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事故物件エクソシスト〜霊のお悩み、承ります〜  作者: 地野千塩


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神の声と新しい道(8)

 その数日後。唯子と尋人は、とある郊外の住宅街を歩いていた。真夜の生配信に出演する為だった。


 もう夕方だ。陽はオレンジ色だ。街路樹も夕陽に染まり、帰宅中のサラリーマンや高校生とすれちがう。


 この辺りは高級住宅街らしい。住宅も広々と大きいところが目立つ。それにすれちがう住人も礼儀がいい。尋人は屋台で買ったベビーカステラを食べ歩きしていたが、眉を顰められてしまった。


「まあ、対決なんて茶番だよ。適当にやれよ、リス子」


 尋人は実に呑気だったが、唯子の顔は暗い。生配信とか対決とか何をするか不明だし、また霊的な問題が起きる予感しかしない。最近の美桜は生活習慣をかえ、特に問題なく元気そうではあったが、まさか自分たちの方がこんな風になるとは予想外だ。


 まさにリスのように小さく震えてしまう。もはや尋人は熊にしか見えない。なぜこんな呑気なのか。自信満々なのか、解せない。


「前にも自称・神様の声がきけるっていう霊媒師から喧嘩ふっかけられたことがあるんだよ。私のハイヤーセルフの声こそが神様だって」

「へ、へぇ……」

「でも結局、そいつについている悪霊を祓ってしまい、クリスチャンになって牧師をやっているぐらいだ」

「そんなこと、あるの?」


 目が丸くなる。そんなことはあり得るのだろうか。


「そうだ。だから、人間どう変わるかわからない。真夜もそうだし、リス子もそうだ」


 思わず下を向いてしまった。今、仕事も決まっていない。やりたいこともない。やりたくないことすらわからない。夢も何もない状態だった。今は忘れそうになっていたが、そんな話を聞いてしまうと、どう反応したらわからない。


「大丈夫さ。聖書には神様が将来と希望を与えるっていうところがある。リス子が思ってもみない未来があるんじゃ?」


 はっと顔をあげる。未来。そんな単語、マイナスイメージしかなかったが、全部が全部そうではないのだろうか。


「まだ起きてもいない未来考えて勝手に不安になるな。どうせ未来のことなんて神様しかわからん。そこはドーンと構えて、神様に委ねろ。心配するな」


 隣の尋人、笑っていた。なぜだろう。神様のことを語る尋人、笑顔が多く、目も子供もみたいに澄んでる。


「そ、そうだといいけど……」


 ただ、自然と不安は消えてきた。そうだ、今から心配しても、悪い予感を考えても仕方ないと思った時だ。


 気づくと真夜の家の前についていた。真夜の印象は魔女のような人だったが、意外と家はシンプルだ。スクエア型の白い家で、現代的。周囲も似たようなオシャレな家が多い。


 そしてチャイムを鳴らし、真夜が登場。相変わらず黒ずくめだったが、今日はサングラスもしていない。目つきの鋭さが目立っていたが、今日、生配信をするという書斎に案内さてた。


 広い書斎だ。カーテンは締め切られていたが、壁一面に洋書が詰めてある。唯子は英語がよく読めないが、おそらく霊媒や魔術、ハーブに関する多そうだった。ホテルの仕事では絶対に使わないような単語が本の背表紙にあり、唯子は全く笑えない。


 すでに生配信の準備はできていた。ソファの近くにカメラやノートパソコンもあり、今すぐにでも配信できそう。


 それにしても、怪しい洋書に囲まれた書斎での生配信。それだけでも雰囲気があり、視聴者も少なく無さそう。


 実際、配信が始まると、たくさんのコメントが寄せられていた。多くは真夜のファンのコメントだ。真夜の言う通りに引き寄せやパワストーンを身につけたら、願いが叶ったというコメントばかり。


