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8話 人型マルルの実力

今日も朝日が差し込み、目が覚める。マルルはまだ本を読んでるようだ。


「おはようマルル」

「おはようご主人様」


いつも通り返事…え?今しゃべったよね?念話じゃなくてしゃべったよね?


「マルルしゃべれるようになったのか?」

「うん」


サラッと言ったがそもそもどうやって音を出してるんだ?


「どうやってるの?」

「本の中に呼吸器官と声帯と口の中の情報も載ってたから変形で再現した」


当たり前の様に言うが、そんな簡単に再現できるのだろうか?まあ、急激な成長に驚かされるのはいつものことだ。最近は慣れてしまった。


「もしかして普通に動けるようになったか?」


そう聞くと、当たり前の様に立ち上がり、軽くジャンプする。


「できるよ!」


まあ、そんな気はしてた。しゃべれるんだもん。関節の修正くらい簡単なんだろう。


「マルルは体のどんな所作ったの?」

「口と舌、声帯、肺、胃かな? 後は見えるところだけ見た目を変えた。 他の器官はマルルには必要ない」


意外といろいろ作ったらしい。舌や声帯、肺はしゃべるのに必要だろうけど、胃はいらないんじゃないか?


「なんで胃を作ったの?」

「マルルも口から食べてみたい」


意外と単純な理由だった。

マルルの新たな体のことは分かってきたが、人間の体ならいろいろ解決しなければいけない事がある。

今のマルルは誰が見ても7歳くらいの女の子だ。そんな子供を狩りに連れて行き、見つかったら明らかに怪しまれる。


「マルル、今の見た目だと狩に行くのは不自然だよ。 普通小さな女の子は狩りに行かないから」

「わかった、大きくなる」


そう言ってマルルは突然大きくなった。僕と同じくらいの大きさになるとマルルはそこで止まった。


「どうやったの?」

「中身を空洞にした」


たしかに中身が空洞でも見た目さえ良ければ問題はない。

じゃあ今日も張り切って狩に行こう。


その後、マルルの希望で人間用のお弁当を2個貰い、さらに餌用のパンを大量に買った。スライム500匹分の貰おうとしたら、さすがに多いと怒られ、銀貨3枚でパンを50個買うことにした。




~*~*~*~*~*~*~*~*~




森の中へ入ると、マルル500匹が迎えてくれた。

マルルの横には大量…おそらく1500ほどのゴブリンの耳と、耳を切り取られたゴブリンと、さらに干からびたゴブリン、そして干からびたゴブリンの上に居るメタルスライムが50匹ほど居た。

話を聞くと、帰る前にメタルの部分を少し残し、ゴブリンから栄養を吸収させて増やしたらしい。

まだ栄養の吸収が終わってないようで、メタルスライムがゴブリンの山からゴブリンを引っ張り、栄養を吸収した後に干からびたゴブリンの山へと投げる。

まあ、メタルスライムが増えてくれるのは良い事だ。多少ゴブリンの死体の山を見てかわいそうだと思ったのは仕方ない。あと、ちょっと死体が匂う。


さて、早速計画に移ろう。


今回は10匹のスライムと1匹のメタルスライムを1組としてそれを50組作る。

1組に1つパンを渡し、10組ずつを1班として班を3つ作る。そして3つの班にはそれぞれ北のドンガミスリル鉱山、西の妖精の滝、南の南都ハールワスの周辺の3箇所に行ってもらう。


「じゃあ、みんなしゅぱーつ!」


僕がそう言うと330匹のスライムが一斉に動き出す。この光景はなかなか壮観だ。


残った220匹はいつも通りスライムの増員に勤める。




~*~*~*~*~*~*~*~*~




スライムを増やして30分。今僕は人型マルルと一緒に居る。するとマルルが話しかけてきた。


「今北に向かってるマルルが人間見つけたんだけど、どうする?」


そうか、今までこの森の中では人間に会うことは無かった。こんなゴブリンとスライムしかいない森、誰も来ないからね。でも、森を出たら違う。普通に人間に会うこともあれば、スライムだから討伐されることもある。


