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逃亡ー13

「行ったね」


「行きましたわ。

本当にキチガイ勇者はしつこいですから」


「昼近くなったが朝飯にしようか。

メニューは昨夜と同じ物なんだけどね」


「はい、私くし食べられる物なら、何でも構いませんわ。

今日も美味しく頂きますの」と、嬉しそうに言いだすフランソワ。


俺は昨夜と同じメニューを用意した。


「一つ良いかフランソワ。

パンはこうやって、こいつはフィンガーボールじゃないからな。

これに、パンを浸して柔らかくして干し肉と一緒に食べるんだ」


「あっ、私くしとしたことが、恥ずかしいですわ。

言って下されば良いのに」と、抗議してきた。


「お前、見なかった事にしてくれって、言ったよな」


「あぁ~」


二人で笑いながらおいしく遅めの朝食を食べ終わった。


「本来なら動きたいのだが、今日一日は此処で過ごそうと思う。

奴等と距離をとりたいからな、どうだろう」


「私くし全てフー様にお任せしますわ」


「一つ提案があるのだが、フランソワはこれを履いてみてくれ」と、俺の予備のズボンを出して見せた。

「スカートは俺が持っててやるから」と、スカート部分を胸の辺りまでたくし上げた。


「はい、ついでに私を支えてくださいませ」と、フランソワが恥ずかしそうに言い、俺の支えで緑色のズボンを履いた。


「どうだ、履き心地は?

苦しくはないか」


「はい、私くし太ももとお腹の部分がキツク苦しいですわ。

フー様よりも太い私くし、とっても恥ずかしいですわ」と、赤くなるフランソワだ。


「今度はパンツを脱いで、もう一度穿いてみてくれ」


「仕方ありませんわ」と、言いパンツを脱いで、その脱ぎたてのパンツが地面に触れる前に俺がアイテムボックスに仕舞った。


「どうだ、今度は良さそうに見えるが」


「はい、今度は少し緩く感じますが、フー様のズボンが長すぎと感じますわ」


「次は上着だが、俺のは間違いなく無理だな。

そうそう、このベストを羽織ろうか。

これなら、ボタンを留める必要はないから」と、言い茶色の革製のベストを渡した。


「足は、このブーツを履いてみてくれ」


「はい、少々きつく感じます。

私くしはフー様よりも足が大きいのですね。

殿方より大きいなんてショックですわ、私くしもうお嫁にいけませんわ」


「気にする事はないと思うよ。

俺が特別なだけだから」


「フー様って意地悪ですわ」


膨れるフランソワを無視して、俺は余ったズボンの裾を切り、スカートも切ってズボンの中に入れると、緩かった腹の周りが丁度良くなった。

「うん、良いじゃないか。

良く似合うよ。

暫くは町までこの服装で行こう」


「ところで、ここは何処なんだか分かるか?

大まかに言うと、あの前に見える尾根の先に微かに街道が見えたし、あの尾根の下、谷間にフランソワが乗った馬車が有るはずだ。

彼奴等が来たように、この尾根を辿ると、微かに見える街道に出ることが出来ると俺は思うんだが、違うか」


「私くしはよく分かりませんが、私くしの感によりますと、この地はお父様のスコット領と思います。

両方の尾根の行き着いた先は、ダスター領ではないかと思いますわ」


「ダスター領か」と、俺は呟く。

確かダスター領から後2つ領を超えるとカルフーン辺境伯領のはずだ。

目当てのマンブール市迄は先が長い、それは良い。

問題はフランソワだ。

恐らくだが付いて来ると言うが、ダスター領の大きな町で分かれるか?

