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逃亡ー11

俺の突然の出現に最初は目を大きく見開き驚いた娘は、こくこく首を振り納得した。

「では着ている服を脱いで裸になってくれ。

首飾りなどの宝飾品は一つ残さず外してもらう」小声で指示した。


はじめてくれと手で合図すると、初めに服に取り掛かったがうまく脱げず、首飾りと指輪を外すのに時間が掛かり過ぎた。

今迄座っていたシートに時間をかけて外した首飾りと指輪、髪飾りとイヤリングを置いた。

それらを俺が速攻でアイテムボックスにしまう。


外の方は、ついに痺れを切らした襲撃者が数を頼りの強硬策にでたようた。

帝国の狗に成り下がりお前等は恥ずかしくないのかとか、死んでもお前等に祟ってやるとかの声が聞こえていたが、次々に悲鳴を上げ倒れる護衛か襲撃者達の最期の怨嗟がこもった声が聞こえる。


突然乱暴に馬車の扉が開き、返り血を浴びた襲撃者が扉の前に立った。

メイドの死体が邪魔になり車内に入ってくることはなかった。

丁度運よくお嬢様の服を俺が手伝って、脱がせお嬢様の手をとり透明化のスキルを発動した時だった。


「隊長ぉ、メイド以外誰も居ませんぜ」

お嬢様と呼ばれる少女は驚き何か言おうとした時、俺は後ろに回って、空いた左手でお嬢様の口を塞いだ。


「そんな訳があるか。

御者も護衛も言っていただろうがぁ」


「いや、だから毒を飲んだメイドだけですって」


「うぇ、気味の悪いメイドだ」


「お前ら、俺を舐めてんのか?

どけ!」と、苛立ち興奮した声が聞こえ、リーダーらしき男が馬車を覗き込んだ。


俺達の前に立ち、そのまま「何をボッ~としていた。

「直ぐに、馬車の周りを探せ、街道の方に向けて探せよ。

必ず見つけろ、まだ遠くには行っていないはずだ」


「はっ!

