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逃亡ー16

気が付くと峠を下って平地に出ていた。

森を抜けると視界が一気に開け、ほぼ真っ直ぐ伸びる街道の両側に疎らに大木が立ち、程よい日陰を作っている。

その日影の端にみすぼらしい塀が見えた。


「ベル兄、あそこに開拓村が見えますよ。

あそこでしょうか」


「あぁそうだな。

フラン、あそこはダメだ。

このまま少し歩くぞ、ご飯はそれからだ」


「はい。。

分かりました」と、残念そうに返事をする。


「なぜあそこへ寄るのはダメなんです」


「フランは分からないか。

さっきフランは開拓村と言ったな。

村人が何人いるか知らないが、あれを見ろ」と、歩きながら見える苔むした板塀をフランに示した。


「なっ、おかしいだろう」


「えっ、何がでしょう。。。」


「おいおい、もっと注意深くよく見てみろよ」と、小声で話ながら静かな開拓村の崩れそうな板塀の横を速足で通り過ぎた。

「ここからは、少し歩くスピードを上げるぞ。

フラン付いて来いよ」


俺はフランの返事を聞かず、徐々に歩くスピードを上げて後ろを振り向くと、フランは立ち止まり塀を見ていた。


呆れた俺はフランに何度も手招きすると、ようやく気付いたフランが駆けてきた。


「どうした、急ぐぞ」


「はい、でも私にはさっぱり分かりません、何故そんなに急がれるのです」


「俺が説明しなくてもその内に分かると思うが、今は少しでも先を急ぎたいから付いて来い」


「分かりました」と、納得しないフランの手を俺は繋いだ。


「チョット、幾ら人気がないと言っても、積極的なベル兄はお好きですね。

兄妹ですよ」


「おい、面白がるんじゃない、俺にそんな気は無いからな。

今はとにかく先を急ぎたいだけなんだよ」



街道右側は良い感じに疎らな大木が続くが、左側は何時の間にか森が直ぐ近くにまで迫っていた。

峠で見た感じでは、真っ直ぐに伸びる街道の両側は、疎らな木が立っていたから、かなり遠くまで来たと理解できた。

それでもう良いかと思い、歩くスピードを緩めて、繋いでいた手を離した。

すると、フランが直ぐ俺の手をとり繋いだ。


「私はこの方が良いです。

それに、兄妹ですしね」と、微笑んだ。


「参ったな、フラン。

先ほどの質問だが、それについての俺の答えは推測も混ざるが聞くか」


「はい、是非お聞かせください」


「俺はな、あの塀を囲む村の規模が、あまりに小さすぎて、かといって、塀より外で開拓している土地は見なかった。

此処からは俺の推測だが、あれは山賊の拠点ではないが、一夜の宿を借りるとかする旅人を襲い、山賊の様な事をする奴らが居るのだと思ったんだよ。

フランはどう思う」


「そうなんですね、私はさっぱり分かりません」


「お前って、塀を見ていただろう。

隙間から何か見えたか」


「いいえ、ベル様がお呼びでしたから」と、嬉しそうにする。

「あっ、でも少し分かりました。

確かに人の気配は感じませんし、私が良く知る開拓村の感じはしませんね」


「納得してくれて何よりだ」と、俺は振り返り、誰かに付けられていないか注意して周りを見た。


良し、追跡者なしだ。

「見えるかフラン、あの大岩の後ろで食事にしよう」


「はい、分かりました」


近くで見る大岩はあの時見たよりも大きく、後ろに隠れには最適だった。

大岩の後ろに僅かな平地と続く谷で、これなら追跡者から逃げることが出来ると予想できた。


「時間が過ぎて申し訳ないが、食事のメニューは何時の物だ」と、言い俺は、肉と魚の串焼きを出し、干し肉と固いパンと水を用意した。


フランは真っ先に水を飲み干して、笑顔でお代わりを要求した。

「何だフランは水が飲みたかったのか。

言えば水くらい飲ませてやったのに」


「私はそのぅ、トイレが心配でしたから」と、恥ずかしがるフランなのだ。


「大丈夫だ、ここ等は開けているから一人で出来るだろう」