 真夜はそんなコメントだけを取り上げ、「だから引き寄せの法則は良いもの。なんでも願うだけで叶えられる魔法」と言っていた。


 堂々としてる。何も言えず、ソファの端で座っている唯子とは大違いだ。それに自分への絶賛コメントも躊躇なく取り上げ、なぜか唯子の方が恥ずかしくなってくるぐらいだ。


「どうです? オカルト牧師、ほら、引き寄せの法則は当たっているでしょう?」


 もっとも真夜はマウントもとっていた。ハスキーでで少し鼻にかかった声が耳につく。


 一方、尋人は冷静だった。てっきりこんな挑発に乗るかと思ったが、腕を組み、ふむふむと頷いているぐらいだ。


「視聴者のみんな、そうだ。引き寄せの法則は実際にあるぞ」


 そんな事も言う。逆に真夜が一番驚いている。「え?」とつぶやいているのが聞こえた。


「ここはひとつ、引き寄せの法則で一体だれが願いを叶えているか、考えてみようじゃないか。さて、叶える存在は神様だと思うか。それとも悪魔だろうか?」


 真夜は尋人の言葉に反論はしていなかったが、ぎゅっと拳を握っているのが見える。何か都合の悪い発言でもあったのだろいか。


「聖書では悪魔は元・天使長だった。少しぐらいは人間の願いを叶えられる。お金、名誉、美貌、地位なんかは特にな。俺も昔叶えてもらったぜ。でもな、後でとんでもないことになった」


 ここでわざと尋人は声を低くし、怪しい雰囲気を作っていた。


「夜中に悪魔の声が聞こえるようになった。願いを叶えた代償を支払えと取り立てにきたんだよ。しかも利息つき。あれは借金取りのヤクザみたいだった」

「ちょっと! オカルト牧師、変な作り話をするな!」


 真夜が止めようとしたが、尋人は無視だ。


「そう。引き寄せとか神様じゃないものに願いを叶えてもらった場合、必ず代償が要求される。時には命の場合もある。家族や子孫が支払う場合もあるぞ。聖書には悪魔は盗み、殺す存在だとある。甘く願いを叶えてくれているようにみえるが、最終的に地獄に道連れにし殺すのが目的だ。それでもいいんか?」


 こんな尋人の発言、反発のコメントが多いだろうと思ったは、全く違った。


 引き寄せで願いが叶えた後、幻聴や金縛りに悩まされたリスナーのコメントもあった。それだけじゃなく、願いが叶っても心の穴が埋まらず、なんか虚しいというコメントにも賛同されていた。いつのまにか、真夜のファンのコメント、少数派になっていた。


 驚いた。尋人は相変わらずだったのに、風向きが変わっていた。まさか神様が背後にいるんじゃないかと疑う程。


「だからみんな、誰が願いを叶えるのかよく考えてくれ。代償を要求してくる悪魔に叶えてもらっても嬉しくないだろ?」

「うるさい!」


 一方、真夜は尋人の声を遮り、怒鳴り声を上げていた。


「うるさい! 何、余計なことを言っているんだよ。私の邪魔するな!」


 目は怒りに燃え、顔は真っ赤だ。声もさらにハスキーだ。


 魔女というよりは鬼に近い。本当に魔女か。いや、真夜に何かが取り憑いているみたい?


 また背中がゾクゾクとしてきた。この真夜の様子、尋常じゃない。単に尋人と意見が合わないだけで、ここまで逆上するものだろうか。前回会った時も、どこか不安定だった。もしかして今、怒鳴っている「真夜」は、悪霊に乗っ取られている状態?


 わからない。尋人は平然と語り続けているが、真夜の怒りは全く消えない。それどころかどんどんエスカレートしている。リスナーからのコメントもカオスになった時だ。


 突然、部屋の電気が切れた。ガタガタと変な音も響き、ノートパソコンも全く動かない。カメラもなぜか勝手に倒れてる。


 その上、ソファのクッションが勝手に宙を浮いてる?


 地震じゃないのに、ガタガタと本棚の中見も勝手に出ていた。


 何これ?


 同時に真夜も泡を吹いて倒れていた。過呼吸だろうか。いや、これは霊的な攻撃!?


 唯子の心臓もバクバクと鳴っていた。変な声も聞こえる。怖い。首が苦しい。誰かに首を絞められている見た。本当に物理的な攻撃を受けていたが、これは何? 


 悪霊!?


『そうさ。お前らを殺しにきたよ』


 視界がぼやけ、よく見えない。声を上げることも難しいのに、その声だけはやけにはっきりと聞こえてきた。

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