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逃亡ー19

アマンダに起こされた時は既に昼近かった。

昨夜は気が付かなかったが、アマンダの部屋は白色で統一されて、クローゼットはフィリスの物より大きいのが置いてあった。

聞くと備え付けてあったと教えてくれた。

そりゃそうだな、冒険者に不要な物は要らないと思うし、持ち家なら違うんだろうが。


皆が揃ったところで、遅めの朝食は俺が用意する冒険者の食事になった。

「今朝はこれだ。

皆は珍しいだろう。

俺とフランソワは食べ飽きたけど」と、フランソワの方を見ると、フランソワは笑っていた。


「皆様おいしいと思います、私くしは好きですよ」


「あぁそれはな、フランソワ。

このセイントフォーは王国最年少のゴールドクラス冒険者パーティーなんだよ。

駆け出し冒険者御用達の定番は恐らく初めて食べると思うぞ」


「ゴ、ゴ、ゴールドクラスのパーティーですか。

凄いです」と興奮する。


次に、自分の白磁クラスの冒険者カードを取り出し残念そうに見た。


「待ったらまだ何か出てくるかと思ったが、仕方ないですね。

諦めて食べましょう」のアリスの声で食事が始まった。


「そう言えばフー様もゴールドクラスの冒険者なのですよね」


「此処にいる4人は個人が皆ゴールドクラスだよ。

だから、資格が出来たから課題に挑戦した。

見事パーティークラスもゴールドクラスなんだ」


「まぁ、いろいろフーに手伝ってもらって今が有るんだけどね」と、スーが言う。


「そう言えば、スーのスキル取得条件は凄かったよね。

期間限定で裸族になるんだから」


「そうそう、アマンダは地面を溶かすし」とアリスが面白そうに言うから、スーが困ってしまう。


「おっ、スー。

マナエリクサーを1瓶作ってくれないか。

フランソワと逃げる時に、フランソワに使ったから、補充したいんだ」


「良いよ、1瓶で本当に良いの?」


「スーは殆ど何でも治せるしポーションも作れるんだ」


「そう言えば、スーを知るきっかけが、メイのスキルに使う聖水を買いに教会本部へ行った時だな。

アマンダが一目でスーを気に入り、その日の夕方にスッキリした顔で宿にアマンダを訪ねて来たんだったよな」


「ええ、教会の奴等はシスターを含めは最低でしたから。

教会を出る良いきっかっかけでした」


「フランソワはメイの無属性魔法を見ると驚くと思うよ。

とにかく凄いから」


「僕は決してゲテモノ食いではないが、初めてスライムを食べる時は勇気がいったよ」


「その時俺は皆から無視され続けたんだ。

スーの時は怒られたしな」


「で一つ思ったんだが、フランソワは全裸でアマンダに剣を習え。

冒険者ギルドに行かなくても、スキル剣の達人になれると思うからな。

剣はアマンダがたくさん持っているし。

アマンダもフランソワもそれでどうだろう。

言い忘れていたが、俺は裸は見慣れているからな。

それに昨日は色々触らせてやったろう」と、言うとフランソワが笑い出した。


「アリスは弓の練習しているのか。

的が有ればフランソワに使わせたいのだが。

裸でなんか投げ続けると、スキル投擲も完成すると思うんだ」


「フー、僕がスキルで造ろうか。

アリスは練習でも威力が強すぎて的を壊すんだよ」


「それもありだな、うん」


「で、フランソワのスキルが完成すると、結論を出そうと思う。

黒い森の奥へ行くか辺境伯領へ帰るかの、皆どうだろう」



結論は、黒い森で行方不明になり、その後ウェルビー辺境伯家に戻ることに決まった。



食後フランソワはアマンダ達に連れられて屋敷を出て行った。

フランソワの服と生活必需品と防具を整えると言っていた。


何もすることが無くなった俺は、アマンダの部屋に戻って、全裸になって姿見を使い全身をよく見た。

前は勿論の事、あそこも良く出来ているから軽く触ってみると、確かに男の持つ固い質感とは違っていた。

本当にどこもかしこも柔らかいのだ。


自分で言うのもあれだが、豊かに成長した胸は柔らかく、風呂上がりに触ったスーの胸の質感と違わなかった。

職業本に何時の間にか発現した、♀の影響と思えた。

まさに今が♀の状態なのだから、この体が偽物ではないのだろうと、思い直して職業本を開いてみた。

すると、こんな感じになっていた。


姓名 フィリス・ウェルビー

種族 龍人 ♀

年齢 18歳

職業 復讐者 暗殺者

復讐者スキル 有言実行 呪術 確殺

暗殺者スキル ???

加護 ?


と、こんな感じになっていて、怪しそうなスキルは全て使用可能な状態だった。


試しに今度は腕輪を操作して、男になったら、こんな感じだった。


姓名 フィリップ・ウェルビー

種族 龍人♂

年齢 18歳

職業 復讐者 暗殺者

復讐者スキル ???

