『族長』
しばらく、1人で飲んでいたが、ミルを思い出して、表に出ると樽を転がしてるミルと酒樽を抱えたドワーフが酒場に歩いて行った。
後を追い、酒場に辿り着くと、
ミルが英雄扱いされていた。
「皆さん、追加分です!」
酒場のドワーフたちから歓声が上がる。
「エルフの酒って聞いたから甘ったるい弱い酒かと思えばやるじゃねぇか!」
「エルフもやりゃあ出来るんだな!」
と豪快に笑ってる。
「契約してくれれば定期的に持ってきますよ!」
「……お前、商売しに来たのか?」
「えー?!なんですか?!」
(こいつ、耳に栓してやがる)
ドワーフの声は大きいので耳栓してちょうどいいのだろう。
ドワーフの誰かが言った。
「これ族長にも飲ませてやりてぇな!」
「マックス!族長呼んできてくれ!」
「帰って早々パシリかよ、お前らで行けよ」
マックスが断ると
「族長、寝起き悪いから、なあ?」
「そうそう、マックスの顔見たら俺らよりは和らぎそうだし」
「わかったよ、行けばいいんだろ」
舌打ちをしながら族長の家へ向かった。
「マックスさん、私も行きます!」
耳栓を取りミルが後から着いてくる。
「族長の家着いたら、耳栓しといた方がいいぞ」
とマックスはミルに忠告した。
「え?なんでですか?」
「寝起き悪いからな」
◇
「じゃあ、族長起こすぞ。耳栓しろ」
マックスは緊張した面持ちで兜のバイザーを下ろした。
「え?え?そんなヤバいんですか?」
「お前はここで待ってろ」
「は、はい」
ミルは耳栓を付け、マックスを見送り、しばらくすると
「何の用だ!!クソガキが!!」
耳栓の上からでも鼓膜に響きミルは手で両耳を塞いだ。
しばらく、激しく争う音がして、静かになった。
「ま、マックス……さん?」
ミルは中に恐る恐る入った。
「マックスさん……?」
声は震えていた。
奥の部屋に辿り着くと肩で息をしている一際ガタイのいいドワーフの後ろ姿が見えた。
族長だ。
一目見ただけでわかった。
そしてマックスは大の字で倒れていた。
「ひっ!」
悲鳴にならない悲鳴を上げ、咄嗟に口を押さえたが遅かった。
ゆっくりと振り返る族長と目が合った。
「小娘ぇ!!」
逃げ出したい衝動に駆られるが足がすくんで動かない。
「客人かぁ!!珍しいな!!」
「族長、その寝起きの悪さなんとかなんねぇのか?」
マックスは起き上がるとバイザーを上げた。鼻血が流れている。
「首いてぇ」
「マックス!!どうした?鎧ベコベコじゃねぇか!!」
「半分はあんたがやったんだよ」
マックスの鎧は凹みが増えており、鼻血を拭いながら立ち上がった。
「み、ミル……です!」
「族長にこいつが作った酒を飲ませたいって話が出てよ。俺が貧乏くじ引いたんだよ」
「すまんすまん」
族長は軽く謝った。
「あと族長、人間用の全身甲冑20~30着欲しいから手伝って」
「ん?人間用?なんで魔法文化のやつらが鉄の甲冑欲しがるんだ?」
「今、王国軍と魔王軍で争ってるんだよ。手段は選べんて事だろ」
「それより、酒とか言ってたな?みんな酒場か?」
「そうだよ。みんな説得すんの手伝えよ」
「鉄の仕事ならみんな喜ぶだろ?俺から言ってやる」
「頼んだ。俺は鼻血が止まったら行くよ」




