地獄からの救済とギルドの事情
しまった。この灯を拾ったことを今俺は過去最高に後悔している。この提灯、魔物を引き寄せる性質を持つらしい。さっきからウサギが足ダンしながら群れになって来てなんか追いかけてきてるぅうううう?!
俺は時々強く踏みしめて鉄みたいに硬い足裏を向けて蹴ろうとしてくるウサギを釘バッドで撃ち返しては逃げる打ち返しては逃げるを繰り替えす。
ウサギたちは何というか本気で俺を狩りに来ていると言うより、消耗させて遊んでいるように感じる。
ダン!ダァン!!右!やばい!躱せない!ぐはぁああ!背中の中心に抉れるようなサマーソルトキックを食らい、そのまま前のめりに倒れ、数回地面をバウンドした。こんなことあるんだぁっていうか絶対に死んだ!
宙を舞った拍子に提灯が手から離れたのが幸いして、俺はそれ以上の追撃を受けることはなかった。
再び目の前が真っ暗になってしまった俺は地面を這うように移動して再び風上に歩いて行く。
あん?なんだか酒の匂いがする。何だろう。
『キキぃ――!!!』
はぁあこの音は何だ?羽ばたく音。ッツ!!何だ?足元がふらつく。頬が熱くなってきた?うぅぅぅ気持ち悪い吐きそうだ。歩けない。酩酊状態というのだろうか。課長に呑まされたころを思い出す。あれ?課長って誰だ?思考が纏まらない。手を伸ばせ、足掻け。足掻け!!!
目の前に何か掴んだ!骨っぽい翼のようなものだと思う。骨組みに皮のようなものが張ってあるような!
それにこのガラスを引っ掻くような鳴き声はもしかしてコウモリ?何でだ?
俺はおぼつかない足取りで何とかボロボロの釘バッドを振るいコウモリ?の翼をへし折り、他の羽音の下方向に放り投げてぶつける。
少し酔いが醒めてきて意識がはっきりし始めたので釘バッドを杖代わりにしてゆっくりと歩きはじめる。やっぱり杖じゃないから辛い。
他の魔物が襲ってこないうちに早く!遠くに!逃げないと!うぅううー腹が痛い!全身が軋むような痛み骨が折れそうだ!
うぐぅう!!歯を食いしばって痛みを耐え、前に!風上に!目的地に進む!
あ!風上に小さな光が見える。亀裂から漏れているような感じの薄暗く先程のカニとは違い柔らかく優しい明かり。
俺は静かに手を伸ばして光を掴むように、まるで光に向かって進むひまわりか、夜の明かりに近寄るガを思わせる。
全身の痛みを忘れ、自然と体に力が入り、視界が明瞭かつ頭がすっきりと霧が晴れる様に吹き飛んだ。
俺はまるで夢を見ているような心地になりながらも光の亀裂の淵に指をかけることに成功した。亀裂に体を滑り込ませて何とか光の中に入った所で俺は意識を手放した。
次に目を覚ました時、そこは深い谷だった。お日様のような明かりがその空間を包み込み、ぽかぽかと温かい春のような気候に俺は再び微睡みそうになった。けど寝ぼけ眼で光の中を見ると可愛らしい一軒家が岩壁から突き出していた。そしてその周りには色とりどりの花が咲いて、蝶まで飛んでいる。なんだぁ夢か。ぐぅうう。
ふあぁーあおはよう。寝すぎて頭痛い。さっきまでの真っ暗な洞窟の時との体の温度差があって体が痛い。足元がすっごく寒い。
慌てて体を起こして起き上がり、花畑の少し奥にある小屋に近づいて歩きはじめると花畑に遊び飛んでいたちょうちょたちが舞うように近づいてきた。
俺は満身創痍の体を何とか起こして武器を構えようとしたが、力が出ずに釘バッドを目の前に構えるしかなかった。振るったとしてもヘロヘロで力なく振るうしかなく、それだと当然ちょうちょたちが余裕をもってその場を交わす。
そのままちょうちょたちは俺の傷口に近づくとストローのような舌を延ばして血を吸って、鱗粉を撒き始めた。
すると俺の傷口が見る見るうちに回復して塞がった。痛みも止まり、普通に歩けるように回復した。
「ありがとうな。」
と微笑みながら俺の周囲を飛び回る赤黒くなった蝶々に礼を言ってから岩肌に鎮座する小屋に向かった。
小屋は岩から流れる小さな滝で水車を回していて、そしてゆりかごみたいなチェアまである。何だろうス〇ラおばさんが住んでいそうな感じの雰囲気がある。パンでも焼いてそうだわ。もしかして前に来た人がいるのかな?という淡い期待は窓から見える景色で一瞬にして消え去った。家の中が埃まみれて、人がいた形跡があるものの足跡がない。
ドアの取っ手に手をかけて中に入る。
「あん?どういう事だ?中が少しだけ広いような気がする?」
気のせいかな?とにかく中を散策しよう。ここに住んでいる人がいたのならすみません!