しつこくフランソワを狙う勇者たちに捕まると、それこそ酷い目に遭い最後は殺されると思う。


「なぁ、聞いても良いか。

俺とフランソワは目的が違うから、勇者の追っ手から逃げることが出来たら、別れようと思うんだが、それで良いか」

俺の言葉でフランソワは真っ青になった。

そして、ワンワンと大泣きし始めた。

「仕方がないだろう、フランソワはお嬢様なんだから家に帰れ。

それがフランソワに最良の選択だ」


「嫌です、私くしフー様から離れたくないですわ。

だってそうでしょう。

私くしは肌はおろか大事なところまで見られましたし、一晩一緒に過ごしましたから。

この際責任をとって私くしを貰って下さいませ」


「確かに一晩一緒に寝たが、あれは同衾じゃないぞ。

そうだろう、裸だって捕まるよりはマシだったろう」


「じゃぁ今ここで同衾しましょう」と、言いフランソワはズボンを不器用に脱ぎ始めた。


「まっ、待て待て、待てっ!

付いて来るのはまぁ良いが、嫁にはしないぞ。

俺は決めた娘がいるからな」


「はい、私くしは2番でも3番でも何番でも構いませんわ。

フー様も貴族なのですから、ハーレムくらい持っても、何ら不思議じゃございませんわ。

ただ私くしを捨てないでくださいませ」


「俺のハーレム要員になりたいのか」


「はい、父もハーレムほどの規模じゃないですが、少人数いますから。

その中には私くしと同い歳の娘も囲っているのですよ、フー様はどう思われますか?」


「どうって、俺はまだ18歳だから、正直分らん」


「まぁ、私くしの方が齢上なのですね。

私くしは19歳ですから」と、自慢するフランソワは何時の間にか泣き止んでいた。


「じゃ一つだけ約束を守ってほしい。

今後一切、御父上をはじめ家族に会えないと思うが、それで良いのか」


「はい、逃げる時に別れは済ませていますから」と、きっぱり言う。


「そうか、なら職業を教えてくれるか」の問いにフランソワは自分の職業本を恥ずかしそうに見せた。


薄青く光るフランソワの職業本の内容は、こんな感じだった。


姓名 フランソワ・スコット

種族 人♀

年齢 19歳

職業 剣士

剣士スキル 剣の達人 投擲 身体強化 

加護 剣王


「分かった、まだスキルは取得していないんだな、それに加護持ちか。

うんっ?

身体強化を取得しているね、これは良い!

剣王か、凄いね、俺とは大違いだ」と、独り言を言いフランソワに「もう良いよ」


「剣の達人と投擲は途中に有る冒険者ギルドで調べよう」


「あのぅフー様、私くしお腹が空きましたわ」と、フランソワが申し訳なさそうに言うので、遅い昼食にした。

食事のメニューは色々考えたが、干し肉と固いパンに水にした。

とにかく町に着くまではこれで我慢だと思うが、フランソワは美味しいと言い、美味しそうに食べてくれるから、アイテムボックスの食料を思うと、申し訳なくなってくる。


満腹になったのか、フランソワは俺にもたれ掛かって眠った。

その寝顔が美しいのだ。

不安だらけの一人旅が、ひょんな事から相棒が出来てせいで、俺も窮地なのだろうが安心できるから本当に不思議なのだ。


外が薄暗くなるまで、俺はエルシャーの兵士が話した事を思い出して、いろいろ考えた。

囮の軍に誘い出され槍の勇者によって全滅させられた、これは事実だろう。

勇者の行いも聞いたが、特に剣と魔法の勇者は最低な糞野郎というのは、俺は直に聞いていたから間違いない。


槍と弓以外の勇者、あと二人については今のところ何一つ情報が無い。

奴等の目的が何処にあるのか分からないが、凡そ美女を甚振る、その為なら手段を択ばない。

世間で広く知られている王族や貴族の美女、次にターゲットになるのは、おそらく美女で強者と考えられる。

と、言う事は、セイントフォーが何時かは狙われる。

その可能性は大いにある。


弓の勇者の威力を考えると、防ぐのはまず無理だろうし、槍の勇者にしても、あの大軍を凡そ一人で全滅させられると考えると、先制攻撃のみ対抗できるのは現状アマンダ一人なってしまう。

