魔石と隠蔽準備
ふぅ。皆さま今日をいかがお過ごしですか?俺は優雅に朝食に出た唯々苦いだけの深みなんて全くないコーヒーもどき(砂糖、ミルク無し)をちびちび啜りながら白パンサンドイッチを齧っている。
サンドイッチの中は目玉焼きにレタスっぽい野菜、それに焼いた豚肉。ソースはオレンジのような柑橘系のものをベースに作ってあるさっぱりとした風味と柑橘の甘味が朝の寝ぼけた胃に入り、目を覚ます。夕飯はあれだったが朝食は最高の品だった。美味かった。
朝食を食べ終わり、部屋に戻りしばらくのんびりと明日の事に付いて考えたり、何を改造《作ろう》かと思案していると、扉がコンコンと軽くノックされた。マキか?
「わたしだ、エピプだ。入ってもいいか?」
あれ?どうしたんだ?まぁこいつならいいか。扉を開けるとエピプが自身満々に仁王立ちをして、その後ろではマキが申し訳なさそうに立っていた。
「すみません!私はエピプ医務長の部下ですので、逆らえなかったのです!止められなくてすみません」
可哀そうに。それで何の用なんだろうか?あ、そうだついでにこいつの実験しよっと。
「それで何の用なんだ?」
「実は私は新しい物好きでね。君の作ったものを見せ欲しいんだ!」
と言って部屋に押し入ろうとしているので軽くいなしてからこっそりと鑑別ルーペを取り出し、二人を見ると、マキは白、エピプは緑に光っていた。という事は今はこの二人は安全という事だ。
「うーんそれはいいんだが、あんまり面白いものはないぞ?それに今日は明日に備えての準備をしたいんだが」
中に入れると真っ先に俺の武器とリュックに突撃してから無許可で漁りはじめ、ポケット一つ開けてはおお!と喜び、テントのを取り出しては何だこれは!と大喜びで叫び、マキを呼んで鑑定をさせていた。
ちらっと鑑定結果を見て見るとほう?これは。
【異邦人の簡易天幕】
異界の技術で作られた天幕、一人で簡単に立てられる特殊な構造をしている。
っていうか異邦人のってどういうわけだろうか?
「そう言えばマキ、一つ聞きたいんだが俺のリュックとテントはどうして説明と名前が違うんだ?それに異界とかいう単語が出た時点で疑問に思わなかったのか?」
と聞いてみると何でか滅茶苦茶不思議そうな表情をして、
「?どうしてって言われてもダンジョンから出てくるものは大体異界の~って出ますよ?それに異邦人の者なんて珍しくもないですし」
あ、それなら安心した。
「と言ってもダンジョンの物なんて素材とか不明なものが多いので研究材料とかで売れますよ?」
それなら今回素材を買いに行くときにリュックのカムフラージュ用に多めに買った方がいいな。
「そういう事か。あれ?じゃあこいつも隠してた方がいいな」
「ふはぁー。満足したぁ、ありがとう!すっきりしたよ楽しかった!」
といって立ち上がってこっちにいい笑顔を向けて来たエピプだけど、いい年したオッサンが満足したとつやつやした表情をしているのはちょっと吐き気をもよおす。
「そ、それはよかった」
「楽しませてもらえたよ。これはお礼だ、おせっかいかもしれないけど、マキ。彼をここに案内してあげて、それとこれを買えばカムフラージュが出来ると思うよ?」
「はぁ。わかりました」
「じゃあ!わたしはこれで失礼するよ!」
とバタバタと走っていった。騒がしいなぁ。
「……すみませんうちのバカ医務長が」
「……うん大丈夫だ。あんたも苦労してるんだな」
という沈黙ののち収納しなおして、素材屋に向かった。
素材屋は郊外に細々と経営している店で、店というより田舎にある駄菓子屋を大きくしたような感じのいでたちだ。さっそくお邪魔しまーす。
「あ”?何のようだ?」
お、おふぅ。ドスの聞いた声でいきなり威嚇するように睨みつけて来た。物凄い怖い。
「商品を見に来たんだが?」
睨み返す。イラっとしたしな。部屋の中を見渡すとリュート商会の魔物素材売り場より弱い素材が売っているように見える。
「お、おうすまねぇな。ギルドの回しものかと思ってな。自由に気が済むまで見てってくれ」
お言葉に甘えてじっくりと見させてもらおう。
・・・この店のラインナップは結構幅広いな。薬草からなんだ?この夜空みたいな色の石は?魔石?