一階は暖炉付きのリビングが二つに大きめのキッチン。奥の方には水車に石臼のようなものにふいご?ってことは一室の引き出しを開けるとあ、鍛冶の炉がある。この収納いいなぁ。
勝手に使うのが気が退けたので二階に移動する。
二階の部屋は個室が二つと両開きの部屋が二つ、そして屋根裏に通じそうな天井の扉。まずは個室からっと。
あ、物凄く柔らかい!このベッドの布団は羊?で出来ていて軽く柔らかく、ふわふわとしていて雲を押すようだ。そしてその奥からは詰まった軽い素材が優しくしっかりと衝撃を掴んで押し返してくる感覚が手を包み込む。その弾力の違いから俺は自然と体が前のめりになり、倒れてしまいそうな欲求にかられた。
それを我慢して次の部屋に行くことにした。次の部屋は懐かしい匂いがする。何だろうお年寄りの家の香り。このまま草を編んだこの床に寝そべりたい衝動に駆られる。ちょっとだけ、ちょっとだけならいいかな?って。あ、今俺裸じゃん。不味い不味い今は我慢我慢っと。
そして最後に両開きの部屋を空けると書斎のような場所だった。艶出しの深い赤茶色の木で出来た大きな机、夜の様に暗い藍色の大きな椅子。大量の手作りの本が入っている書棚。それにカートなどの小物。一つ一つの趣味は中々いい。だが、これらはすべて別の人が造り上げたものだろう。俺も一応職人の端くれだと個人的に思っている。
おや?これは日記か?机の上に広げた大きな本があり、その横に羽ペンが置かれてある。インクはない。そして手記にはこう書かれていた。
名も故も知らぬ未来の若者へ
どう書こうか迷ったのだが、まずはこう書こうと思う。ようこそ同輩よ。よくぞこの場所に死なずにやってこられたね。この場所は初代総合ギルドマスターであるボクが造り上げた空間だ。
今なぜ総合ギルドの初代マスターがこんなところに堕とされたのか気になっているね?それには少し理由があるんだ。
元々総合ギルトっていうのは強いのに実力を認められなかったもの、鍛冶がしたいのに何かの理由があって出来なかったものなどなどが集まって互いに協力して築き上げたものだ。
当初は舐められない程度の安定した地位を手に入れられればそれで満足だったんだ。だけど一部のギルドメンバーが欲を出してさらに大きくしようと言い出した。僕を含め数人はそれに反対したんだ。傲慢になりすぎるなってね。
君がここに来た時にはどのくらいの規模になっているのかな?とにかくこの場所に来た君に僕からのお詫びをしたい。ここは僕が自分の能力の粋を集めて造り上げた場所だ。ぜひとも拠点として利用してほしい。
そして願わくばこの墓場から脱出する方法を模索し、もし後にくる子のために記してほしい。本当にすまなかった。
そう書いてあり、手紙の下には家の間取りと説明が書いてあった。これはすごくありがたい。とりあえずは風呂かな?
後で詳しく解説しますが、今クロスがいるダンジョンは追放者の墓場といいます。辺境にある魔境の最奥部にあるダンジョンの奥です。そしてこの小屋がある場所の周囲の魔物は小屋のおかげで弱体化しています。




