでふと疑問がわいた。そこまでした勇者たちはいくら資料室を見ても名前が一切出てこなかったのだ。そのことを聞いてみると別段驚くこともなく。
『その疑問はもっともだよ。私たちも当時は異世界人と仲良くできると、そう思っていた』
『私たちもあの汚い臭い見てくれだけが綺麗な街が嫌だったという自分本位の思いで生活を豊かにしてそれから皆に感謝されて、順風満帆だった。だか、彼らは私たちが想像していた以上に強欲で嫉妬深かったんだ
』
『幾数もの国々は私たち転生者や転移者たち地球での記憶を持っている人達を対象に奴隷狩りを始めた。薬で眠らせ、力で押さえつけ、家族を、故郷を人質に取り、ありとあらゆる手を尽くし私たちの同胞を狩った』
『もちろん私たちも必死の抵抗をした。罠に嵌め、国を滅ぼし、差し出した技術を全て奪い返して。ね』
『だけど多勢に無勢だった。私たちは数をどんどんと減らしていき、世界の端の辺境にある魔境の更にその奥にある場所に小さな楽園を造って暮らしている。それがこの世界の真実だよ』
『そして私たちはここに堕とされ、死んだ異世界人の遺志の塊だよ』
あん?落とされた?どういう事だ。
『さっき言ったと思うんだけど、奴隷狩りに合った私たちは色々な自由を奪われ、地球での記憶を絞り出され、さらに国を豊かにしていった』
『その成果の一つに武力の向上があった。誰でも簡単に攻撃魔法が使えるような特別な魔道具を作ることで迷宮探索が容易になった。そのおかげ。いや、せいかな?である転移魔法陣が手に入ったんだよ』
ある転移魔法陣?それってもしかして。
『うん。君の想像通りだよ。ここのダンジョンへの転移魔法陣さ。この場所はどこにあるのかもわからない未発見のダンジョンなんだ』
『そしてその転移魔法陣を使って転移した人たちは戻ってこなかった。…それから数回転移したらしいんだけど、全員戻ってこなかった。それから異世界人たちは転移魔法陣を使って私たちを捨てることにした』
『私たちは心身をすり減らし、ただの糸が切れた人形のような姿になっていたんだと思う』
『落とされた時に感じたのは絶望と安堵だった。真っ暗闇の中、ようやく解放された時の安堵と戻ってこなかった人たちの骸骨のようなものを見つけたからだ』
『まぁそこからは手記に書いてある通り、命からがらこの場所についた私たちは生活のために何とかこの場所を造った。自分の能力をフルに活用してね?命を対価に、後から来るであろう同胞が苦労しないように』
『それから私たちは死んじゃった後、近くの骨骨を合わせてさっきのイタコ・ザ・エンプレスと呼ばれた魔物になったわけだよ』
『おっと。話が長くなったね。ごめんごめんそれじゃあお礼だよ』
といってアースは両手を胸元に当てて魂のような球を渡してきた。
「これって何?あ!もしかして?」
『そうだよ。これは浄怨の焔というものであの双子が浄化してくれ、そして君がこの石棺に納めてくれたことで出来上がった炎だよ。君が欲しかったものよりもこっちの方がいいと思うよ』
と受け取ろうと思った瞬間、俺は手を止めた、何故か危険信号が出たからだ。なんかこの炎を持つのは危ない気がする!と。
「ちょ、ちょっと待って!」
といった瞬間に持っていたランプカルキノスの提灯をその場で改造しようとしたが、
『うん?ああ、配慮が足らなかったねごめんごめん。それじゃあ君、私たちの腕を使うと良いよ』
というと勝手に壺が飛んできて、俺の目の前で止まり、指を鳴らすと骨骨がバラバラになった。
俺はそれを受け取って骨を探ると上腕骨、尺骨、橈骨、手のひらの骨、指に分かれた。
それじゃあその場で解体を始めようかな。
1ランプカルキノスの光触手を解し、円柱状に分ける。
2濃灰色の手根骨と白色の手根骨をいくつか入れ替えて上下に埋め込み、カンテラの火を使って接着する
3第二関節の骨に穴を開けて光触手に刺しこんで絡める。
4底部分を触手を編み込み、残った手根骨を編んで、とりあえずの応急処置は終わりかな?
『おや?もう大丈夫なのかい?』
「ああ、ありがとうな待たせて」
『いやいや、私たちも失念していたよ。よく気が付いたね、この炎の事』
「何となく危険だと本能的にな」
といいながらカンテラの扉代わりにしていた関節を空けて浄怨の焔を静かに入れる。
『ふぅ。これでようやく私たちも解放されるよ。ありがとうね』
と言って消えかけた。
『おっと、そろそろ時間かな?ようやく私も皆の元に還ることが出来るよ。それじゃあ、君たちが元の世界に帰ることを願っているよ』
といって周囲の木棺ごと光の胞子が辺りを包み、消えた。お疲れ様でした…
浄怨の焔…強い怨念を持って死んだ人たちが集まって偶然できた炎が浄化されたことで出来上がった焔。
これを触ると普通の火傷ではなく霊傷というものになり、回復魔法が通用しない危ない傷が出来上がる




