双子の力と遺恨の女王
「あ、そうだお前ら。一ついいか?」
「モグモグ、何?おにぃちゃん」
「ハムハム、何?おにぃちゃん」
その日の夕飯に双子に切り出した。口に物入れながら喋るのは行儀が悪いけど話しかけた俺も悪いな。
「これから旅に一緒に行く中でどうしても確かめないいけないことがあるんだが。お前らの実力を試したいんだ」
本当に大事な事だ、さすがに双子が戦えないとなると守る方法や戦い方を考えないと不味いからな。
「「あーそういう事かぁ。うん!良いよ♪」」
「じゃあ明日ちょっと欲しい魔物の素材があるからやってみるか?動きは遅いしでかいから結構簡単に戦えるだろう」
目標はランプカルキノスだ。アイツの提灯は何かに使えそうな予感がするんだよな。
そして翌日俺たちはいつも行って居る狩場に向かうことにした。
今回使う武器はいつもと変わらずノコだが、割と幅があるので盾代わりにもなるだろうと楽観視していた。結果として。
「上!危ないよ?」
ズドーン
「……」
「下に穴が開いているよ?」
スポーン!
「……」
「もうすぐ寿命じゃない?」
ポックリ。ポテッ
「……なぁ。そろそろいいか?」
「えっとねぇーそうだ!上から岩が転がってくるよ!」
ズドォーン!!っプチ。
「……っ駄目だ、話聞いてねぇ」
「どう?おにぃちゃん!ボク強いでしょう!」
真が物凄いどや顔をして俺のほうを見る。
「……ああ、確かに強いな。その力はどういう原理だ?」
「うーん?わかんない!だけど神のおじちゃんからは僕は世界一の正直者だ!って言ってたよ?」
ああ、そういう事か納得がいったよ。
「叶はどうだ?戦えるか?」
「うぅぅ…ごめんなさい」
今にも泣きそうだ。やっべ地雷踏んだか?
「ああ!ごめんごめんって。そうだよな神のおじさんがいないんだったな。悪かったって」
抱き上げて背中をさすり謝る。
「今日パフェ作ってくれる?」
え?
「パフェ作って!」
「は、はい!」
この双子、策士だ。怖い
「じゃあ真。岩をどけてくれるか?獲物を回収したい」
「?無理~!」
「…まじで?」
「うん!無理」
仕方がないなあれ?だけどランプカルキノスの提灯が取れそう。なんだ大岩に潰されたのか。
じゃあさっさといただきますか。ナイフを手に取って節に差し込んでてこの原理でそのまま引き剥がして回収する。
その後小屋にあったタオルでぐるぐる巻きにして光が漏れないようにしていくつか回収して元の小屋に帰る。
実は本によるとランプカルキノスの提灯は魔力の供給で光り、誘引の魔法が拡散されるという事なので光が漏れないようにすることで以前の様に魔物に襲われることが少なくなるという事らしい。良かった良かった。
俺たちはそのまま一緒に手を取って双子を引っ張って小屋の方に帰った、…いや帰ろうとした。
…シャン♪…シャンシャン…
え?今何か聞こえた?
「なぁ今何か聞こえた?鈴のような」
「たくさんの鈴みたいな音がするね」
「そう言えば神のおじさんの一人のおねぇさんがねぇ何か言ってたような気がするんだよ」
と唐突に叶がこう切り出した。
「何かって?」
「えっとぉー何だったっけなー思い出せないなぁ」
「頑張って!カナ!思い出して!!」
「あ!確かイカエビフライがどうとかーだった気がする」
イカエビフライ?何か以前そんなことを聞いた気が。食べたいのかな?あーエビ虫はいたけどイカはいないなぁ。
カラ…カラ…ヒタ…ヒタ
え?また今度は脚音がしてきた?ん?
コォン…コォン…
何か軽い棒を地面に立てる音。
カシャ…カシャ…ズル…ズル
何かを引きずる音。だけどさっきからこの音が軽い気がする?しっかし相変わらず薄暗くて見えづらいな。
パチ…パチ…ヲォォォォ…
あれ?今度は焚火のような火が燃えるような音と地面から沁みだしてくる怨念のような音が一緒に聞こえてきた。
ズル…ズル…
多分すぐそばにいる!