暗殺者スキル 透明化 認識阻害 必殺

加護 ?


どうも男女で職業が違いフィリスの時は復讐者スキルが使えるようだ。

俺にも一応加護が付いた様だが、何かまでは分からない。


また腕輪を操作して女性に戻ってみると、復讐者スキルが発現していた。

その下の加護が今度は発現していた。

加護 ヴェルム神と、表示があった。

驚いた俺は再度男性になってみると、加護は同じヴェルム神と、変わりはなかった。


また女性になってみると、加護は消えずにそのまま表示があった。

まぁ、成人の儀式で教会に行ってから、勇者が舘やって来る迄は毎日毎日常時神に祈っていたからかと、自分で納得した。

職業にしてもそうだ、奴らに復讐したいとアマンダと地下に避難している間中、ずっと神に祈っていたからだろうか。


復讐者スキルの有言実行とはまた、ずい分大雑把というか、強く念じた事は実行できるのだろうか、わらんスキルだ。


試しに裸のままなのだが、応接室へ行きたいと願ったところ、頭がグルンと軽い眩暈に似た感覚と共に、一瞬で応接室に裸のまま居た。

いきなり応接室に来たことに驚いたし、このスキルは使い方次第で勇者に対して大きなアドバンテージを得たと思うと、感動で体が震え出した。

今迄は勇者に対抗する手段は、アマンダの先制攻撃しか希望は無かった。


さて次はスキル呪術。。。

これってお伽噺に出てくる、性悪魔女や強い魔物が使う呪いの事なのか。

俺が人を呪い殺すのか?

誰かで試してみたいが、解呪の仕方が分からないから、気軽に試せるものではなく、恐らくだがスーでも無理と思える。


それに、お伽噺では、遥か遠方から呪いをかけても、それが呪った者に知れて、最後は呪った魔女は殺されて解呪できた、確かそんな内容だったはずだ。

魔物の場合は殺されても呪いは解けなかったが、聖女が解呪したと聞いた。

これもよくわからんスキルだ。


まぁ、有言実行が優秀過ぎて早々呪術は出番がないかもしれないなと、思う。

有言実行で透明化を念じてみたところ、映っていた俺の裸は磨かれた扉の取っ手に映らなくなったので、透明化が出来ていると思うが、♂の時のと違いの検証が必要だ。

スキル確殺だけは効果に変わりがないのだろう、これも何時かは試してみたい。


スキル有言実行で認識疎外を使うと女の姿でも十分行動できると思うと、昔が少し懐かしくなった。


と、昔のことを懐かしく思い出し、物騒なスキルについても、出来たら良いなとか、考えている時、不意に食堂の奥のほうからガタガタゴトとン小さな物が落ちるような音が聞こえた。


皆が出た借家は静かでまだ続く物音が気になってきた。

アマンダ達が返ってくるにはまだ時間的に早いし、俺を油断させておいて悪戯好きのスーあたりのドッキリでもなさそうだし、ネズミ以外の小動物の侵入も考えた。

小動物が発する物音よりは大きいから、発生源と当たりをつけて食堂に入ってみると、見たことの無い女性が驚いてお互い棒立ちになった。


俺が近づくのでスカートをまくり四つん這いになり直ぐに奥に隠れてしまった。

一目見て、薄汚い身なりだが、質の良い物を着ていた。


「これ、アマンダ達は知っているのだろうか」と、思ってその女性に近づくと、向こうも気配を察した様子で、さらに這って奥の方へ移動した。

けど、バッチリ見えていますから。


「もしもし、隠れなくても大丈夫ですよ。

それに、可愛いお尻が丸見えですよ」と、話してみた。


すると「あなたは全裸じゃないですか。

人気がないとはいえ、不用心じゃなくて、それともそういう趣向をお持ちなのでしょうか。

それに私くしは、パンツは穿いていましてよ」と、澄んだ声で返事が来た。


「全裸でも色々私にはやる事があるんです!

