9話 緊急会議と脱出
とある宿のとある一室。
そこでは今、重要な会議が開かれようとしていた。
「さっき聞いた話だと、マルルの移動がばれたらしい。 そして森に異変があったと思われてる」
「うん」
「そして、森の調査が行われるらしい。 それをされるとマルルのことがばれるかもしれない。 だからなにか対策をしないといけない!」
「わかった!」
そう、調査チームから逃れよう会議だ。
「調査チームは人数不明。 ただ、はじまりの森は初心者がよく行くから、なにかあったら大変だ、と言うことでかなり大掛かりになるらしい。 多分隠れてやり過ごすのは無理だ」
はじめりの森は僕のような弱い冒険者が最初に行くことで有名だ。弱い冒険者が行くところに強い魔物が居たら、かなり大きな被害が出る。そのため、調査が終わるまで鉄級冒険者や一般人の立ち入りは理由が無い限り禁止になった。調査自体も銅級以上のみで行われるらしい。
「だから、逃げる! 問題は逃げ方だ! スライム100匹でこれだけ大騒ぎだ。 今残ってる900匹をそのまま動かすわけにはいかない。 なにか方法を考えないと」
すると早速マルルが提案してきた。
「人間になって移動したら?」
「それはだめだ、立ち入り禁止の森から人間が大勢出て来るのはおかしい」
「動物になったら?」
「はじまりの森には本来動物が居ないんだ。 だから動物もダメだ。 そもそもなにかが大量に出てくること事態おかしい」
すでにスライムだけで大騒ぎなのに他のものが大量に出てきたらどんな騒ぎになるか想像もつかない。
「じゃあ大きな魔物は? 1個になればいいんじゃない?」
「そんなことして見つかったら間違いなく討伐隊が作られると思うよ」
それはそれで、騒ぎはその魔物のせいだったって収まりそうだけど、追われることになったら逃げた意味が無い。
「じゃあ馬車は?」
森から馬車が出てきたらおかしくないか?
いや、森を出る瞬間さえ見られなければ、道で見られても馬車なら不自然じゃない。
「それで行こう! 900匹で馬車何台になる?」
「なってみないとわからない」
「じゃあ一回なってみて」
そして森のマルルが馬車になった結果は、
「5台出来た」
馬車5台もあるとちょっと目立つよな。
「もうちょっと減らせない? 馬車1台の馬増やしたり、荷台の荷物に化けてさ」
「わかった」
そう言ってマルルが改造し、
「2台になった」
「それなら大丈夫だね」
でも、まだ少し心配だ。マルルがちゃんとした馬車になれてるだろうか。それにマルルの馬車の速度は普通なのだろうか。マルルのことだからとんでもないスピードで飛ばしてもおかしくない…かもしれない。
「マルル、どんな馬車になったんだ?」
「こんな馬車」
マルルがそう言うと、頭の中に森にある馬車の映像が浮かんだ。
「今のはなんだ?」
「情報共有で映像送った」
え、そんなことできたの?じゃあ森の中で作業してるマルルや旅行中のマルルの見てる光景も見れるのか?
「もしかして全部のマルルの見てる光景を僕にも見せられるの?」
「できるけど、多分無理」
できるけど無理って、どっちなんだ。
「どういうこと?」
「見せることは出来るけど、1200の視界を処理するのはご主人様が耐えられない」
言われて見るとそんな気がしてきた。1200は耐えられる気がしない。
「じゃあ、森の中だけみせてもらえる?」
「わかった」
すると、まるでもう1つ目が増えたように森の中が見える。馬車の見た目は金属製で馬4頭と御者1人が操縦してる高級馬車という感じだ。実際は全部スライムだが、見た目は問題なさそうだ。
「これは便利だな。 今旅行中の3箇所の映像も見せてもらえる?」
「うん」
すこし頭痛がする。4つで頭痛がするなら1200なんて絶対無理だな。試さなくてよかった。
そして、スライム110匹の集団行動を見て思ったが、これは目立つ。
「マルル、今旅行中の集団、なにかに変形しないか? これは騒ぎになるの仕方ないよ」
「わかった。 何になればいい?」
「馬とかになれない?」
「やってみる」
110匹のマルルが合体し、馬4頭に変形した。だが、マルルいわく
「動き辛い」
「どうして?」
「人間の骨格のまねをして作ったけど、馬だとうまくいかない。 関節がちょっとだけキシキシ言うけど、動くことは出来る」
前はちょっと動いただけで物凄い音がしたから、それから比べれば大分いいだろう。それに、スライムでいるよりはましだ。今回は少し無理してもらおう。
「動けるなら馬になったまま移動してもらえない? 馬が使えないって事は、試してないけど多分馬車も使えなくなっちゃうと思うし、ちょっと辛くてもがんばってもらえる?」
「うん!がんばる!」
マルルの同意も得られたし、作戦を続けよう。
「馬車の見た目は問題ないから、一回動かしてみよう」
動きも問題はない。自分で直接見れるとかなり分かりやすい。
作戦の第一段階を始めよう。
「早速森を出ようか。 人が居ないタイミングを見計らって、道に出よう。 今見えてる視点全部切って、御者2人に切り替えてくれない?」
「わかった」
視点が切り替わり、2台の馬車の前方が見える。
人が居なくなったので、すばやく森を出る。
「まずは成功だ。 次は東へ向かおう。 北と西と南はスライムが見つかったって騒いで警備を強化してるから、東が薄くなってるかもしれない」
東へ向かい、ずっと進む、進む、進む…進む…zzZZZ
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「ご主人様起きて!」
マルルに起こされ、目が覚める。同じ光景ばっかり見ていたらいつの間にか眠っていたようだ。
「どうしたんだ?」
「なんか遠くに門が見える」
馬車から見える視界を確認すると、前に関所が見えた。
しまった!馬車の場合は通行証が必要になるのを忘れていた。
「どうすればいい?」
マルルが聞いてくる。関所がどんどん近付く。止まれば間違いなく調べられる。そうしたら正体がばれるかもしれない。幸い門は開いている。もうこれしかない。
「無視して突っ切って。 追って来たら逃げよう」
「わかった!」
関所に近付くと門番らしき人が見えてきた。門番は立ち上がり、こちらが止まるのを待ってるようだ。
だが、止まることはない。
止まる気配が無いことに気付き、慌て始める門番。なにか言ってるようだが、視覚以外は無いので、何も聞こえない。
「マルル、門番なんて言ってるかわかるか?」
「うん。 ”止まれ! 止まらないと攻撃するぞ!”って言ってる」
当たったらスライムってばれるかな?でも、当たらなければどうという事はない。
「マルル、ちょっとスピード上げて」
「うん!」
速度を上げると、門番はさらに慌てて増援を呼ぶ。
増援の兵士は武器を持ってるが、この馬車の速度なら来る前に門を通れる。
そう思ってると、4人の兵士が弓を構え撃ってくる。
1本は外れ、2本はメタルスライムでコーティングされた馬車にはじかれる。
だが、残りの1本が2台目の馬車の御者マルルの足に刺さる。
「マルル大丈夫か?」
「うん、痛くもなんとも無いよ。 だってスライムだもん」
そうだった。見た目は人間だが実際はスライムだ。コアさえ無事なら痛みすらない。
「追って来てるか?」
「来てないみたい」
その後、完全に追ってきてないことを確認したあと、マルルになにかあったら起こすように頼んで僕は眠った。




