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副担任

「おはよう!」


「あら。おはよう。」


俺たちは休日を終え、いつものように朝校舎へ登校した。


「きゃああああああ!!!」


「今朝もかっこいいいいいい!!!!!」


「お、おはよう。」


「きゃあああああ!!」


「生声えええ!!!」


葵たちのルームメイトが叫んだままAクラスに戻るのももはや恒例行事となっていた。


「相変わらずすごいでごわすな。」


「あ、でもレオナルドが起きた時の方がうるさかったぞ!!」


「濱口!!オメーのせいだろ!!」


ちなみに未だに一度もレオナルドが濱口より先に起きれたことはない。とはいえ俺が濱口を<衝撃(ショック)>で起こさなければ良い勝負なのかもしれないが。


「濱口、お前が起きるときもなかなかな声だぞ。」


「それはお前が無理矢理起こすからだろ!!心汚れてんじゃねえのか!?」


なんという綺麗なブーメランだろうか。


「朝から元気なことね。」


呆れた顔でシャロルが言う。よく考えてみればシャロルの周囲には元気な人がかなり多い気がするな。


「でも元気に越したことはないよね!!」


元気そうに葵が言う。あのテンションに晒されて元気なままとは流石だな。


「そうだぞシャロル。元気じゃないと赤い紙を見つけても投げ捨てられないだろ。」


からかうようにシャロルに言ってみる。


「それくらいは元気じゃなくてもできるわよ!!あの時は不意すぎただけよ!!!」


意外とシャロルも元気だった。あのルームメイトたちのおかげで体力がついたのだろうか。そういえばシャロルたちはこの休日、何をしていたのだろう。




そんないつものような会話をしていると、シリル先生と一緒に見知らぬ人物が教室に入ってきた。


戦士のような肩幅はまるでブライオスをさらに一回り大きくし、筋肉質にしたようで右の頰には切り傷のような古傷がある。見た目的には恐らく50代程度だろう。この人は初日の説明会を行っていた教師だな。


「はいみなさん、異能大会が開催されるのはもうみなさん知ってますね?」


シリル先生がいつもの調子で話し始める。


「その異能大会の責任者、ガイザー・ジェニスター先生が今日からSクラスの副担任になることが決定しましたー!!」


異能大会の責任者か。接触の機会が今後自然と増えることになるだろうし、好都合だな。


「私は異能大会や体育祭などの行事の開催・運営を担当している。剣術を心得ている故、教わりたい者がいれば是非言いに来てくれ。」


怖そうなイメージとは裏腹に陽気なおじさんのような声をしている。意外と冗談が通じるタイプだったりするのだろうか。


「なあ濱口、お前確か少し剣に興味あったよな。試しに弟子入りしてみたらどうだ?」


小声で斜め前にいる濱口に話しかける。


「冗談じゃねえよ!あの人めっちゃ怖そうじゃねえか!」


濱口が返す。


「はっはっは、そこの生徒よ。確かに怖いとはよく言われるが弟子への気遣いくらいはできるぞ!!どうだ、弟子入りするか?」


陽気な調子で先生が言う。どうやら聞こえていたようだ。


「い、いえいいです…」


濱口が言う。


「じゃあ水原はどうだ?」


ガイザー先生が俺の方を見てくる。俺の声も聞こえていたのか。というか俺の名前を知っているのか。変に目をつけられたりしてないと良いが。


「遠慮しておきます。」


「そうか、残念だな。弟子入りしたくなったらいつでも言ってくれ!!」


「はーい、連絡事項は以上です!それじゃあ1限目の授業を始めますので今から校庭に移動しまーす!!あ、今回から体育は男女に分かれるので、女子は体育館、男子は校庭に移動してくださいねー!!」


