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逃亡ー4

一連の惨殺の間に逃げた近衛兵が応援を呼び、言い合う間に勇者たちは遠巻きに囲まれてしまった。


「良いところを先に持って行かれたので、今度は俺の番かな」と、言うや弓の勇者が弓を引き絞ると矢が3本番えられていた。

矢は近衛兵の光る鎧を物ともせず、突き刺さると同時に爆ぜた。


華奢な体に似合わない大剣を肩に構える少女は、「やるの?掛かってくるなら容赦しないわよ」と、試しに大剣を軽くを振ると、その風圧で三人の近衛兵が真っ二つになった。


近衛の報告を聞きつけて遅れて皇帝が親衛隊を率いてやって来た。

「一体何があった」と、目の前の惨劇に驚き、愛娘の変わり果てた姿に絶句した。


土下座の要領で「これは勇者様方、わしの娘が勝手な事をして申し訳ない。

どうかお許し下され」と、ついに床に額を付け土下座した。


「ジュウイチ許すのか。

俺は反対だ。

勝手に用も無いのに呼びやがって、帰れなくなったんだぜ」


「弓の勇者殿のお怒りはごもっともですが、わしも娘がこのような愚行をしているとは露程知らず、これはガス帝国の総意ではありませぬ。

なにとぞご容赦を」


「まぁ仕方ないな。

それなら、宮殿に我々勇者に相応しい専用の住居を用意してもらおうか。

それと、俺には美女もだ」


「あっ、それは僕もね」


「では、男性の勇者殿には帝国選りすぐりの美女をご用意させていただきます」


「私達にはメイドをお願いするわ、若くて綺麗な人が良いわ。

それと宝石もね。

有るんでしょう、帝国の至宝とかがが」とエリが要求した。



ーー此処は帝国で最重要な会議が行われる秘密の部屋ーー

「プリムス皇帝、如何いたしましょう。

あのふざけた勇者どもですが、食事に調味料を用いましょうか。

それとも影を使いましょうか」と、聞くのは帝国が誇る近衛連隊長グレン・ガンラー伯爵だ。


「宰相はどう思う、考える」


「はい、ガンラー連隊長が言われるのは、一般的な対処でこれまでも

エルシャー王国の要人などには効果がありました。

しかし今回の相手は勇者ですからね。

失敗すると取り返しがつきません。

それで一つ考えたのですが、少年等は美女を所望しますから、他国の例えばですがベルステンのフィリスが距離的に最適と思います。

要は美女を餌にして、戦わせるのです」ユージン・ビルジン宰相が言う。


「フィリスと言えば、当代の世界三大美女に謳われる美女でまだ成人間もない超絶美少女と聞くが、出来ればわしの傍に置きたかったが、この際仕方あるまいな。

うまく誘導できるか」


「お任せください、私の職とスキルが生かされる最高の舞台と思いますから」


「だがな宰相、次善の策を準備しないのか。

やはり影の者に頼もうか、それなりの美女もいたと思うからな」


「ガンラー連隊長、影は大変貴重ですから。

特に美女となれば、他国の王侯貴族用に欠かせない存在ですので、無駄使いは控えた方が宜しいかと」


「ところで、今夜は親衛隊長カレン殿は如何されたのでしょうか」


「カレン親衛隊長はわしが皇妃と逃がした。

それに、副長には一般兵に混じって勇者の弱点を観察させるためじゃ。

アレにはまだ使い道があるからな、フッハハ」プリムス皇帝が勝ち誇った良い笑いを発した。


「さて夜も遅くなりました、ここらで結論を」


「うむ、秘伝の調味料の使用は禁止じゃ。

勿論影もじゃ、良いな。

それから惜しいがフィリスを餌に幼い勇者共を良いように誘導してやれ」



秘密の会議から僅か一月も経たない間に、ガス帝国貴族内で美女と評判の者はほぼ居なくなった。

二人の勇者がほぼ毎夜美女と過ごし、翌朝には惨い死体で返されるからだ。

帝国が武力を持って併呑したエルシャー王国にも、美女供給の密命が下されたが、既に遅くガス帝国内の噂が漏れ聞こえて来たため、主だった貴族は他国の親戚や友人を頼り噂の美女は皆国から逃げ出した。


エルシャー王国側にしても、一辺境伯軍に毎回煮え湯を飲まされ続けているので、勇者の存在を好機ととらえた。

エルシャー王国は辺境伯領に忍ばせていた間者に特命を出した。

領内で売られていたフィリス辺境伯令嬢の肖像画を入手し、本国経由でガス帝国にいる勇者に届けさせた。


一目見た肖像画を剣の勇者が気に入り「これに修正は入っていないだろうな」と、勇者に直接届けた宰相の執務室にアポ無で来た。


「はっきりは分かりませんが、辺境伯領内では幅広く売られている肖像画でして、歳を重ねると多少変わるところも出てくると思います。

特にこの辺りが」と、肖像画の平坦な胸を指さした。

「しかし、その絵は比較的新しい物と存じますから」


「なんだ、その比較的とは」


「ここの署名をご覧ください、この作者が画いたのは去年ですから。

ほら、こちらのヴェルム暦で去年を表す数字が入っています。

今年のではないということですね」


「ほうぉ、この美貌は楽しみだな。

徹底的に甚振ってやろう」と、邪悪な笑みを浮かべる剣の勇者を見た宰相はさりげなく使った魅了スキルが効いたと、良い笑顔を勇者に向け成功を確信した。



ーーあれから3か月が過ぎた、此処は例の秘密の部屋。

今回は皇帝と宰相ーー


「今年もエルシャー王国がウェルビー辺境伯と戦をすると許可を求めていますが、今回は我がガス帝国軍も参戦を考えています」


「そうか、後の事はビルジン宰相に任せて良いか」


「はい、あわよくばウェルビー辺境伯領も手に入れようと、策を練っておりますから」


「そうか、転んでもただでは起きん宰相、其方は良いぞ」


「此方も勇者共に本気度を見せるために、通常の騎兵に歩兵と攻城用の第一から第三投擲師団投入したいと思います。

戦力の編成はビーン元帥からの立案で、総大将はネビン将軍を予定しています。

如何でしょうか」


「総兵力は」


「はい、エルシャーから3万出させますから、総勢5万を予定しています。

勇者召喚が既に知られていますから、彼方もオルブライト公爵軍が出てくると予想しますから」


「数だけ揃える公爵軍とウェルビー辺境伯軍の専兵と併せて4万少々と言ったところでしょうか。

それに我が方には勇者が居ますから」


「しかし気をつけろよ、ウェルビー辺境伯は戦上手と聞くからな」


「はい、戦上手のウェルビー軍には勇者を全員充てるように、ネビン将軍に良く良く言い聞かせていますから」


「それは良いぞ」

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