魔剣使い
「私と決闘?はっはっはっ、面白い冗談が言えたものだ!」
ガイザー先生は笑いで返す。
「”説明会の時に腕輪の機能として決闘がある”とは言ってましたけどその腕輪が生徒のものに限るとは言ってませんでしたよね?」
俺は先生の左腕についている横線が一本入った腕輪を指差す。その腕輪の横線の色は生徒のが青色なのに対し、緑色をしていた。
「”教員用腕輪”も腕輪ですよね?」
するとガイザー先生の顔が真顔になる。
「まさかそれに気付く生徒がいるとはな。」
今までとは違う、鋭い目つきを向けてくる。
「やっぱり先生とも決闘ができるんですね。」
確認するように先生に問う。
「ああ。」
先生は冷静に返す。
「へぇ。やっぱり先生も異能を持ってるんですね。」
少し笑みを浮かべ、先生に言う。
「なぜそう思う。」
鎌をかけていることを警戒するように先生は返す。
「だって異能を持たない教師と戦う意味なんてありませんし、逆に教師が異能をもっているのなら戦えないと”目標”が達成できないですから。」
「確かにそう考えればそうなるか。」
否定しない…ということはやはり異能者だったか。おそらく学生以外にも数は少ないと言えど大人が異能にめざめることもあるのだろう。その大人たちが教師になっているといったところか。
「で、目的はなんだ。」
冷静な口調で問われる。
「異能大会のマッチングを決める権利です。」
運任せにマッチングするわけにはいかないからな。確実に上手くマッチングさせたいならマッチングを決める権利を得ればいい。
「だがそれだけだとこちら側には勝負するメリットがないぞ?」
勝負に値するだけのメリットを出せということか。まあこうなることは予想していたがな。
だが大きな問題となるのが、相手にとって大きなメリットとなる切り札がないということだ。そのことは相手も知っているはず。ここはもう相手のユーモアを信じるか。
「もし負けたらあなたの弟子になります。」
これで認めてくれるかは賭けと言っていいだろう。
「はっはっはっ!何を言うかと思ったら弟子になるか!!いいぞ!!その勝負乗った!!」
いつものような陽気な表情に戻る。
「とはいえルールなしの勝負じゃ受ける気にはならないなぁ。」
「剣での勝負。異能での直接攻撃と防御はなし。勝利条件はどちらかを倒すこと。ですよね?」
いわゆる一騎打ちというやつだ。おそらく相手が出したい条件はこれだろう。
「はっはっはっ!!よくわかってるじゃないか!!じゃあ校庭に移動するぞ!!」
「はい!!」
そして俺たちは真剣を倉庫から取り、校庭に移動した。
「もちろん今回ばかりは本気でいかせてもらうぞ。いいな?」
おそらく今日戦った時に言っていた”本気”は異能をなしにした場合の本気で、今言った”本気”は異能を使い、全身全霊で挑むということだろう。
「ええ、もちろんです。その代わり僕も本気でいきますね。」
「ほお!あれはまだ本気ではなかったのか!!」
「当たり前ですよ!今日先生と決闘するのにあそこで体力全部使っちゃうわけにはいきませんからね!ガイザー・ジェニスターに決闘を申し込む!」
俺は目の前に出てきたウインドウにルールを打ち込む。
「今日は久しぶりに楽しめそうだ!!」
そう言う先生に決闘のルールを確認させる。
「よろしい。決闘開始だな!!」
「はい!」
そして決闘が開始される。
「ふんっ!!」
授業の時よりも早い速度で眼前に迫る。最初から本気というわけか。ならばこちらも最初から本気でいかせてもらう。
「<身体強化>!!」
すぐさま剣を受ける。
「<時間加速>!!」
「<感覚強化>!!」
そして再び振られた剣を受ける。しかし。
俺の肩からは血が流れていた。
再生ではまだ葵の空間を切る力のように切られた部分が全く離れていない攻撃しか回復できない。そのためこのような剣の傷は治すことができない。
「異能ですか。」
先生に言う。
「よく分かったな!私の能力は剣を魔剣に変える能力だ!!」
剣を…魔剣に!?