そして授業が始まった。一限目は体育だな。わざわざ着替えなくても生徒が普段着ている制服は体育館か校庭に入ると自動で体操着に変化するから便利なものだ。




そして俺たちは男女に分かれ、校庭に移動した。


「今日から男子の体育は私が任されることとなった。よろしく頼む。」


男女に分かれた時点で薄々勘付いてはいたが、やはり体育の授業はガイザー先生が行うのか。


「げぇっ、あの人が授業すんのかよ!」


濱口が言う。


「おい濱口、あんまり大きい声で言うな!きこえちまうだろ!!」


「もしかしたらその声すら聞こえてるかもしれないでごわすよ。」


レオナルドとブライオスが返す。


「はっはっは、もちろん聞こえてるぞ、諸君!」


やっぱり聞こえていたか。そんな気はしていた。


「まあそう言うな、そんなに厳しく授業をするつもりはないぞ!」


こういうタイプの厄介なところは本人が厳しくないと思っていても周りからすると厳しいことが多々あることだ。


「今日からしばらくやる授業は”剣術”だ!!」


やはりそうなったか。この人ならやりかねないと思っていた。


「まじかよ!!」


意外と濱口は嬉しそうだ。剣に興味があるのは間違いないみたいだな。


「じゃあまずはここから模擬刀を取ってペアを作って互いに稽古だ!!もちろん異能で直接攻撃したり防御するのはなしだからな!!」


先生がそう宣言し、教員用の腕輪を操作する。すると、生徒たちの体操着の上に水色の半透明な防具が現れた。


突然初めからペアで戦わせるか。まあせっかくしっかりとした防具があるのだから下手に素振りばかりさせるよりはマシか。


だがうちのクラスは女子20人、男子21人という構成になっている。ペアにすると一人余るのでは…


そう考えた時、嫌な予感がした。


「おい水原!!」


ガイザー先生に呼ばれる。


「は、はい。」


返事をする。


「お前、初日から決闘と模擬戦で勝ったらしいな!!強いんだろ!!」


まさか…


「私と稽古をしようではないか!!」


やはりそうなったか。俺の名前を知ってたことから目をつけられてることはわかっていたが、やはり稽古をすることになったか。


「わかりました…」


仕方なく答える。


「あれ、じゃあ俺誰と組めば良いんだ?」


濱口が途方に暮れている。


「あー、ちょうど浮いてるあいつと組めよ!」


レオナルドがペアになっていない男子生徒を指差す。


「でもあいつ強そうだぞ…?」


濱口が言う。


「大丈夫だ!!そんなことないぞ!!」


レオナルドが濱口の背を押す。


「仕方ない、あいつと組んでくる!」


濱口が行った。


「実はあいつ剣聖って呼ばれてる”レトロノ・クノーゲル”っていうSクラス1番の剣術使いなんだぜ!大会に出る例の6人のうちの一人だ!」


レオナルドが小声で俺に言う。そんなところだとは思っていた。


「お前あとで濱口にまたちょっかい出されるぞ?」


レオナルドに言う。


「先のことを考えたら負けだぜ!!」


うむ。レオナルドらしいな。


「火傷しない程度にな!」


レオナルドにそう言い、俺はガイザー先生の元へと模擬刀を取り、小走りした。


「それでは稽古開始だ!!」


先生の合図で何人かの生徒が剣を交え始める。何をしていいのかわからなさそうだった生徒たちも次第に剣を交え始めている。


「水原、お前に剣の心得はあるか?」


先生に問われる。


「正直全然ないです。」