「マキ。魔石ってなんだ?」
「え?魔石を知らないんですか?」
「うん。知らん」
「魔石っていうのはダンジョンから出土する魔力が固まった石です。魔道具の動力源になります。まさかとは思いますが魔力の存在は知っていますよね?」
「うーん聞いたことない」
というとあきれ果てた表情をされた。店主にもだ。
「嘘でしょ?あなたスキル使うときに魔力を自然と使っていますよ?まぁいいです。魔力というのは魔法を使ったり魔道具を使用するのに使う力です」
なんだ?それは。スキルを使うときと同じような感覚でっと、あれ?俺の体を巡るこれかな?魔力ってのは。
「ほら。使えるんじゃないですか」
「あ、ああ助かった。というか魔法か。ちょっと面白そうだな。マキ、魔法ってどこで勉強できるんだ?」
「え?あ、ああ。魔法は魔法指南書という本に原理が書いてあるので熟読して覚えるのが一般的ですが、どうしても本格的に勉強したいのなら学術都市アカシックに行くのがいいですよ」
「まぁアカシックの学園に入学するのには紹介が必要だがな」
なるほど、紹介が必要なのかーってことは、今のところの目標は地位の確保かな?がんばろう。
「あ、クロスさんありましたよ。これですよ」
そう話し終わってから再び店内を見て回ると、
「あ、これですよ」
手に持っているのは灰色の毛皮だ。結構大きいんだな。という感想しか出てこなかった。
「これが昨日言っていたハイドウルフの毛皮です」
へぇーだけど同じくハイドって名前なのに違いがあるのかな?
「まぁそれについては後でお教えしますよ。それよりこれ三枚ください」
「あいよ。三枚で銅貨三枚だ」
俺が財布から出そうとしたが、それより前に自然とマキが払ってくれた。
「良いのか?」
「ええ、先行投資とでも思っていてください」
なるほどそういう事ね。騙されてやろうか。
「じゃあ有難くもらおう」
と買って手渡されたものを受け取ってリュックの中に収納する。その後帰る途中にブーツを買った。丁度この靴がボロボロになっているしな。
軽く屋台でお昼ご飯を食べた後でリュースホテルに戻って新しい装備の準備をすることにした。
「じゃあ始めますか。とりあえずリュックからで」
1異邦人の旅袋セーブスクワルカスタムを取り出してポケットのサイズを測る。
2測って引いた図面通りにハイドウルフの革を裁断する。
3裁断した革をリュックの布の上から縫い合わせる。
4全体的にハイドウルフの毛皮を縫い付け終わったので、ベルトを引き抜いてハイドウルフの毛皮で挟み込んで再び付けなおす。これで完成。
次にブーツを改造しようっと。
1ブーツの外側の部分を外す。
2ハイドジャガーの毛皮を使い、つま先の革部分の形に型を取って数枚重ねて切る。
3ハイドウルフの毛皮を足の甲の部分に切り取る。
4フロントから廃棄寸前のブーツの型を借りてブーツの中に詰め込む。
5つま先部分にハイドジャガーの毛皮を重ねて鉄鎚で叩いて固める。
6 くっ付いた部分の淵を縫い付け、一度引き剥がす。
7ハイドウルフの毛皮も同様に叩き、整形する。
86・7をくっつけて整形しながらブーツの形にする。
9 ブーツを仮縫いしたのち、自分の脚のサイズと照らし合わせつつ、調整して本縫いを終える。
10 ブーツの調節用のひもを取り付ける。
11脛当たりまでの革を付けて。更に調節ひもを取り付けて完成!
調整しながら履き心地を試しているんだけど、うーんスニーカーとは違って結構堅いなぁ。踵が金属製だからか?
この辺りの改造はまた今度でいいか。
「あ。出来ましたか?それじゃ早速鑑定失礼しますね」
いつも通りさらさらと鑑定結果を書き記して書いてくれた。
【異邦人の旅袋セーブスクワルカスタム(ハイドウルフカムフラージュバージョン)】
異界の技術で作られたリュック。それにセーブスクワルの頬袋を使い内部を拡張したもの。容量は元来の倍はある。セーブスクワルのの能力で食材の劣化が抑えられる。更に負荷も軽減されている。ハイドウルフの毛皮できれいにコーティングされていて目立ちにくくなっているため、襲われる可能性が少し減った。しかし、鑑定を使えば真の価値が明るみに出る。
・・・名前長!!マジで長い!本当になんでこんなに長いんだ?
「マキ、こんなに長い名前ってあるのか?」
「ないですね。本当はセーブスクワルリュックや、ハイドウルフバックパックなど書いてあります」
「そしてこっちが、もう一つのほうです」
今度はブーツの方かな?
【ハイドブーツ】
足音を消せるブーツ。靴の範囲だけだが、少しの間見えにくくすることができる。靴底が金属で出来ているため長距離の移動には適さない。
?そんなに危惧するようなことじゃないでしょ?
「マキこれってそんなにいいもんなのか?結構中途半端だぞ?」
「・・・新人が持つにはちょっと過分という感じですね」
それから俺たちは軽く話をして今日は解散した。
「今日はありがとうな。服については後でまた作るつもりだから今度相談してもいいか?」
「はい!いいですよ。じゃあ明日頑張ってくださいね?」
といってまた別れた。よし!明日はいよいよギルドの試験だ!
ハイドウルフとハイドジャガーの違いはドラえもんの石ころ帽子と透明マントみたいなものを想像してもらえれば幸いです。




