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カニと提灯

 真っ暗で前が見えない。いや、前どころか周囲足元すら全く見えない。わかることは骸骨を踏んでいる事と岩肌だけだ。

 恐ろしいまでの静寂と、生物一ついないような無臭。じゃあこの骸骨の山は?どういう事だろう。今俺はまえに進んでいるのか歩いているのかすらわからない。

 っクッソ!なんで俺がこんな目に?俺が造ったものが優秀だったのか?俺が造ったものが欲しかったのかどうなんだろうか?

 悪態をついたとしても何も状況が変わらないというのはわかってはいるが、言わずにはいられない。

 

 俺の心の中に昔のことが思い出せないことなんてどうでも良くなるほどどす黒い気配が滲み出てくる。


「糞ガァアアアアアアアあ!!!!!!」


我慢できずに叫んでしまう。叫んでも何も状況が変わらないのはわかっているが叫ばずにはいられない。

 俺の叫び声に反応したのか、骸骨の山から崩れる音がしてきた。


「え?嘘だろ?」


ゴロゴロゴロ―――!何何何々何々?!!!

 気づいたら俺の足元に重さ的には骸骨かな?が転がって来た。何だろうこれ?骸骨か?だけど足元の骸骨より大きい気がする?脛くらいの高さだったと思うんだけど、


 なんだかすごく嫌な予感がする。見えないが音のする方を見て見るが、あれ?何か光が見える二つの光が同じ動きをー。ってあ、あれって目?

 そんな目が大きくなってきたあああああ!やばいやばいやばい!何だかわからないが絶対に死ぬ気がする?!

 目の前が見えないが走れぇええええええ!!

 あうっ!骸骨につまずいた!痛ったーって、そうじゃない!そんなこと言ってる場合じゃない!逃げろ――!

 後ろがドゴンドゴンと鈍い音がして何かが壁にぶつかったのだろう。後ろを見るような暇はないので確認なんてとてもできたもんじゃない。

 見えない空間を必死に走っていると足が空を切り、下から上に吹き抜ける風の感覚がした。もしかして落ちてる!


「うわぁああああああああ!!!!」


俺の絶叫の声が辺り一面を木霊し、何故か酒の、それも赤ワインのような匂いが鼻を突き抜け大きな蝙蝠が真横を通り過ぎ、蜘蛛の巣のような粘り気を持ったゴム質の岩を砕いて、俺は更に深淵に沈んでいった。



 ん?痛っ!頭痛い。ってか全身が痛い!バラバラになりそうな痛みだ!背中も痛い!相変わらず周囲は真っ暗だ。 

 …あれ?何だ?さっきから肌に風を感じる。もしかして外に通じているのか?微風をさかのぼっていってみよう。

 それにさっきから足裏に感じる感覚が上とは違う感じがする。何だろう。ツルツルサラサラの石面を歩いているような感覚だ。

 あ!遠くの方で灯が見えた!誰かがいるかもしれない!と何故かその時希望的観測を持つ。

 あん?これってもしかして提灯?何で岩にくっついているんだ?岩から枝のようにのびてきてあれぇえ?何か動いてる気がする!

 なんだか野生の勘が働いてその場に腹ばいになるとすれすれで巨大な何かが俺の真上を通り過ぎた。

 危ない!ってよく見ると地面にビリビリに破けた服が、もしかしてこいつの餌食になったのか?!俺は匍匐前進で移動し、錆びたナイフのようなものを掴んだ。これってこの服の持ち主なのかな?ありがたく受け取ろう!

 あの提灯は欲しいな。絶対に獲る!

 うすぼんやりとした灯の元で何となく此奴の全容が見えて来た。此奴はカニだわ。ってことは!

 

 俺はナイフを逆手に持ち、大きな挟を振り下ろすのを誘発して、節の部分にナイフを突き立てようとした。

 バギッ!!


 やっぱり折れた。本当にどうしようか。

 その場を離れ、周囲を軽く見るとナイフが大量に置いてあった。ここに大量の人がいたという事か。それもこいつに全部食われたのか。

 はをギリギリと食いしばり、カニから一定の距離を取りながら逃げながらナイフを複数拾い、再びカニに肉薄する。

 走りながらナイフ同士を打ち合わせて擦り合わせ、軽く研ぐ。

 何となく心の中で俺のスキルが軽く反応した気がする。再びカニの薙ぎ払いする前にカニの懐に潜り込んだ。そして根本の節に手をかけ、軽く白い刀身が見えるナイフを甲殻の隙間に滑り込ませた。

 一度距離を取って更に逃げる。このカニは結構脚が遅いらしく、簡単に逃げられる。

 ぐぎゅぅぅぅぅぅぅぅ。あ、静寂の中に俺の腹の音が響いた。恥ずかしいな。けどカニは俺の大好物だ!美味そう!此奴を絶対に食う!

 離れて大ぶりの攻撃を再び誘発して数回ナイフを突き刺して甲殻を浮かび上がらせて、叩き、そのまま切り落とす。

 カニの爪が重さでバランスを崩して地面にそのまま落ちた。


『ぎぎぃぃぃぃぃぎゅいいいい!!!』


粟をブクブクと吹いて天井からパラパラと何かが落ちてくるような音がして。カニが悶絶した。


 チャンス!と俺は走り込んで、提灯の根元にナイフを刺そうとしたのだが、甲殻が非常に硬く砕けない!むしろこっちのナイフが砕けた。更に振り落とされた。


「ぐっ!がはぁあ!」


辛うじて提灯で見えるカニを睨みつけると足元に痛みが走った。そう言えば今の俺ってパンツ一丁だったな。ってどうしてここに釘バッドが落ちてるんだ?しかもこれってよく見ると木のバッドじゃなくて金属製のバッドだわ。良く刺せたな。


 丁度いいやとバッドを握って素振りをするが、何か違和感があるなぁと思っているとスキルが反応した。地面にしゃがみこむと、その場の石にバッドを打ち付けて、釘を曲げて殺傷能力を高め、石を打って釘を刃の様にする。

 とりあえずこれでいいか。じゃあ早速!試し切り《殴り》を始めようか?!

 右のはさみを引きずりながらゆっくりを動いてきたが、バランスが悪くさっきより断然遅い様子だ。

 俺は走り込んでいき、捲れたカニの身にバッドを振り下ろして叩き千切る。

 痛みと共に体のバランスを崩したカニはバランスを崩して仰向けに倒れ、ブクブクとより一層泡を吹いてしまい、自重で提灯の枝がへし折れ、切り離された。

 その提灯を拾い上げてよく見て見るとその提灯はリンゴのような大きさの目玉だった。


「きっも」


正直このまま持ちたくないけど、今回はしかたなく持って歩くことにしたわ。ってあれ?よく見るとカニが死んでる?なんでだ?まあいいや。じゃあ足元も見えるようになったし!先を急ごう!

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