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逃亡ー15

俺は目を瞑ったと思ったがすぐに揺すり起された。

「フー様おはようございます」と、フランソワは言い床に両手をついて俺の顔覗き込んでいた。

俺の顔にかかるフランソワの少しカールしたブロンドの髪が擽ったい。


「もう朝か、フランソワは朝が早いな。

毎日起こしてもらっているな」


「今の私くしに出来るのはこれ位ですから」


「早速朝ごはんだな。

身体強化が使えるなら、今日は距離を稼ぎたいからな。

それにしても、裸で半日行動しただけで身体強化のスキルが取得できるのは初めて知ったよ。

アマンダの時は苦労したからな。

まだまだ俺たちが知らないスキルの取得条件が有るのかもしれないな」


「そうなんですね、私くしはフー様に出会えてスキルまで完成できて本当に運が良いのですね

今は靴も歩き易いですし、踵の切り傷もきれいに治りましたから、一日中でも歩けます」


「じゃ行こうか」


宿を出て門の前に来ると、列が出来ていたので並んで待った。

出る時は緩く直ぐに俺たちの番が来たが、「おっ、ついに冒険者になれたか。

頑張れよ、でも無理して死ぬんじゃねぇぞ」と、衛兵が声をかけてくれた。


「はい、死なない程度に頑張ります」と、返して、俺たちは街道をイゲルマン領の方へと歩き出した。


「なぁ、俺はこの辺はさっぱりなんだが、そのイゲルマンの領主様の娘が美人とかはないのか」


「えっと、そんな話は聞きませんね。

確か領主の娘さんは4~5歳じゃなかったかと思いますから」


「それは良い」

「えっ⁉

幼女も好みなのでしょうか」


「何言ってんだよ、美人だと勇者が来てるかもしれないだろう。

だから聞いてみたんだよ」


「そう言えば、カルフーン辺境伯の娘さんは美人とメイドたちが話しているのを聞いたことが有りますね。

なんでも王国が誇る三大美人だとか」


「それは、王都でも知れているのか」


「さぁどうなんでしょうね、メイドたちは私と比較して色々陰で言っているのは知っていますが、私は興味が無いので」



「ちょうど良い、この辺で一休みしようか。

甘未が有ると良いのだが、悪いな、次の町で忘れずに買おう」


「では、あの大木辺りが良いのでは」


「いや、誰もが目に付くあそこは避けようと思う、それよりも、この下が良い」と、言い、俺たちは街道を少し外れた小さな広場を少し下ったところで休憩にした。

そこは、良い感じに岩が有り、少し無理をすると、テーブルとイス代わりにもなる良い所だった。


「ここは昼食も出来そうですね。「

私くしお腹が空きました」


「朝が早かったからな。

良いぞ、ここで食事にしよう」


「フー様は、ベルさんは旅慣れていらっしゃるのですね」


「そんなことはないよ。

俺はこう見えてもほぼ初めての旅だから。

一人旅が不安だったんだ」


「私には、旅慣れ余裕があるように感じます」


俺は屋台で買った肉の串焼きと魚の串焼きを3本ずつ出し、あとは何時もの

干し肉と固いパンと水を用意した。

「代り映えがしない食事だが食べてくれ」


「私はどれも美味しくて好きですよ」


「そうか?

夜は暖かいスープが出る食事がしたいな」


「ところで、足は大丈夫か?

靴ずれとかで痛くはないか?」


「ありがとうございます、痛くはないですよ。

靴が良く馴染んで、本格的には今日が初めて履いたとは思えませんもの」と、微笑むフラン。



街道が目の前にそびえる山へと延びている、今は緩い上り坂になっていた。

やがて街道は急な九十九坂の登りが始まり、前方の視界が悪く今はすれ違う旅人も商隊なく、ふり向くと俺達だけになった。


「フランも気付いていると思うが周りに気をつけろよ。

アレを観ろ」と、言って俺は折り返しが始まる、その先のカラマツの林の中を指さした。

指さした先は、谷に向かって転がっている馬車の新しい残骸が放置してある。


俺はフランのスキル、剣の達人と投擲を思い出した。

アイテムボックスからナイフを1丁取り出して「フラン、これを持っていろ。

で、危なくなった時はナイフを投げろ。

恐らくスキル投擲が少しは役立つと思うから、良いな」


「後は俺の方で何とかするし、助けるからその為の時間稼ぎだ」


「分かりました」と、フランはナイフを受け取り、嬉しそうに刃を空に向けて眺めていた。

「あの転がっている馬車は山賊の仕業でしょうか」


「多分な、雰囲気的にも今は人が居ないから要注意だ」


「そうそう、突然俺が見えなくなっても慌てるなよ」と注意しておいた。



山賊に注意して山を登り峠に着いた。

後は下るだけだ。

少し汗ばんだ体を吹き抜けるか優しい風が気持ちが良い。

「おぉ、見晴らしが良いな。

見ろよ雲と同じ高さだ」


「えぇ、本当に見晴らしが良いですね。

此処でご飯でしょうか」と、言いだすフラン。


「いや、ご飯は遅くなっても、この峠を下り終えてからにしようと思う。

それでだ、今日は野宿になると思う。

見る限りこの先に街らしき物は見えないし、ここはどの辺だろう」


「ご飯は残念ですが仕方ありませんね。

恐らくですが、この峠が領境と思います。

ダスター領から、下に見える方が イゲルマン領と思います。

町や村が見えないと何とも言えませんが、イゲルマン領は人が少ない割に領地が広いですから」


「そうなのか、とにかく急ごう。

人の気配が全く感じられないからな」


「ところで疲れないか」


「はい、空腹以外大丈夫です」



「麓迄下りてきたが、この違和感は何だろう。

普通は領境で検問が有ったりするんじゃないのか。

俺の知っている所は、皆立派な砦を石で築いていたぞ」


「恐らくですが、隣国と国境が近かったからじゃないのですか。

王都からだとメルジー領にスコットもですが領境の検問は無いはずです。

徐々に田舎になってきますから。

ダスター領も同じと思いますが、イゲルマン領からカルフーン領に掛けては、恐らくですが検問が厳しいと思います。

黒い森がカルフーン辺境伯領と隣接していますから、魔物が出るので用心のためと思います」



遅くなった昼ご飯を食べて直ぐに移動を開始したが、フランは不平は言わなかった。

昼食といっても、今日はこれで四食めだ。


貴族は呆れるほど時間を浪費する、それが貴族だと自慢する。

食事に時間をかけて、尚も食後のお茶を時間をかけて飲むのだ

。ウェルビー家もそれなりに時間をかけていたからよく分かる。

俺は冒険者を始めてから無駄に時間を浪費してきたことがよく分かった。

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