あなたは何処から入って来られたのでしょうか。

私住人がいるとか聞いていませんけど。

もう見つかっていますから、いい加減出てこられては如何でしょうか」


「ㇺっ無理です。

私くし追われていますから、隠れるところが必要なのです」


「まぁ良いから。

私も服を着ますからね」と、言いついでに認識阻害も有言実行で作った。


「しっ、仕方ないですわね」と、言い女性はと積ん倍のままでお尻から出てきた。

すすけた疲れ切った顔で俺の前に立った。

身長は俺よりも僅かに背が高く、薄紫色の髪は軽くウェーヴが掛り、一部は背中にまで伸びている。

胸も俺と同じくらい有り、俺と同じ細身で誰が見ても美人なのだ。

落ち着いて話ができるようにしたいと考え、俺は応接室へ案内する事にした。


案内するまで、ブツブツ何か言っていたが、無視して応接室へ連れて来た。


「どうぞお掛けください」と勧めてみた。

女性は室内をよく見ていたが、俺の勧めに従ってソファーにかけた。

舌の滑りが良くなるんじゃないかと思い、来る途中の町の食堂で買っていたブドウの果実水で満たしたコップを前に置いた。


これで話が聞ける体制ができたと思っていると、女性は驚き目を丸くして果実水を見ていた。

それから、果実水を一気飲みして咽ながら、お代わりを要求してきた。

結局お代わりは5回もされ、手持ちの気に入っているブドウの果実水は無くなった。


「で、貴方は?

さし当たっての身の安全は保証はしましょう、危険が去るとお帰りください。

それで宜しいでしょう」


「そのぅ私くしは、カルフーン辺境伯家の者でして、名をモニカレイと、申します。

私くしは四日前にわが家へ突然槍の勇者と自称するおかしな少年と暴虐な集団がやってきまして、私くしを差し出せと、お父様に一方的に宣言して、無断で家探しを始めました。

私くしはその少し前に日課の乗馬から帰って来て、風呂に入ろうと用意をしてもらっていたので、応接室でその会話が聞こえ急ぎ服を着替え逃げ出したのです。

家のメイドがドレスを用意してもので、この服では馬も使えませんし、とにかく走って逃げましたわ。


その大変良い難いのですが、この家は私くしの持ち物なのです。

確かお父様が私くしに無断で誰かに貸したと聞いていましたが、それがあなたなのですね」


「大体の事はわかりました。

おかしな少年とは槍の勇者と言う事でほぼ事実でしょうね。

それから、ここを借りたのは私ではなく、冒険者パーティーです。

一つお聞きしますが、此処へ来ることを槍の勇者は知っていると思いますか」と、聞いていると、玄関を乱暴に連打する音が聞こえた。


「しっ!この場は無視しましょう。

貴方が入ってきた秘密の通路は彼奴らは見つける事ができますか」と、小声で聞くと、心配ないと小声で返ってきた。


「では、今から秘密の通路へ行きましょう。

案内して頂けますか」


「此処からです」と、大広間の階段の裏側に有る、物置部屋のドアを開け古びた椅子を持ち上げると、自動で扉が開いた。

モニカレイの先導で、秘密の通路に潜んでやり過ごすことにした。


薄暗い通路に目が慣れた頃、ドォォンと、大きな音ともに何かが崩れる振動が伝わった。

俺も怖いが震えるモニカレイを安心させようと抱き寄せ、顔を近くで見ると確かに美人だった。

だが汗臭かった。


「大丈夫ですよ、見つからないと思いますからね」と、意味もなく微笑んで余裕を見せた。

俺自身余裕なんかないのだが、とにかく腕の中で震える美人を安心させたかった。


おいっ、居たか!

勇者様はお怒りだ、くまなく探せ、良いな!


はい、我々エルシャー王国兵にお任せください。

此処へ逃げ込んだのは、多くの住民が見ていますから。

二手に分かれ探せ、お前らは上だ。

残りの部隊はわしと共に一階を探す。

報告の後は、我々が上を探すから、お前らは下だ。

良いな、必ず見つけ出せよ。

掛かれ!!の号令で一斉に動き始めた。


「申し訳ありません、見られていたのですね」


「心配は要らないと思いますよ、見つからないと思いますから」と、根拠の無い言葉を口にしたが、あの時も地下だったから。

此処は湿気とカビ臭い素掘りの通路だが何故か安心できた。



どれくらい時間が経ったのだろうか、暗くなってきたのだろうか、捜索兵達の動きが止まった。


「もう行ったようですね」と、戻ろうとするモノカレイを制した。


「まだ、屋敷の周りか室内に兵が居るかもしれませんから、合図を待ちましょう。

それにやる事を思いつきましたから」と、俺が止めた。


「モニカレイ様は私が誰か分かりますか」

「いいえ、私くしは存じ上げませんわ」


「そうではなく、私の顔がわかりますか」


「そう問われると、初めてお会いした時もですが、今もよく分かりませんわ」


「そう、それなら良いです」と俺は、呪術を槍の勇者に使った。

その呪術とは、≪槍の勇者よ、お前のあれが腐って落ち、次第に体中が腐って死ね!»

と、念じて呪術を発動すると、俺を包み込むように黒い炎の様な物が一瞬浮かび上がった。


弓の勇者にも呪術の対象にしたかったが、距離が離れていると効果に期待ができないと思い今回は止めた。


それで、転移使用時同様に軽い眩暈のような症状が出るのかと両足に力を入れて構えていると、なんかスッキリした清々しい良い気分になれたから不思

議だ。

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