冒険者ー22
全壊の続きです。
本編はジレット家のエピソードです。
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それではお楽しみください
昼を少し過ぎた頃に、しょんぼりしたウインディーが帰って来た。
「旦那様、本当に申し訳ありません。
大聖女様に会う事は叶いませんでした。
教会にはこれまで多額な寄付を長年してきたと言うのに、融通が全く利かないのですから」
「そうか、大聖女様も忙しいのだろうな。
それにもう良いのだよ。
わしは一方的にあの娘との約束を破った、これが報いだからな」
「旦那様、そんな」
「そうなんだよ、マリーと三人で対応を話し合っただろう。
今のわしの症状は聞いた槍の勇者が死んだ症状と良く似ているから、厳重な警護は意味が無かったと言う事だ。
マリーはおかしな屁理屈を言ったが、貴族として一旦口にした約束を破る事は、貴族の矜持を捨てる非常に愚かな行為だ」
「それでしたら、あの時に私が強引にでもモニカレイ様を送り出せばよかったのだが、本当に残念です」
「いや、もうその時は手遅れだ」
「そんな事がありましょうか」
「まぁ、モニカが残ってくれている現状を良しとしようじゃないか。
済まんが此処へマリーとデグナール、タニアンとモニカを呼んでくれないか」
「かしこまりました」
「お呼びいたしました。
それでは私は失礼します」
「いや待て、ウインディーも同席だ。
これから話すことをよく聞いてくれないか」
初めに入室したマリーは隠そうともせず鼻をつまみ明らかな侮蔑と不快感を見せた。
次に来たデグナールも同様に、わしと真面に顔を合わせる事をせず、窓際に直行して今は臭いを嗅ぐまいと窓際から外を眺めている。
タニアランはモニカレイの腕を抱えて入って来た。
「皆よく来てくれた、お前たちはこの臭いが苦痛でしかないだろうが今しばらくは我慢てほしい。
わしが正気な今のうちにカルフーン家の後継者を決めたいと思うからな。
言いたいことはよく分かるが、今は黙ってわしの言う事を聞いてほしい、良いな。
初めにわしの後継領主はモニカだ。
モニカレイに領主の権限の全てと全財産を委譲する」
「ちょっと待ってください御父上!
それはあまんまりじゃないですか、なぜ私じゃダメなのでしょうか」
「反論は一応聞くが既に決めた事だ。
タニアランは続けてマンブール市の代官だ。
この間見たがお前の治政は素晴らしいからな、これからも期待しているぞ」
「お父様、お褒めありがとうございます。
私くしとっても嬉しいですわ」と、良い笑顔を見せた。
「デグナール、お前は王宮に行け。
文官として身をたてろ、一応カルフーン姓は名乗らせてやるが其れだけだ」
「マリーはベルナールに付いて行け。
今後カルフーン家は縁を切らせてもらうから、名乗れるなら旧姓を名乗れ。
わしの隣よりもその方が良いのだろう。
ただし、今後はカルフーン本家からの支援は一切しない。
良いな、明日にでも出て行ってくれ」
「最後だデグナール、言いたい事があるなら聞いてやろう」
もう悪臭など気にせずベッドのジレットに迫り顔を真っ赤にして、プルプルと震える腕で、大げさな身振りをして盛大に不満をぶちまけた。
最後に「何故何故何故、私じゃダメなのですか。
男は私だけですよ、妹はいずれ婿を取るでしょう。
どこの馬の骨か分からない者に、我がカルフーン家を好き勝手にしてもらうわけにはいきませんよ。
正当な血を残すのであれば、当然男の僕でしょう」
「そうか、それで何だと言うのだ、わしの情けで姓だけは残してやるのだが。
お前に任せたマンブール市がどうなったのか、四方や忘れたとは言わせんぞ。
お前の尻ぬぐいを立派にしてみせ、尚且つ大いに発展させたのはタニアンだろうが。
この差を何と言うのだ」
「そっそれは、私の人選した部下のせいです」
「そうか、タニアンも誰かの勧めでもなく、自分が人選した部下だがな。
要するに、お前に人を見る目がない、それだけだ。
だから、王宮に入りその他大勢がする仕事がお前に向くのだよ。
その為に家名を名乗らせてやるのだ」
「では、モニカレイはどうなんですか。
男女に現を抜かす我がまま娘に領主が務まるとは思いませんがね」
「ではお前に聞くが、最年長のお前は今まで何をしてきたのだ。
モニカは家に月々1500万ビィは入れているぞ。
お前はそれ以上をつまらん女のために浪費しているだろう」
「ふん、たかが1500万ビィ位、それが何ですか」
「だったらお前も金を稼いでみる事だな、事業を起こさなくても難しさがよく分かるだろうて」
「ウインディー、用は済んだから王都へ行く者には下がってもらってくれ。
そうだ、王都の邸に住むことは許さんぞ、そのように伝えておくからな」
「はい、かしこまりました。
では、マリーにデグナールは此方へ」
「放せ、まだ納得はしてないぞ」
強引に執事ウインディーによって退室させられた。
「さて、悪かったな一方的に決めてしまって。
ただ、おまえ達は争うことなく仲良くやってくれよ。
初めに話したように、まだわしが正気の内に決めておきたかったのだよ。
モニカ、いやモニカレイは知っていると思うが、わしに起きている症状は槍の勇者と同じなのだよ。
モニカレイにはあの夜席を外してもらったが、わしはあの娘と約束したのだ。