「一度魔剣に変えると壊れるまで別の魔剣にはできないがね。今使っているのは魔剣ホログラス。本来の振るっている剣とは別に虚像を作り出し、本来の斬撃を見えなくする魔剣だよ。」
なるほど。通りで受けたはずの剣に切られていたわけだ。それなら!
「<超音波>」
俺は目を閉じ、自らが出した超音波の反響を感覚強化により感じ取る。そして剣を受ける。
ガキィン!!剣同士が鳴る音が響く。
「ほう!そんなこともできるのか!!」
「感嘆している場合ですか?<加速>!!」
俺は剣を加速させ、先生の魔剣を弾く。
「もう前みたいに相打ちにはなりませんよ。<加速>!!」
今度は最初から剣を加速させる。すると先生は凄まじい速度で弾かれた剣を戻し、受けようとする。
「<高周波振動>!!」
剣に高周波振動を加え、剣を振りかざす。
カギュゥゥン!!と激しい音が鳴り、先生の魔剣は粉砕される。しかし剣の軌道がずれて先生の首にかすり傷が入る。
「ほう!!剣を振動させて切れ味を上げたか!!では私も次の魔剣を出すとするよ。」
そう言うと、先生の手に黒い剣が生成される。
「ふんっ!!」
先生は剣を振り下ろす。
超音波で剣が虚像でないことを確認しつつ剣を受ける。
すると、音もなくさっきまで持っていた剣が崩れ去り、魔剣が眼前に迫る。おそらくこの魔剣の能力は風化だろう。
「<風の剣>!!」
咄嗟に空気をかなり圧縮した剣で防ぐ。
「やっぱり空気は風化させられないんですね。」
「ほう!!この魔剣の能力に気付いた上にそれにすぐ対策をするとは!!」
そう言いながらも先生は何度も攻撃してくる。
「<加速!!>」
今度は自分を加速させ、先生の後ろに回り込む。
空気を超速で流動させてチェーンソーのようにし、先生を上から叩き切ろうとする。
しかし再び先生の魔剣が壊れる代わりに剣が防がれる。
「ならばこれでどうだ!」
すぐさま先生は新たな紅い魔剣を作り、反撃してくる。
フォォォン!!と言う音を立てながら魔剣はぐにゃりと曲がり、左から攻撃しているのにもかかわらず後ろに回り込んで右から攻撃してくる。
「<大地の剣>!」
風の剣は左に回してしまったため、すぐに右の地面から剣を作り出し、浮かせて攻撃を防ぐ。
「剣ですし浮いてても問題ないですよね?」
先生に言う。
「はっはっは!!いいぞ!こちらも魔剣を使っているくらいだしな!それくらいは許そう!」
浮く剣はOKだったか。それならこれもOKなはずだ。
「<風の剣>」
「<大地の剣>」
「<硬化>」
「<高周波振動>」
風の剣と大地の剣を大量に作り宙に浮かせ、全ての剣の分子同士の繋がりを強くして硬くし、全ての剣を振動させる。
「浮いててもいいんですよね!<加速>!!」
一気に先生に大量の剣が飛んでゆく。
「まさかこんなに作れるとはな!」
そう言いながら先生は紅い魔剣をムチのように扱い、前方に盾があると思わせるくらいに前方を魔剣で切り裂き続ける。
ガガガガガガガガキュン!!と凄まじい音を立てながら剣たちが粉砕されてゆく。紅い魔剣に傷は入っているが壊れない。おそらく耐久度がかなり高い魔剣なのだろう。
だがこの攻撃が防がれることはもちろん想定内だ。この大量の剣は前に注意を惹きつけるためであり、後ろにある3本の風の剣こそ攻撃の本命である。
「<加速>」
超速で後ろの剣を先生に向けて飛ばす。魔剣で防げているのは前方だけで、後ろは無防備だ。
「もちろん気付いているぞ?」
先生がそう言うと、後ろの風の剣は背中に届く直前に粉砕されていた。
「どうして見えない剣が防げたんですか…?」
先生に問う。
「長年剣の道を歩んできたからな。気配でわかるのだ。」
気配でわかる!?人間の域を越しているな…
全ての剣を弾き終えると紅い魔剣は砕け散り、先生は蒼の魔剣を手にしていた。
「次はこちらの番だ!!」
そう言うと先生は蒼い魔剣を振りかざしながらこちらへ突撃してくる。
ガキュン!!
