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事故物件エクソシスト〜霊のお悩み、承ります〜  作者: 地野千塩


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永遠の契約(7)

「っていうか、あなた達誰? なんで晶馬の仕事場へ? まさか潤子さんが呼んだ? 彼女、玄関の方で具合悪そうにしていたけれど?」

「俺はオカルト牧師の羽生尋人だ」


 学華、尋人の自己紹介に絶句していた。誰だってそうだろう。突然、オカルト牧師。変人にしか見えない。空気がさらにピリッと凍る。


 唯子はすぐにフォローを入れ、事情を説明した。自己紹介もしたが、学華はかえって心を閉ざした模様。


 いつの間にか原稿や魔術の本も奪い返し、睨みつけていた。とくに尋人に関しては露骨な態度だ。目を釣り上げ、一切無視。


「勝手に人の机漁るとか、最低」

「ごめんなさい、学華さん」

「なんでリス子が謝っているんだよ。俺らは単に悪霊祓いをしに来ただけだ」

「うるさい!」


 尋人が話すと余計に火に油を注いでしまったらしい。学華は原稿を抱きしめていた。まるで雛を守る親鳥のような手つきだ。


 唯子は違和感を覚えた。これは単なる漫画家とアシスタントの関係だろうか。


 それに学華、この原稿を見られたことについて動揺し、尋人への憎しみも隠していない。事情を説明してもそうだ。唯子が謝っても変わらない。


 かといって学華と晶馬に恋愛的な何かかあったようにも見えない。ネットではそういう噂もあったが、妻の潤子も何も言っていなかったし、二人の関係はそう見えない。だとしたら、この学華と晶馬の関係って何だろう?


 唯子は失礼だと思いつつ、自分の考えを言ってみることにした。


「もしかして、この作品の女の子って学華さん? それに実話?」


 尋人を睨みつけていた学華だったが、ピタリと止まった。


 図星だったのだろう。否定もできず、口元が震えているだけだった。


「そうか。なるほど。晶馬に悪魔召喚の知恵を与えたのお前だな。大方、親が占い師か霊媒師でもやっているんだろう?」

「な、オカルト牧師とかいう癖によくわかったわね!」


 学華、もう尋人を睨みつけていない。むしろ、同じオカルトの仲間ができたと言わんばかりだ。目が友達を見るような雰囲気に変わってる。


「そう。この本の著作、私の母よ。霊媒師ね。売れてはいないけどね。母も何匹かの悪霊と契約してる。いわゆる使い魔ってやつ」

「なるほど。使い魔に顧客の情報を調査させ、占いが当たっているように見せてるな? 幽体離脱はできるか?」

「もちろん。でももう悪霊も気まぐれみたい。今は能力が剥奪され、おとなしく本書いてるだけ」

「なるほど。やつらもピラミッド社会だからな。お前の親が契約していた雑魚悪霊が上位の悪霊を怒られたかい?」


 想像以上に尋人は学華とオカルト話が盛り上がっていた。唯子は二人が話している内容、全くわからない。


「ちょっと尋人さん、そんな話で盛り上がっていていいんですか?」


 唯子は尋人の肘を叩き、会話をやめさせた。


「お、そうだな。おい、学華。ここに出る幽霊について何か知ってるか? 悪霊と見ているが、まさか過去の殺人事件はないだろう?」

「殺人事件なんて嘘よ。私の作り話。潤子さんが怖がっていたから、揶揄ってやったわ。ふふふ」

「お前、悪趣味だなぁ」


 今は学華、尋人の方が打ち解けていた。同じオカルト好き同士で気があっている模様。この様子だったら、何か聞けるかも。実際、殺人事件の件も口を滑らせていた。


「ええ。そう。さっきも言ったように、この原稿は実話」


 尋人も例の原稿について尋ねると、学華は話を始めた。相変わらず胸に原稿を抱いていたけれど。


「うちもそうだったけど、晶馬もかなりの貧乏状態だったわ。お金がなくて、パンの耳に砂糖まぶして食べてたわ」


 過去を語る学華、懐かしそうに目を細めていた。


「だから彼、とーっても成功欲が強かった。どうしても成功したくて、お金が欲しくて仕方なかったみたい。ええ、この原稿通り」


 学華はさらに原稿を強く抱きしめていた。


 気づくと、いつの間にか潤子もこの場所に来ていた。ハンカチで口元を抑え、具合は悪そうだったが、しっかりと学華の話を聞いていた。


「親ガチャって本当にあるのね。いくら子供が優秀だったとしても、親がクソだたら何にもならないわねぇ」


 それは学華自身についても言っているのだろうか。


 この場所で誰も学華の言葉に反論できなかった。誰も学華と同じ経験をしていないからだろう。


「同じ親ガチャ失敗もの同士、私と晶馬は親友になったわ。親友っていうか理解者って感じ? それに彼の描く絵、素晴らしいの。本当に神様みたいで」


 学華の目、急に虚になってきた。それでも原稿は強く抱いたまま。


「あぁ、彼は私の神様。心から信じてるわ……」


 そう身を屈め、本当に拝むような態勢をとっていた。


 何これ。学華はオタク系の女性に見えたが、こんな態勢、違和感しかない。きっと彼女だって何か個性や才能もあるはずなのに、こんな風に誰かを「神」にしている状態って?


 本当はヒロインなのに、わざわざエキストラをやっているような違和感が襲ってきた。


 学華だけじゃない。推し活とかもそんな風に見えてくるから不思議。


「おい、学華? お前、何やってるんだ? 目を覚ませ」


 唯子や潤子は何も言えなかったが、尋人だけが学華の身体をゆすっていた。


「お前、目を覚ませ! お前は偶像の奴隷になったらいけない。神はそんな風にお前を創造していない。本当は唯一無二の存在なんだよ。自分自身をそんな偶像の奴隷に貶めるなよ!」


 しかし学華へ尋人の声は届かなかった。学華は意識が切れ、その場に倒れると、原稿も床に散乱していた。


 同時に部屋の窓枠や壁がギシギシ鳴り始め、天井の灯りやパソコンが勝手に作動していた。


「な、何これ?」


 潤子も具合が悪くなり、石のように固まっていた。部屋の全ての電源も落ちた。なぜか唯子のスマホも全く動かない。


『潤子』


 気づくと、晶馬のデスクに誰かいた。潤子の名前を呼んでいた。まさか晶馬の幽霊!?

 

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