『火の手』
敵陣地では誰も来るはずもない裏道を警備していた連合軍人が酒を飲みながら欠伸をしていた。
マックスはすかさず背後に周り、叫べぬよう口を押さえ、喉にナイフを突き立てた。
「て、敵しゅ……!」
悲鳴にも似た叫び声を上げた兵士の首を間髪入れず跳ねた。
しかし、誰かに見られたのか角笛を吹かれた。
魔法や弓矢が飛んでくるが、鉄の甲冑には効果が薄く、火の魔法が燃え移り、火の手が上がる。
それを合図に驚くほど早く王国軍の部隊が正面と裏道からなだれ込み、次々と連合軍を制圧していく。
連合軍側の部隊長が鎧もなく逃げ出すところだったが、王国軍に囲まれる。
「どけ」
マックスは王国軍の部隊を押しのけ連合軍の部隊長の前に立つ。
「た、助けてく……」
最後まで言い終える前に首を跳ねた。
「おー、マックス。よくやった」
王国軍の部隊長は呑気な声を出して後ろからやってきた。
「てめぇ……隠れてたならさっさと助けに来やがれ。報酬はイロつけてもらうぞ」
「ああ、わかってるよ。ところでお前、王国軍に入らないか?給料いいぞ」
「興味ねぇよ」
「そっか、部下に欲しかったんだがな」
「お前の下に?冗談じゃねぇ。ところでヒーラーはいるか?」
「ああ、いるぞ。……おい、ヒーラー呼んでこい」
部隊長は近場の部下に命令した。
「マックス、俺はアインだ。お前を気に入ったよ。また頼むな」
そう言って手を差し伸べた。
「……覚えとくぜ。悪い意味でな」
マックスは差し伸べた手を払った。