「しゃがめ!!」
二人をその場にしゃがませた瞬間に武器を振り抜く。
ビリビリィ!!!!
布が切れた音がしてそこから紫色の火球が姿を見せた。
「…うーんエイ!周りが見えますように!お願い!おじいちゃん!」
といきなり叶がそう言ったかと思ったら後ろにあったランプカルキノスの死骸が空中に浮かびあがり破片が燃え、辺りを照らした。
「へ?どういう事だ?」
「えへへー実は神のおねぇさんから聞いたんだけどこの骸骨さんの前だったら力が使えるって言っていたの!」
?どういう事だ?ってかそんなことより!もしかしてこいつってイタコ・ザ・エンプレスって魔物か!?
俺は武器を構えて双子を守るために前に出る。
イタコ・ザ・エンプレス(仮)は長いボロボロの着物を羽織り前の部分は肋骨が押し広げられている。胸骨があった部分には青紫の炎の塊が時折人の顔のような形を作る。両手には札と祭事に使いそうな鈴がたくさんついた棒を持っている。
頭の両横のこめかみの部分には蝋燭が二本巻き付いていてまた青い炎が灯っていて頭蓋骨の形が全体的に丸くてどことなく女性的な感じがする。
そして正面からはよく見えないが後ろにボソボソの髪の毛が生えているところを見るとやっぱり女性だ。エンプレスというのもそうだが。やっぱりエンプレスっぽくないな。
イタコは俺等を穴の開いた双眸で見つめると親の仇を取るような響くような叫び声をあげた
「ヲ゛ヲ゛ヲ゛ォ゛ーーーー゛!!!」
イタコはそのままベルを振り下ろした。遅い!とノコギリでベルを受け止める。
「っぐ!重い!」
「おにぃちゃん!手伝う!『横から岩が飛んでくる!』」
そんなわけないじゃんっはっはっはーww
と内心笑っていたが、鉄のイノシシくらいの巨大な岩が飛んできてイタコが思いっきり吹き飛んだ。
「手伝ってくれるか?真!叶?」
「「うん!」」
二人はすごく意欲的になり、叶はどこからともなく鏡と勾玉のようなイヤリングを付け、背中には七支刀のような剣を持っている。何それ?
岩を何とか退かしたイタコは体を引きずりながら起き上がるとこっちを恨みがましく見ると両手で鈴の付いた棒を握り、祈るようなポーズをとると鈴の一つが急に青白い光を放ち、胸の炎に吸い込まれていった。
「チャンス!『上から岩が降ってくるよ!岩とげの雨だ!!』」
待て!!ここはお約束だ!変身シーンに攻撃は!!
などと考えているうちに一メートルくらいはありそうな巨大な岩が雨のように降り注いだ。
「やった!やったよ!おにぃちゃん!」
「馬鹿!それはフラグだ!!」
と叫ぶと同時に土煙が払われ、姿が変わったイタコが悠然と佇んでいた。
今度は鎧に身を包み、巨大なハンマーをもっている姿に変わった。
敵は地面にあるとげをみてハンマーを振りかぶり思いっきり振って棘を弾き飛ばしてきた。
「危ない!『神のおじちゃん!守って!』」
といきなり叶がそう叫ぶと鏡から俺らを包むように透明なドームが出来上がり、岩とげを弾き飛ばした。
「おにぃちゃん!マコちゃんの防御は任せて!」
と覚悟を籠めたよう俺を見つめる。
「ああ、頼んだぞ!」
といって俺は鋸剣とナイフを持って走り出した。
イカとエビフライ=イタコ・ザ・エンプレスってわけです。何となく似てませんか?
高森 叶の持っている武器は緊急用の武器で、使い捨てのWi-Fiのようなものです。今回の様に神様にお願いできない場合に何とかお願いを聞いてもらえる中継機です。基本的には滅多に使いません。本人の負担が強すぎますし、この武器たちもかなり貴重なので。