変に嘘をつくより正直に言った方がいいだろう。


「はっはっは、正直者は嫌いではないぞ。では行くぞ!」


先生がかなりの速度で間合いを詰めてくる。おそらくまともにやっては勝ち目はないだろう。


「<身体強化(アドバンスパワー)>!」


直接攻撃はなしだが自らを強化する分には問題なさそうだからな。


「ふんっ!!」


高速で振り下ろされた剣を受ける。


ガキィン!!凄まじい音がしたが、なんとか受けきれたようだ。


「これならどうだ!!」


上から振りかざされた剣が瞬く間に腹の前に現れる。それを弾くとまた別のところに剣が現れる。正直何が起きているのか全くわからない。


「<時間加速(タイムアクセル)>!!」


「<感覚強化(アドバンスセンス)>!!」


心拍数は生物の時間の感覚と関係しているという話を聞いたことがあるだろうか。時間加速は身体強化により自らの耐久度が強化されている時のみ使える技で、心拍数を急激に上げることにより自分の時間を加速し、周囲が遅く見えるようにできる技である。また、感覚強化により異能の力で五感を鋭くする。これらの特訓で習得した技によって剣の動きが簡単に捕らえられるようにはなったが、剣はどんどん加速する。恐らく今頃周りから見たら剣を打ち合う音が一秒に数回は聞こえているだろう。


「なかなかやるな!!ではそろそろ本気を出すぞ!!」


打ち合う剣の速度がみるみる上がってゆき、さらに一発ごとの威力も大幅に上がってゆく。


時間加速と感覚強化により剣の動きを捉えることは容易にできるが、色々な技を重ねがけしているため消耗が激しく、このままではこちらの体力が先に尽きてしまうだろう。ここで一気に決めるしかない!


「<加速(アクセル)>!!」


剣を大幅に加速させ、先生の剣を弾き飛ばす。


「おりゃああああ!!!」


先生の頭上から剣を思い切り振り下ろす。


しかし下を見てみると、先生も剣を俺の腹へと推し進めていた。このままでは先生の剣の方が先に当たってしまう。


「<加速(アクセル)>!!」


さらに剣を加速し、振り下ろす。


パァァァァァン!!!!!!!!!!


凄まじい音が校庭に響きわたった。誰が聞いてもその音は一つの斬撃の音に聞こえただろうが、その音は二つの斬撃が重なった音だった。


腹に衝撃が走ったが、防具により軽いなにかがコツンと当たった程度に衝撃が緩和された。


「本当に初心者とは思えない強さだな、水原。」


ガイザー先生が言う。


「正直異能で自分を強化してなかったら勝負にもなってませんでしたよ。」


「はっはっはっ!やはり異能を使っていたか!でも自強化は特にルール上問題はないからな!」


「今回はこちらの負けとしてやろう。」


どうやら今回はこちらに勝ちを譲ってくれるようだが、そうして勝っても別に嬉しくはない。


「いいえ、今回の勝負は引き分けにしましょう。やはり勝つときはしっかりと勝っておきたいです。」


「はっはっはっ!!良い心がけだ!お前なら良い弟子になれそうだがどうだ?」


「いえ、それは遠慮しておきます。」


「はっはっはっ!!いつでも弟子入りしたくなったら言うんだぞ!!」


「あははは…」


意外と陽気な性格の持ち主だった。


稽古のあとはガイザー先生が剣の型や戦い方、有効的な構えや動きなどを生徒全員に見えるように教え、生徒がペアを組んで互いにやらせるというものだった。ちなみに俺のペアはやはり先生だった。最初にこれをやってから稽古をすればよかったのではなかったのだろうか。