「人間は殺さないで。 襲われたら全力で逃げて」

「わかった。 逃げるとき合体使う?」

「いや、合体は見せたくないから普通に逃げて」

「うん、そうする」


これで、マルルが人間を殺して問題になったりはしないはずだ。




~*~*~*~*~*~*~*~*~




その後、さらに10分ほど経つと3匹のゴブリンが現れた。


「マルル倒したい! この体試したい!」


たしかにマルルは人型になってから戦ったことが無い。良い機会かもしれない。


「いいよ、軽くぶっ飛ばしてきな!」


そう言うとマルルは1歩踏み込む。


ビュン。


一瞬でゴブリンの前にたどり着き、腹部にパンチを1発入れる。


パァ~ン…。


ゴブリンの腹部が爆散した。

そのまま残り2匹のゴブリンにも同じようパンチを入れ、爆散した。


「この体すごい使いやすい!」


そうか、それは良かった。うん。


いや!おかしいでしょ!

たしかにスライムは筋肉の塊で、力は強いってスライム大全に書いてあったけど、いくらなんでも強すぎない?球体で力の効率が悪いと書いてあったけど、人型になったらこんなにも強くなるとは。


「マ、マルル…その体そんなにいいのか?」

「この体、一部にちょっと力入れるだけでヒュン!って動くんだもん。 前の体は全体に力を入れると、ポヨン!ってなって、やっとジャンプとか出来たもん」


つまりは力こぶで今まで飛んだり跳ねたりしてたのか?そう考えるとどんな怪力なんだよ。さすがに今のは人前ではできない。10歳の女の子がパンチでゴブリンを粉々にするなんて明らかに異常だ。


「人前では今みたいに全力でやっちゃだめだよ」


そう言うとマルルが不思議そうな顔でこちらを見てくる。


「人間はそんなに力強くないの。 大人でもそんなに力強くないのに、子供がそんな力を人前で見せたら絶対怪しまれるからね」

「そうじゃない」


そうじゃない?なにが違うんだろう。


「今の全力じゃないよ」

「え?」

「だって軽くって言われたから」


絶句した。

この子強すぎる。


「とにかく、人間の前では普通の人間と同じくらいの力しか使わないでね」

「わかった」


これからはマルルの教育をもっとしっかりしよう。じゃないと、絶対いつかやらかす。




~*~*~*~*~*~*~*~*~




数時間後、今日の狩りも終わった。今、目の前だけでなく、左右も一面スライムだ。もう数えたくないのでマルルに聞いたら「ここに居るのはだいたい900。 正確な数はマルルも分からない」と言っていた。そのうち150がメタルスライムらしい。旅行中とあわせて1200か。もうスライム軍となりかけている。


「今日もかなり増えたな」

「うん、マルルいっぱい。 でも、もっと増やしたい」


もうマルルの勢いは止まらない。この調子で行けば森のスライムすべてを支配しそうだ。


「じゃあ帰ろうか」

「うん!」


そう言って街へ戻る。




~*~*~*~*~*~*~*~*~




街へ戻ってる途中、あることに気付いた。ゴブリンの耳を持って帰るのを忘れた。まあ、明日取りに行けばいいか。


そんなことを考えながらギルドに戻ると少しいつもより騒がしかった。

なぜか兵士の人がギルド内に居る。気になるのでいつもの受付のお姉さんに話を聞くことにした。


「なにかあったんですか?」

「今日はじまりの森から突然大量のスライムが集団で出て行くのが目撃され、なんらかの異常があったのではないかと、明日冒険者を数人派遣することになりました。 数日前から5匹の集団で行動するスライムや、干からびたゴブリンが確認されています。 調査が終わるまで鉄級冒険者の立ち入りは禁止となりますので、ランネルさんは行かないようにしてください」


やってしまった。

スライムなんて無視されると思ったが、確かに100匹のスライムが森から集団で出てきたら明らかに異常だ。それに5匹で行動するスライムも目撃されてたらしい。


そろそろマルルの鑑定をしたかったがそれどころではない。

緊急会議だ。

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