今度は普通に風の剣で魔剣を弾くことができた。
ガキュンガキュン!!
おかしい点を挙げるとするならば、剣を交えるごとに剣の速度が加速しているということだろうか。
ガキュキュキュキュキュキュキュン!!
何回か打ち合うと、明らかに先ほどの数倍の速度まで加速している。おそらくこの魔剣は剣を交えれば交えるほど加速するのだろう。
気がつくと最初の数百倍の速度まで加速していた。だが時間加速のおかげで普通に速度についていくことができている。だか早めに決着をつける必要がありそうだな。
「<時間加速>!!」
さらに自らの時間を加速させる。かなり身体的負担は大きいが、ここで妥協するわけにもいかない。そしてほぼ停止しているに近い世界を動き、先生の背中に回り、何度も切り裂く。それを防ごうと俺の速度についてきた魔剣は自壊し、粉々になった。
「<停止>」
加速しすぎた自分の慣性を停止により消し、時間加速を元の加速レベルに戻す。しかし早すぎる移動のせいか、気付くと先生から10メートル近く離れた位置にいた。
「がはぁっ!!」
血を口から吐きながら、ガイザー先生は膝をつく。
「こうなったら、切り札を使わせてもらうぞ!!」
先生はおそらく出せる中で一番強い魔剣を手にする。その魔剣は黒いにもかかわらず、白い残像を残していた。
10メートルくらい離れているにもかかわらず先生は剣を振るう。
「<加速>!!」
何かを感じ、すぐに右へ大きく加速し、避ける。
すると、スガァァァァン!!という音がしたかと思うと、先生が剣を振るった方向へ、決闘時に出現する水色の壁まで地面が真っ二つに割れていた。しかしその切れ込みの幅はごく僅かで、本当に切れているのかわからないほどだった。
「これを避けるとはさすがだな。これは断絶剣ディスレイドだ。」
この切れ方は知っている!!
「まさか…空間を…?」
「よくわかったな。この魔剣は空間をも断ち切る最強の剣だ。」
「くそっ!!<時間加速>!!」
俺は再び限界まで自らの時間を加速する。
「<跳躍>!!」
「<加速>!!」
「<空気抵抗耐性>!!」
「<空中跳躍>!!」
「<軽量化>!!」
「<超速加速>!!」
俺はこれでもかというくらい異能を使い、音速をも軽々と超える早さで先生に突撃する。
「残念だったな、この勝負もらったぁぁっ!!」
先生は俺が先生に届くよりも早く、その手にある魔剣を様々な方向に振りかざした。さっきの蒼い魔剣の効果が残っているのか、かなりの速度で凄まじい数の斬撃が繰り出された。俺がこの斬撃を避けることは不可能だろう。
しかし、次の瞬間、俺ではなく先生が切り刻まれ、倒れた。
「ぐっ…なぜっ…!!確かに斬ったはず!!」
「空間を切り裂く力は残念ながら効かないんでね。」
そう言い、残った力を振り絞り、倒れている先生にとどめを刺した。
空間を切り裂く力には再生が効くからな。あれだけ異能を使えば斬られる前に斬るしかないと考えて動いたと思われるだろう。それを利用したのだ。勝ったと確信するとどんな人にも隙が生まれるからな。
「なんとか勝て…」
うっ急に頭痛が…
気がつくと、上には見知らぬ天井が広がっていた。寮のものではないな。ここはどこだ?