こうして2時間の体育の授業が終わった。そして放課後、くじ引きでいくつかのチームが模擬戦をし、解散した。







その後、俺たちはいつもの1時間の特訓を終え、帰ろうとしていた。


「よっしゃー!今日も1日頑張ったぜ!!寮に戻ろうぜ!!」


レオナルドが陽気に言う。


「あ、そうだレオナルド。体育の授業のことでちょーっとお話があるんだが、いいよな?」


濱口がレオナルドに言う。


「やべっ!逃げろー!!<瞬雷(フラッシュサンダー)>!!」


レオナルドは足に電気をまとわせ、高速で寮へ走ってゆく。


「こらああ!!異能はずるいぞ!!!」


濱口が走って追いかけてゆく。


「あの二人はいつも元気でごわすな。」


ブライオスが言う。


「ああ、見てるだけでも楽しめるレベルだな。」


「それじゃあ寮に戻るでごわすか。」


ブライオスがそう言った瞬間、頭の中に声が響いた。


『ねえ、今から少し会えない?』


それはシャロルの声だった。腕輪の機能の<会話(チャット)>を使用しているんだろう。


「ああ、ちょっと用ができたからブライオス、先に戻っててくれ。」


ブライオスに言う。


「わかったでごわす。」


ブライオスが行く。


『いいぞ、どこにいる?』


腕輪越しにシャロルに話しかけるイメージで言葉を頭の中で発する。


『ありがとう。校庭前の芝生のところよ。』


そして校庭前の芝生へ向かうと、そこにはシャロルが居た。


「どうしたんだ?急に呼び出して。寂しくなったのか?」


「ちがうわよ!!ばかっ!!」


特に落ち込んでいるわけじゃなさそうだ。からかった時の反応でなんとなく分かる。


「じゃあどうしたんだ?」


「もし良かったら今日から私と個別で稽古してくれない?」


稽古か。これはまた突然だな。


「特訓の後にか?」


「別に嫌だったらいいのよ!!」


「いや、もちろん問題ないが、何かあったのか?」


1時間の特訓でさえかなり疲れるのにその後に稽古をしようと言うのだ。なにか強くなりたい理由があるにちがいない。


「私たちと同じクラスにいる”氷の魔女”って呼ばれてる生徒を知ってるかしら。」


「氷の魔女?残念ながら聞いたことないな。」


「アスピア・クリストラっていう名前で前にレオナルドが言ってた6人のうちの一人なんだけど。」


名前的に外国人か。聞き覚えのある名前だな。自己紹介の時に言っていた気がする。


「そいつにまたマルクみたいな因縁があるのか?」


「いえ、この学園に来てから知り合ったのだけれど、今度の異能大会でどうしてもそいつに勝ちたい理由ができちゃってね。」


勝ちたい理由か。別に詮索するつもりはないし、特に聞かないでおくか。


「お前も異能大会に参加することになったのか。」


「ええ。エントリーしたわ。」


ほう。どうやらそのアスピアとやらもやはり異能大会でしか戦わないタイプのようだ。レオナルドが言っていたことはやはり正しかったな。


「いいぞ。そういうことならしっかりマンツーマンで稽古してやるよ。」


「本当にいいの?…ありがとう。」


稽古できるのがそんなに嬉しいのか、いつにも増して嬉しそうだ。


ふと気付いたようにシャロルが言う。


「でもいきなり1回戦であなたにマッチングしたらどうしようもなくなっちゃうわよね。マッチング次第ではアスピアさんと戦えないかもしれないし。」


さん付けで呼んでるわけだし、別に悪い関係というわけではなさそうだな。

それにしてもシャロルが自ら大会に出ると言ってくれたのは好都合だ。大会では16人がエントリー人数なため、最大で4回しか戦うことができない。だから誰かに大会に出て例の6人のうち3人からレートを聞き出すのを手伝って欲しかったところだったのだ。


「ああ、それなら安心しておけ。大丈夫だ。」


「そんなに運に自信があるのかしら?」


「いや、ちょっと作戦があってな。」


もちろんそんなうまくマッチングするのはかなり確率が低い。だからしっかりと考えがある。


「頼むから変なことはしないでよね?」


「大丈夫だ。多分。」


「多分って…心配だわ…」


「ああそうだ。6人のうちの氷の魔女以外のもう2人も相手してもらっていいか?勝負数的に俺一人じゃ6人とは戦えないんだ。」


「確かにそうね。しっかり稽古してくれるならいいわよ。」


「ああ、しっかりするとも。だけど今日のところは用事があるから稽古は明日からでいいか?」


「ええ。いいわよ。絶対に忘れないのよ!!」


「忘れるわけないだろ。」


そう言い、俺は校舎へ向かう。



校舎に入り、俺は職員室へ向かった。


「ガイザー先生はいますかー?」


扉を開け、そう言うと奥の方から陽気な声が聞こえて来た。


「おっ?弟子入り志望かな?」


そしてガイザー先生が出て来た。そして廊下で先生に言う。


「先生!決闘しましょ!」

まさか先生に決闘を挑むとは…

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