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村の壊滅と仲間たち

マーズの郵便箱に、二通目が届いた。差出人を見ると、橘彩からだった。


『よっちゃん、生きてて良かった。ひさしぶりなのにごめんね。できるだけ早く来てほしいの。これが住所よ。』


マーズの口元は微笑んでいるが、その目は魔法少女のそれに戻っていた。


「何かあったのね」


家に戻ると、何十年ぶりかに、魔女の帽子とマントを羽織った。


ドアを開けると、動物たちが心配そうに集まっていた。


「少し旅に出てくるわ。帰りにお土産を買って帰ってくるから、心配しないで」

マーズは森の出口に向かって歩き出した。


「馬が必要ね」


◇◇◇◇


それが起こったのは、夜中の三時だった。


軍の進軍による振動が、地面から伝り、三人はすでに異変を察知して、家の外に出ていた。


村の反対側から、戦車が火を吹き、夜空を震わせた。放たれた砲弾が村の裏山に直撃し、その山頂頂部が削り取られる。


激しい衝撃に、三人の足元が地震のように揺れた。


続いて、迫撃砲はくげきほうから高角で発射された二基の砲弾が、山の向こう側から闇に紛れて降り注いでくる。


その砲弾を麗香れいかの放ったアーチェリーの矢が正確に貫いた。


二基とも空中で爆発したが、すかさず第二弾の迫撃砲の発射音が、ドンッ、ドンッと再び夜空に響き渡る。


ヴィーナスとなった舞子まいこは、軍の作戦を冷静に分析した。


「戦車の砲弾で裏山への退路を断ってからの、無差別攻撃ね。山が遮蔽物になって敵の姿が見えないんじゃ、麗香の矢も向こうには飛ばせないわね」


戦車から射出された二度目の砲弾が、また山を揺るがす。


「これじゃあ、山に隠れることもできないわ」


再び頭上に現れた迫撃砲の砲弾を、麗香は矢ですべて空中で爆破させた。


ヴィーナスが、優しい声を二人にかける。


「ここを捨てて、大倉さんと同じルートで山を降り、軍に奇襲をかけましょう」


その時、バラバラバラと激しいヘリコプターの爆音が聞こえた。と同時に、掃射された機関銃の銃弾が、足元の土を激しく跳ね上げる。


「麗香頼んだわよ。さくらちゃん、早く逃げて!」


少しぎこちない足取りで、ヴィーナスは敵のサーチライトにあえて照らされながら、二人から離れるように走った。


機関銃の連射音とともに、容赦のない弾丸が地面を抉りながらヴィーナスの背後に迫る。


彼女は左へ跳び、地面を転がりながら、スナイパーのように、ヘリコプターに向けてアーチェリーを構えた。


矢を放つ寸前、低空飛行してきたヘリコプターの操縦席に、どこからか飛んできた「何か」が突き刺さった。


バランスを崩した機体は、斜めに傾きながら墜落していく。


「舞子――! 無事か!?」


ジュピターが馬を駆り、村の坂を駆け上がってきた。


ヴィーナスは立ち上がり、土で汚れた服をパタパタと叩いた。


「あら、女騎士様の登場ね。男がよかったわ」


「言ってろ。百年以上ぶりだってのに、随分な挨拶だな。しかし、舞子も結構老けたね」


「あんたもじゃない。よくここがわかったわね?」


「彩の病院に行っていたんだ。そこで木山という男から、政府が舞子の村と村人を抹殺しようとしていると教えられた」


「そのようだわ。村できんが見つかっちゃったのよ」


「村を明け渡すつもりか?」


「もう、そんな段階じゃないわ。避難してもらった村人たちも危ない。まずはあの軍を潰しちゃいましょう。手伝って」


「任せておけ。よっちゃんの弟子も来ている。彩が手紙を出したなら、よっちゃん本人も来るはずだ」


「ヘリコプターを落とすのに、刀を一本使い果たしちゃったじゃない。まだまだ来るけど大丈夫?」


「以前の教訓があるからな。予備はちゃんと持ってきている」


「みんな来てくれるのね。これで麗香もいるし、負け確定ではないわね。彩は来ないの?」


「あいつは患者がいて手が離せない。それに、あいつが来ても戦闘には加わらないし、下手すりゃ敵兵まで治療し始めるぞ」


「ふふ、彼女らしいわね」


その時、もう一台のヘリが地上から距離を取り、手榴弾を次々と投下してきた。


ジュピターはすかさず馬の上から舞子の手を掴んだ。


「乗れ!」


駆け下りながら、引き上げるようにして後ろに乗せると、数秒後、背後で四発の激しい爆発音が轟いた。


ヘリコプターが上空へ舞い上がると、時間差で迫撃砲の二基の砲弾が村で爆発した。


村人が暮らしていた家々は、ただの瓦礫へと変わっていく。


ヴィーナスは怒りをあらわにし、ジュピターの背中で叫んだ。


「ファッション雑誌も洋服も、絶対に弁償してもらうわよ!!」


直轄地第一の軍が山の右側から村への進軍を開始。第二の軍は変わらず裏山からの砲撃を続け、さらに第三の軍が左側から村へと迫りつつあった。


「舞子、お前はまだ、銃弾が見えるのか?」


「見えづらいわよ。だって老眼だもの」


「だよな。じゃあ、我々はスナイパーみたいに、離れた場所から攻撃するか」


「そうも言ってられないわよ。二つの小隊が山の左右を回り込んで、村の正面に向かってくるはずだから」


「小隊を二つとも相手にするのは、さすがに骨が折れるな」


「大丈夫。そろそろ娘が反撃に出るはずよ。彼女は左から回り込んでくる小隊を一人で全滅させると思う」


「そりゃすごいな。我々の全盛期並みじゃないか」


「私達は二人で一個小隊だけよ」


「さくらが来てるはずだが」


「彼女は娘の麗香と一緒よ」







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