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鉄と魔法  作者: コアラ
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『防波堤』

「よく生きて帰った。報酬は弾むぞ」

「へ、大将が激励なんて珍しいじゃねぇか」

「もう一仕事頼むな!」

アインは傭兵一人一人に声をかけ、激励していた。

治療用の天幕に入り重症を受けた傭兵には手を握り

「お前たちのおかげで本隊は無事だ。帰ったら奢るよ」

「女を抱きてぇな」

「ああ、奢ってやるとも!」

最後にマックスの様子を見に行った。


「!……マックス」

アインはマックスの身体を見て息を飲んだ。

大きく引き締まったその身体中至る所、無数の古傷が刻まれていた。

この男は何度死地を経験したのだろう。

アインはマックスの強さの裏側を知った感じがした。

「よう、アイン。酒あるか?」

「ああ、あるぞ。治療が終わるまで待て」

「……魔法ってのは綺麗だな」

マックスはヒーラーの光る手を見ながら呟いた。

「……そうだな。だが、お前の鉄もよく見ると綺麗だ」

「へ、らしくねぇじゃねぇか」

「本音だよ。今まで偏見で見ていたが、よく見ると強くてしなやかで美しい」

「……俺も鉄は好きだ。こいつは裏切らねぇ」

「なぁ、この戦終わったら、1杯付き合えよ」

「……お前の奢りか?」

マックスは疑いながら尋ねた。

「当たり前だ」

「なら、付き合ってやる」

「今夜、敵は来ないだろう。見張りはもちろん立てるが、今日は酒飲んで寝ろ。明日も働いてもらうからね」

「どこまでも人遣いの荒いやつだよ。お前は。報酬は4倍にしろ」

「王国の財源が底なしだと思うなよな」

「ははは、聞いただけだよ。いててて」

「治療中ですので動かないでください」

ヒーラーは汗を拭いながらマックスの傷を必死で癒している。

「ここにいたら邪魔になりそうだから、この辺で俺は先に寝るよ。お前もしっかり寝とけよ」

「ああ、酒は外に置いておけ」

「飲みすぎて二日酔いにはなるなよな」

「そんなバカじゃねぇ」

アインは、じゃあなと治療用の天幕から出て行った。

「マックスさんは凄いですね」

治療をしながらヒーラーは話しかけて来た。

「何が?」

「こんな短期間でアイン部隊長にここまで信頼を寄せるなんて」

「ふん、黙って治療に専念しろ。酒が飲みてぇんだ」

「わかってますよ」

アインの読み通り、夜襲はなかった。

アインの言葉に全員安心して夜を明かし、次の日には準備も万端、士気も高く、何よりも全員が復讐に燃えていた。



夜が明けて、早朝

アインの部隊は突撃派と防衛派で分かれていた。

傭兵や正規兵が混じりあって言い合いをしている。

「敵を待っててもしょうがねぇ!仲間の仇を討ちに行くぞ!」

「いや、防衛戦だ!ここで踏ん張れば必ず応援は来る!」

「そんな来るかも分からねぇのに待ってられるか!」

「部隊長!どうしますか?!」

皆の視線がアインに集まる。

「だとよ、どうする?」

マックスはアインに聞いた。

アインは顎に手を当てて考えた。

「……防衛戦をする」

とだけ伝えた。

口々に突撃派から抗議の声が集まる。

「そんな消極的な!」

「俺は1人でも行くぜ!」

「突っ込んで死んだ方がマシだ!」

再びアインが口を開く。

「まあ、聞け」

皆、一様に静かになる。

「ここで防御の陣を敷いてもさっきの二の舞なのはわかってる。奴らは一丸となってこの一本道から来るだろう」

森の間の道を指さす。

そして唇を噛み締め続けた。

「……ここで死体を積み上げ、防波堤にする」

またも抗議の声が集まる。

「死んだ仲間を盾にするのかよ!」

「お前は鬼か!」

騒ぎの中、アインは話し続ける

「そして、傭兵部隊はゲリラ戦が得意なやつが多い。左右の森に潜んでくれ。こうでもしないと俺たちは負ける。頼む、俺にはこれしか思いつかん」

部隊は静まり返った。

アインはスタスタと死体のそばまで行き、抱えた。

「……すまん、もう一働きしてくれ」

ポツリと言ったその一言をマックスは聞いていた。

「……手伝うぜ」

マックスも死体を一本道に運ぶ

「俺も」「俺も」

と続々と手伝う者が増え、結局全員で死体の防波堤を作った。



「……マックス」

「なんだ?」

「魔王軍の風魔法使いの顔覚えてるか?」

「ああ」

「あの魔法に対抗できるのはお前の鉄だけだ。必ず隙を作る。一点突破してやつを叩いてくれ」

「……任せておけ」

「頼んだぞ」

祈るような言葉だった。

「大盾部隊!前へ!」

アインの読み通り魔王軍は進軍してきた。

まるで死の進軍だった。

大地を震わせながら、アイン部隊の最終防衛ラインに近づいてくる。

「来るぞ!詠唱、弓兵用意!傭兵部隊配置につけ!」

マックスは森の中息を潜め、ナマクラとなった鉄剣を握りしめた。

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