おい聞いたな。

馬車前後300メートルを全員で一斉に探します。

負傷者は一旦此処に残し全員私に付いて来なさい」


「俺は谷を下り街道に出て、本部へ状況報告に行くからな。

結果を出せ」


どれだけ時間が経ったのか、極限の緊張の中で娘の腹がグ~と鳴り時間の感覚が戻った。

それで俺は気が付いた。

娘は靴を履いたままだったのだ。

運よく見過された。

初めての経験は、些細なことで俺自身も危ない目に合うところだった。


細心の注意で周りに気を配り、娘を連れて馬車を出ると、街道と反対側の山の方に向けて緩い傾斜を登った。


朝から夜まで丸一日中でも透明化が切れる事なく持続出来るが、二人では効果が短時間で切れた。

膝丈と短い草が生い茂り岩や樹木の障害物が無い、移動はし易い緩い上り坂だ。

丁度街道と同じ高さになったので、直線距離で凡そ500メートルといったところだ。


注意して見ると街道から俺たちは丸見えで、非常に困った状態になった。

奴等は今何処に居るか知らないが再度馬車に戻り怪我人の回収、その次は此方へ捜索の範囲を広げるから、今は少しでも追っ手を撒くために距離を稼ぎたい。


「お嬢様、少し急ぎますよ。

もうじき追手が迫ってくると思いますから」


「はい、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」と、苦しそうに言う。


草を踏む跡がかすかに残るので、勘のいい奴らは誤魔化せないが、とにかく今は距離だ。

小娘一人の常識では無理と思えるだけの距離を稼ぐ、それだけ考えてとにかく山を登った。


その途中で一つ洞窟を見つけたが、その洞窟はあえて無視して山を登ることを選んだ。


途中で洞窟を見つけて立ち止まるお嬢様に「お嬢様、先を急ぎましょう。

この洞窟を探して諦めてくれることを願って」


「でも。。。

分かりました、あなた様にお任せしますわ」


俺の後ろをハァハァと苦しそうな呼吸音が聞こえてくるが、お嬢様は意外にタフで遂に、支障なく山の頂上に来た。


頂上からは見晴らしが良く、襲われた馬車も街道もよく見えた。

見える範囲で大まかな地理を把握するために視線を左から右に移すと、裸のお嬢様をつい見てしまった。


お嬢様は恥ずかしそうに頬を染め、両腕と手を器用に使い、胸と大事なところを隠した。


「あぁ、これは失礼した。

本来ならここで服を着ても良いのだが、今はもう少し我慢してくれ」


「こう見えても俺は、女性の裸は見飽きているからな」と、つい言ってしまった。

お嬢様は俺の言い方が可笑しかったのか、クスっと笑った。


「次はこの谷を降りて、前に見える尾根を目指そうと思う。

ほら、あそこに身を隠すのに丁度良い大きさの岩が見えるだろう」


「アレですね、分かりましたわ」


ゴロゴロと石が多い谷を降りていると「あの、靴の踵がとれましたわ」


「じゃぁ、残る方の踵をとろうか。

その方が歩き易いから」


「はい、よろしくお願いします」と、棒立ちのお嬢様から靴を脱がした。


薄ピンク色をした靴の踵を直ぐ傍の岩に俺が叩きつけて外した。

谷迄下りると目の前の急斜面にお嬢様の体力を心配した。

何とか急斜面を登り、やっとの事で目的の大岩にたどり着き一休みしていると、怒声が木霊し3度も聞えた。


怒声の山彦を聞き移動を再開するには遅すぎた、追っては近いと判断できた。

運が良いのか、大岩の後ろが洞窟になっていたから、奴らの出方次第で今夜は此処で一泊する予定を立てた。


「あの大丈夫なのでしょうか」


「今は分からんが、ここ等で諦めてくれるといいのだが」


「もうすぐ暗くなるから、今のうちに夕食にしようか。

お嬢様もお腹が空いたでしょう」


「はい、何か食べさせていただけるのですね」と、良い笑顔を俺に向けてくる。

「おっと、その前に」と、俺が言うと、お嬢様が緊張して胸と大事なところをまた器用に隠した。

「そうそう、服を着なくちゃな、山の夜は寒いだろうからね」と、言いアイテムボックスから、お嬢様の服を次々に取り出した。


その様子を不思議そうに見ていたお嬢様は感激して、「あなた様はマジックボックスをお持ちなのですね。

私くし初めて見ましたわっ」と、興味津々だ。


「お嬢様は直接肌に触れるパンツや肌着位はご自分で着てください。

服は手伝いますから、それでいいですね」


凸凹な地面に片足で立つ不器用なお嬢様が、パンツを穿く時に転びそうになるので、俺が手を貸した。

前屈みになるお嬢様の白い豊かな胸が円錐状に変形し良い感じに垂れた。

この角度からは初めて見る思うと、良い目の保養になった。

大事なところもバッチリ見えたがこの場合は垂れ下がる胸だと思った。


結局肌着も俺が全て手を貸し着させ、ワンピース仕立ての服も俺が着させた。


「お手数をおかけしました事、真に申し訳ありませんわ。

しかしあなた様はその何と言うか、ハフリよりも。

ハフリを言うのは私くし専属のメイドですが、手慣れていらっしゃるのですね」


「言ったろう、俺は女の裸は見慣れていると」


そう言うと、クスっと微笑む可愛いお嬢様だ。


「ところでお嬢様の事は呼べばいいかな」


「。。。。。。。。」


「ちなみに俺は、フー。

フー・ウェルだ」


「私くしはそのぉ。。。」と、思案するが明かさなかった。


「まっ良いさ、言いたくないのなら」


「いえ、そうではありませんわ。

名乗るとフー様に多大な御迷惑が掛かると思いまして。

命を救って頂いたご恩人ですから、分かりましたわ。

私くしは、フランソワ・スコットと申しますの。

領主スコット子爵の長女ですわ」と、貴族がするお辞儀、手慣れた様子でカーテシーをしてみせた。


「フー様も姓をお持ちだと、何処かの御家の人ですよね」


「まぁ、一応は貴族ですが、それだけですよ」


「で、そのお嬢様は何であんな事に?」


もしかして、後継者争い?」


「いいえ、そんな単純な事じゃありませんわ。

「私くし達を襲った賊は、おそらくは槍の勇者の私兵と思いますの。

私くしを何処で知ったのか、お父様の所へ私くしを差し出せと一方的に言ってきましたの。

一体何様なんでしょうね。

私たちはベルステン王国に属するのに、ガス帝国の奴らは勝手に勇者を召喚して、その勇者の扱いに困っているのですから」


「それで逃げたんだ」


「はい、何でも剣の勇者が気に入ったウェルビー辺境伯家のフィリスお嬢様を手に入れるため、勇者6人が揃って合同軍を率いて一方的に王国へ攻め込んできたとか。

その時にフィリスお嬢様と一緒に剣の勇者と魔法の勇者は亡くなられたとか。

その身勝手な責めを王国に押し付けてきて、何でも私がそのフィリス様によく似ているとかで、私くしを甚振るのが目的と使者が嫌らしそうに言ったそうです。

私くし直接フィリス様を存じ上げないのですが、噂では美しく王国三大美女の筆頭と聞いておりますわ。

美しい女性を拷問するのがお好きとか。

聞いたところでは、どの勇者も好き勝手やらかし、召喚した帝国のスカーシス皇女はその場で切り殺されたそうです。

ガス皇帝は勇者に逆らえず、今では勇者の言いなりだそうです。


世界最強には誰も、ベルステン王国でも逆らえないということでしょうか、本当に悲しい事ですわ」


無言の時が流れ、俺の事で巻き添えになった被害者を目の前にしていると、向こうの尾根方から叱責する声が聞こえてきた。


「全くしつこい奴らだ」と、思ったその時、射殺す様な強烈な殺気を感じた。

咄嗟にフランソワの頭を押さえ俺は、大岩の陰に隠れた。


「あっ、あのぅ、如何されました」


「しっ!

おそらく勇者が直ぐそこまで来ている」


「洞窟の奥へ移動するぞ」


薄明るかった視界が真っ暗になりかけた頃に、背後から轟音と凄まじい衝撃波を感じた。

同時に入口に有った大岩がきれいに砕け飛んだ。

運よく洞窟の入り口を粗方砕かれた大岩の破片で塞がれ、あの殺気が感じなくなり勇者は諦めたように感じられた。

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