「そうじゃありませんわ」と、言いフランは恥ずかしがる。


フラン!と、俺は前から人の気配を感じ黙るように口に指をあてた。


暫くすると男の話し声が聞こえて来た。

「俺たちは運が良かったが、もう彼奴等は居ないだろうな」


「あぁ、さすがに昼をかなり過ぎているからもう居ないと思うが、何だよあの強さは。

反則も良いところだぜ、お前アレに職の心当たりがあるか」


「いや、俺は知らないな。

あの白い槍は本当に反則だよな、まぁ逃げられたから良いが」


「何が良いかぁ、恐らく仲間は全滅だろうがぁ」


「そうかい、じゃぁ俺達だけでこの先はどうする気だ」


「分からん、とにかく戻ってみてそれからだな」


「あぁそうだな」



「予定変更だ、とにかく先を急ごう」


「えっ、この場合は急ぐよりは、ゆっくりが良いのでは」


「いや急ぐ、少しでも早くカルフーン辺境伯領に行きたいからな。

フランが峠で言ったろう、カルフーン辺境伯領主の娘は噂でも美人だと。

あっちには槍の勇者が向かっているのだろう。

お前は弓の勇者の獲物だったんだ」


「ですから、槍の勇者が去った後でも良いんじゃないでしょうか。

娘さんは気の毒ですが」


「いや、そうじゃないんだ。

あっちには俺の仲間がいるんだ。

こう言ってはなんだが、皆美人だからな」


「まぁ、フー様のハーレム候補の人たちなんですね」


「今は急いで合流して情報交換がしたいからな。

それに顔を見せて安心させてやりたいしな」


「ところで一つ聞きたいが、カルフーンの都は何と言うんだ」


「確か初代の領主様の奥方の名前だったかと。。。

そうそう、ジュリエスです」


「そうか、それは良かった」

俺のところは家名ウェルビーだから、初代さんは妻を愛していたんだなと、思った。

普通は領を代表する街は絶対に家名なのだから。

俺もこの際だから、都をアマンダ市に変えようか。。。


「あのぅ、どうされましたフー様」


「あぁ悪い悪い、大丈夫だから」


「急がれるのなら馬が有ればいいのですが」


「悪いな。

俺は馬に乗れないんだ。

それに剣術もさっぱりだしな」


「えっ、でもフー様は貴族なのでしょう」


「まぁ、そこら辺は色々あるんだよ」


急ぐぞ。




カルフーン辺境伯領に入るまで、検問が厳しく、しかも領地が広く結局七日かかった。

道標が有ればいいのだが、そう言えばウェルビーでも見なかったな。



昼食を食べる為に偶然寄った食堂で給仕の娘にマンブール市への道を聞くと、隣の商人風のおじさんが「それなら、前の道を真っ直ぐ行って突き当りを左だな。

右に行くとそのまま領都ジュリエスに行くからな。

領都経由で行くとマンブール市へは一日は近いんだが、今あっちには変な奴が居座り、勇者を名乗って好き放題しているから、間違っても右には行くんじゃないぞ。

お連れは別嬪さんだから気を付けなよ」


「はい、ありがとうございます。

あっ、お姉さん!

こちらにビールを」、 ハァ~イ。


「おい、何だよ。

気にすんなって」


「いえ、妹を褒めてくださったから、お礼をしたくて」と、笑顔で言ってみた。


「変な奴だな、お前さんは。

しかし俺は妹を買ってはやれんぞ」


「ご心配なく、妹は売り物じゃありませんから」

この一連の話を隣で聞くフランソワは青くなって震えるのを我慢してずっと下を向いていた。


「それじゃ、俺たちは先を急ぎますから」


「あぁ、気い付けなよ」の声を後にフランが俺の手をきつく繋ぎ食堂を出た。


「さぁ、突き当りを左だ。

悪いが急ぐぞ」


「はい、私売られるものとばかり思っていました」


「売ったり貸したりするわけがないだろう、俺の大切なハーレム要員なんだからな」



食事と少しの睡眠以外はとにかく歩きどうしに歩くこと二日、遂に夕方近くにマンブール市に来た。

本当に疲れた。

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