『鉄鋼兵団』
帰還中、荷馬車に揺られながらアインは考え込んでいた。
見兼ねてマックスが声を掛ける。
「お前、暗くなったんじゃねぇか?」
「おいおいおい、俺だって考え事ぐらいするさ」
「何を考えてるんだ?」
「鉄の兵士の有用性だよ」
「正気か?鉄だぞ?」
「それ着てるお前が言うか?」
アインは続けて
「まぁ、聞けよ。今回の戦は鉄がいなければ成り立たなかった」
「風のあいつもな……」
「鉄への差別はもちろんあるが、綺麗事言ってられないのが戦だろ?」
「鉄の部隊でも作ろうってのか?」
「そうだ」
アインは力強く頷いた。
「着るやつぁいねぇよ」
「いや、いる。うちの部隊もお前のお陰で鉄の先入観がなくなったやつがいるさ。俺含めてね」
「……そうだな、この部隊は居心地がいい」
「よし、決めた。俺は王にこの事を報告して鉄鋼兵団を作る」
「鉄鋼兵団?名前まで考えたのか?」
「うるさいな、とにかくお前は街に戻っててくれ、俺は王国まで行ってくる」
「お、おい」
アインは荷馬車から降り、馬に乗って王国に向かった。
「行っちまった……」
「鉄の大将、アイン部隊長どうかしたんですかい?」
「鉄の部隊作るんだとよ」
「へぇ、そりゃ面白そうだ。俺志願しますよ」
「鉄身につけると魔法使えねぇぞ。不便じゃねぇのか?」
「大将の戦いぶり見てたら憧れるやつも多いですって、なぁ皆!」
皆一様に大きく頷いた。
「へ、そうかい」
マックスはどこか嬉しそうだった。
◇
「あ!マックスさん」
街へ戻るとミルが酒樽を転がしていた。
「お前帰ったんじゃなかったのかよ?」
「帰ってまた売りに来たんですよ。この街の酒場はお得意さんなので、それにしても……」
ミルはベコベコに凹んだ甲冑を見て
「今回はだいぶ激しかったんですね」
「まあな」
ミルはマックスの顔を見て
「なんか……いい事ありました?」
「は?」
「なんか表情がいつもより柔らかくなったみたい」
「うるせぇ」
◇
一方、アインは王国の謁見の間にて、鉄鋼兵の有用性を熱心に語っていた。
王の前では跪き視線を下に向けるのが礼儀であった。
「なるほど、それほどの価値があると、そなたは申すのだな」
「はっ!此度は鉄の傭兵マックスの活躍抜きにしては生き延びる事ができませんでした」
「アインよ」
「はっ!」
アインは首が飛ぶかも知れないと覚悟した。
「面白い。やってみせぃ」
「ははっ!では、すぐに着手致します」
アインは一礼すると謁見の間から出て行った。
大臣が王に話しかける。
「よろしかったのですか?世界が忌み嫌う鉱物を加工して着るなどと」
「アインはあれで先見の明がある。ワシらは歴史の転換点へ立ち会ったのかもしれぬ」
大臣はまだ納得しないようで
「はぁ」
と肯定とも否定とも取れるような返事をした。
「やった、やったぞ!許可がおりた!首飛ぶかと思ったー」
アインは喜びを胸にマックスの待つ街まで馬を走らせた。




