『傭兵の意地』
「野郎共!怯むな!!」
一人一人大声を張り上げながら威嚇するように踏ん張る。
弓矢に倒れる者、四方八方囲まれ、石槍で串刺しにされる者、1人また1人と減って行くが、傭兵たちは致命傷であるにも関わらず、最後は敵の喉元に噛み付く勢いで最期を迎える。
「うおおおおお!!」
数十名の命懸けの突撃。
死をも厭わぬその姿に魔王軍は狂気を感じた。
「こいつら、致命傷でも向かってくるぞ!」
「慌てるな!囲んで一人一人潰せ!!」
魔王軍にも動揺が見える。
「野郎共!相手はビビってるぞ!!殺せぇ!!」
「……ぐはっ、おう!!」
傭兵の1人は血を吐きながらも前進をやめない。
「魔法使い!いるかぁ!!」
「いるぞぉ!」
「詠唱開始!!」
マックスは怒号のような号令をかけた。
マックスは大盾部隊を一人一人確実に倒していく。
「魔法使い!左端だ!ぶっ放せ!!」
ズドォォォォン!!
左端の陣形は崩れ何十人という数の敵兵が紙切れのように吹き飛んだ。
「その調子だ!詠唱続けろぉ!!」
ドガッ!!
「ぐっ!」
マックスは後ろから棍棒兵の1人に叩き伏せられた。
「死ねぇ!!」
棍棒兵はトドメを刺しに来る。
「くそったれ……!」
横から石の矢が何本も棍棒兵を射貫き、倒れる。
「マックス!大丈夫か!?」
「……大丈夫だ!かかれー!!」
「おおおおーー!!」
体力はとうに限界だった。
疲労で震える脚をねじ伏せ
握力を失った腕に気合いを入れ
それでも尚向かってくる傭兵たちに次第に数で勝るはずの魔王軍は怯んだ。
「よし!敵が退いた!さがれー!!」
マックスは撤退の指示を出した。
それと同時に風魔法使いが詠唱を始めたのをマックスは見逃さなかった。
「散り散りになって森に逃げろー!!固まるとつぶてが来るぞぉ!!」
傭兵たちは散り散りになって逃げた。
魔王軍はどこを狙うか迷い、統制が崩れた。
バラバラに傭兵たちを追った。
王国軍の傭兵たちは洗練されていた。
ゲリラ戦は得意分野であった為、1人を追っていた魔王軍に少人数で奇襲をかけ、魔王軍もじわじわと損耗して行った。
魔王軍はマックスには執拗に追っ手を放ったが、森の陰から飛び出してくる傭兵たちに次々と倒されて行った。
マックス自身も木を駆け上がり、追ってきた魔王軍を上から襲った。
剣は刃こぼれで斬りにくくなっていたが、鉄の硬さを利用し頭をかち割った。
新しく鍛えた鉄剣はマックスの狙い通り強くしなやかに仕上がっていた。
魔王軍の軍勢を引き付けながら森を抜けた。
その時、
「魔法部隊!放てー!!」
アインの号令が轟いた。
森を焼き付くさんがばかりの爆発と火炎が追って来た魔王軍を吹き飛ばした。
「全軍!退却!!」
魔王軍は退却命令を出し、退いて行った。
「マックス!大丈夫か?」
「はぁはぁ……なんで逃げなかったんだよ……」
マックスはその場に座り込んだ。
「ここまで来ると予感してたんでな。よくやった」
と手を差し伸べた。
マックスはその手を掴み立ち上がる。
数十人いた傭兵たちは僅か十数人まで減っていたが、本隊、そしてマックスは無事生き残った。
「これから、どうする?」
「魔王軍が退けばよし、でなければここで防衛戦だ。この後ろには王国の領地がある」
「増援は?」
「まだ見えない」
「ヒーラーいるか?」
「すでに準備してある。手当を受けろ」
魔王軍の追撃に怯えながら、日は暮れていった。