俺のスキルを駆使しても、弓の勇者には気配が分かるようだし。


剣の達人と投擲がどのようなものか知らないが、俺に寄りかかって眠っているフランソワに期待して鍛えるしか手が無いように思われる。


残り二人の勇者の方は全く分からないし、今はとにかくマンブール市へ急ぐ。

そして、セイントフォー皆で速やかに姿を晦ます、これしか思いつかない。



「本当に済まないが、これしか食べるものが無いんだ。

もう飽きただろうが、無理してでも食べてくれ。

凡そかけだし冒険者の食事事情はこんな物だからな」


「いいえ、私くしは飽きませんわ。

フー様と一緒の食事ができる、今はとっても幸せですのよ」


「参ったな、じゃ美味しく食べてくれ。

明日の夜はちゃんとした食事が出来るよう、街を目指そう」


その日もフランソワは吸血蝙蝠と騒ぎ俺の腕を大事そうに抱え込んで眠った。

俺の方は、フランソワの柔らかい胸の感触と共に、今夜は腕を少し捻じったのか軽い違和感を覚えた。


翌朝もフランソワは吸血コウモリと震えていた、それで俺は目を覚ますことが出来た。


今日は距離を稼ぎたかったので、すぐに食事にした。

その後フランソワに注意を言い、一度外に出て周りの様子を見るために洞窟前に出来た岩を登って周りを見渡した。

その僅かの高度の差で、前に見える尾根の遥か先に街道を見つけた。

街道は大きく弧を描き俺たちが行こうとする先で合流できることが何となく分かった。

それともう一つが、尾根には見える範囲で遮蔽物が無いため、注意して進む必要がある事くらいか、と思っているとフランソワが顔を出して様子を見ている。


「さぁ、注意して行こうか」

朝露で濡れる靴を気にすることなく、フランソワは俺の後ろを付いて来る。

尾根を進むにつれて、草の傷み具合から昨日の奴らが思ったよりも大人数で来ていたことが分かった。


日が昇り明るくなった頃は、尾根はほぼ平坦になって草も乾いて、ずい分歩き易くなった。

一方で左右の谷は深く険しくなっている。

昼前に街道脇の一段低い良い感じの所を見つけたので休憩を入れた。


「疲れたか」


「いいえ、フー様と一緒ですから、疲れなど吹き飛びますわ」


「それは良かった。

これから、俺の名を呼ぶのは控えてくれ。

俺も控えるからな。

それで、俺たちは兄妹ということにしようと思う」


「私くしは愛人でも構いませんわ」


「いいや、兄妹で通そう。

俺達は田舎の村出身で街へ出て、夢はゴールドクラスの冒険者を目指すんだ。

ところでフランソワが知る村で、適当に良さそうな村に心当たりがあるか」


「この辺りだと、キゼー村辺りは如何でしょうね」


「良いじゃないか、キゼー村。

それで、特産品とかは」


「さぁ、何が有るのでしょうね。

開拓村の事は私くし存じ上げませんわ」


「そうか、でもそれじゃ困るんだ。

いいかいフランソワ、開拓村の事は知りませんと、言うんだ」


「あっ、知らず知らずに本当に申し訳ありませんわ」


「申し訳ありませんわ、じゃなくてこの場合はすみません、か、。。。知らないです、で良いよ」


「キゼー村出身なんだから気を付けよう」と、笑った。


「はい、気を付けます。

大勢の前では、なるべく話さない方が良いのでしょうね」と、がっかりする。


水で喉の渇きを潤し街道に出ると、街道を左に行く事にした。

昼が近くなると、曇り空に変わり冷たい風が前から強く吹き始めた。


「フラン、もうすぐ雨が降るから雨宿りが出来そうな所を探そう」


「はい兄さん、もう少し早くても問題ないですよ」

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