「おっ、目が覚めたか!」
隣からさっきまでよく聞いていた声が聞こえる。
「ガイザー…先生…?」
「決闘が終わって隣を見てみればお前が倒れててな!決闘が終わったのに倒れてたからかなり心配したぞ!!」
「ここは…?」
「ここは保健室だぞ!」
なるほど。どうやら俺は決闘が終わった直後に倒れたらしい。決闘が終わっても疲労は消えないからな。おそらく異能の使いすぎだろう。ただでさえ疲労が溜まりやすい時間加速を限界速度で使っただけでなく異能を重ねがけしまくったからな。
「えっと…勝負は?」
「もちろんお前の勝ちだ。お前には今マッチングを自由にできる権利がある。」
どうやら決闘には勝てたみたいだな。よかった。
「それにしても最後の斬撃、どうやって防いだんだ?」
「ああ、いつも側に空間を斬り裂ける人が居ましてですね。その人用に培った力を使ったんです。」
「どんな力なんだ?空間を切り裂く攻撃は絶対に防げないはずなんだが。」
「別に防いではいませんよ。ただ斬られた瞬間に<再生>しただけです。斬られてもすぐに再生すれば問題ないですからね。」
「だったら他の斬撃も再生できたんじゃないのか?」
「いや、空間を切り裂く力みたいに斬られた幅が0な攻撃しか再生できませんよ。組織を作り出せるわけじゃないですから。」
「そうだったのか!!それにしても最後、完全に勝ったと思って油断させられたぞ!!」
「油断させられてよかったです。」
「弟子になれよ!!」
「いやそれは遠慮しておきます。」
反射的に返す。なぜ突然弟子になれ発言をしたのだ。
「なんだ、流れでいけるとおもったんだがな!!はっはっはっ!!」
一体どんな流れだ。今の会話的にそんな流れなかったぞ。
「あ、ちなみに先生ってレートどれくらいなんですか?」
「ん?760だぞ?」
760!?!?そんなレート相手によく勝てたな…特訓で俺のレートも大幅に上がってるのだろうか。
「すごいですね…」
「そろそろ帰った方がいいんじゃないのか?寮の仲間が心配するぞ?」
俺は保健室のベッドから時計を見る。その時計は9時を指していた。もうこんな時間だったのか。きっとかなり倒れたまま起きなかったんだろう。ずっと先生は側にいてくれたのか。どうやらガイザー先生はかなり生徒想いなようだ。
「そうですね!!今日はありがとうございました!!」
「ん?礼を言われるようなことしたか?」
「いろいろです!」
「なんか適当に誤魔化されたな…まあいいか!!はっはっはっ!!」
相変わらず陽気だ。
「それじゃあさようなら!!」
「おう!!」
そして俺は保健室を出て、寮へ向かった。
寮に着き、部屋に戻ると、みんなが心配そうに出迎えてくれた。
「おい水原!!お前なにしてたんだよ!!危うくレオナルドが勝手に一人で探しにいきそうだったぞ!!」
「おお水原!無事だったか!!勝手に探しに行こうとしてたのは濱口だからな!!」
「無事だったでごわすか!一体何やってたでごわすか?」
「ああ、ちょっとガイザー先生に用があってな。」
「ガイザーって俺が危うく弟子入りさせられそうになったあの先生だよな?」
「あの筋肉先生となにやってたんだ?」
「気になるでごわす。」
「えーっと、まあその諸事情で、決闘したんだよねー。」
苦笑いして誤魔化す。
「ああ、決闘か。」
「なんだ、決闘かー!」
「決闘でごわすかー。」
「「「ってええええええ!?!?」」でごわす!」
三人そろって綺麗な同タイミングで驚く。一人語尾があったが。
「お前!?相手先生だぞ!!」
「てか先生とも決闘できるのかよ!!」
「先生も異能者だったでごわすか!?」
「ああ、剣を魔剣にする能力だったね。剣の柄だけでもあれば魔剣にできるみたいだったよ。」
「魔剣!?!?!?」
「そんなもんがあるのか!!!」
「ちなみに勝ったでごわすか!?」
「うん。ぎりぎりだけど勝てたよ。」
「水原がぎりぎり!?」
「どーりでこんなに遅いわけだ!!」
「一体どんなレートでごわすか…」
「えーっと、760って言ってた。」
「760!?!??俺の190倍だぞ!!」
「強すぎだろ!?!?」
「よく勝てたでごわすな!!」
「どんな風に戦ったか聞かせろよ!!」
「俺も聞きたい!!」
「拙者もでごわす!!」
「えっとじゃあ会ったところからでいい?」
「おう!!」
「いいぞ!!」
「いいでごわすよ!!」
「えっとまずはねー…」
こうして俺はいつものようにルームメイトたちと話し始めた。今日は久し振りにかなり疲れた気がするけれど、とても楽しかった。
主人公のレートは今一体どれくらいになっているのでしょうか…