槍の勇者を殺せばモニカレイをやるとな。
彼奴は何度も考え直せと言う忠告を無視して、わしは槍の勇者だと言い張った。
勝手にわしから可愛い娘を取り上げるなど、だから出来そうにない思い付く限りの無理難題を言った心算が槍の勇者はあっさりと殺された。
約束を破ると私はあなたを許さない、死んでもらうがそれで良いのでしょうか。
と、言うから同意した結果がこれだ。
既に残された時間は長くないと思うから、正気の内に決めさせてもらった。
モニカレイは済まないが諦めて領を継いでくれ。
これはわしの独断ではなくキーンに聞いたら、モニカレイが最適と言ったが、よく考えてみるとわしも同じ意見だ。
キーンには男爵位をやった。
本人には一代限りの男爵と言ったが、そう言わないとキーンが断ると思ったからだ。
困った時は頼れと言ったから、その時は面倒を見てやってくれよ。
寄り子の扱いだが、税や役務は無で頼むぞ」
「それならキーンは私に仕えてほしかったです」と、タニアランが言いだした。
「お姉様、キーンは私が見つけたのですよ」
「それは違うな、モニカよ。
あの者をお前に見つけさせるようにわしがしたのだ。
元からわしの裏の仕事をさせる為の暗殺メイドだったからな」
「お父様はあの時何故私を同席させてくれなかったのです。
今考えても本当に悔しいです」
「タニアンにも迷惑をかけたな」
「いいえ、私は家のために出来る事を精一杯やっただけで、迷惑だなんて思ったことはありませんわ」
「ウインディーは軍隊長と警護隊長を呼んでくれないか」
「これは旦那様、何と御いたわしい事か」と、言って入って来たのは軍隊長だ。
次に警護隊長が入って来た。
「旦那様、私が不甲斐ないばかりに、本当に申し訳ありません」
「二人とも良いんだ。
お前たちが悪い分けじゃないのだからな。
それよりも、これからのカルフーン領はモニカレイに任せるからな。
マンブール市はタニアランに従来どうり任せるから、お前たち二人はデグナールとマリーから二人を守ってほしい。
二人は王都へ追い出したが、わしが死んだ後舞い戻ってくるかもしれんからな。
ハッキリ言って、彼奴等はカルフーン家とは何の関係も無い、ただの一般人だから遠慮は要らんからな。
歯向かうなら切り捨てても構わんぞ」
「ウインディーもこの事は、家の使用人に徹底させてくれよ。
領内もだが家の中には絶対に入れるな。
それとわしの弟妹もだ。
頼むぞ」
「お前たちはモニカレイとタニアランを支えてやって欲しい。
これがわしの望みだ、頼んだぞ」
「はいジレット様、勿論でございます」
「ここで言うのはいささか憚られますが、この際ですから話しましょうね。
私の職業スキルは既に完成しています。
恐らくですが、領内の名のある武人よりも遥かに強いと思います。
ですから、私くしよりもお姉様の方を優先してください」
「そうか、それは頼もしいな。
しかし、モニカに忠誠を尽くしてくれ。
頼んだぞ」
「二人ともそんな悲しい顔をするなよ。
お前たちは領主と大都市の代官なのだぞ」
「ですがお父様、私くしは本当に残念です」
「モニカ、私も諦めきれませんわ。
最高級のポーションを用意させましょう」
「治癒ポーションはもう良いんだ、効かないばかりか今は害にしかならないからな」
「兄は最悪だったが、わしは良い娘を二人も持てた事を神に感謝だ」
翌日の昼過ぎからジレットは寝たきりになり、意識が途切れる事も多くなった。
キーンが去った後はタニアランとモニカレイが朝夕の食事替わりにスープを持って容態を見に来た。
その時は微かに言葉も発せられ、モニカレイへの謝罪と領の運営を気にかけていた。
引継ぎに忙しく、またデグナールが溜めた書類を読み指示を出し決済を行い、遅い昼食を食べる前に様子を見に行くとジレットの意識は無かったが気に付いた者は居なかった。
娘二人は忙しかったのもあるが、キーンが舘を去った後は誰もジレットの身辺に気を付ける者は居ない、何とも悲しい最後を向かえていた。
夕方になり雑事にきりを付け執事ウインディーが容態を診に行ったところ、ジレットは苦しむんだ様子もなく、安らかに眠るように息を引き取っていた。
キーンが最後に着せたままの服は、気味の悪い汁を吸って茶色の部分は、赤く変色してベッドに大きな気味悪いシミを作っていた。
フーが呪った期間きっちり7日で死んだ。
亡骸は本来土葬のところを領都の支部が教会本部に内緒で、例外の扱いで死体は燃やされ、遺骨は先祖が眠るカルフーン家専用墓地の一画に埋葬された。
親戚やジレットの弟妹にも知らせずに、領都の教会支部にも知らせず舘だけのごく内輪の埋葬が終わっても領境の各砦は言うに及ばず領都ジュリスにマリーとベルナールは入れないよう、厳重な検査が行われた。
王都からの密偵の話では、二人は職に就かず王都に滞在していると報告が入ったので、モニカレイは指示に念を入れた。
モニカレイの心配はジレットの弟二人と、妹の存在だった。
面倒なら誰かに始末させようと考え、体制だけは直ぐに用意した。
如何だったでしょうか?
ジレットの最期は?
楽しめた、面白かった、と思われるなら作者冥利に尽きます。
次回からはまたフーのエピソードになります。
新たなメンバーが加わります。
次回は木曜日を予定しています。
何時もの時間にお会いしましょう




