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竜 vs 政府軍

数十分前、竜とジュピターは、並んだ二頭の馬の上から遠方の轟音と光を見つめていた。


ジュピターが隣の竜を顧みる。


「あれが政府軍だな。舞子を助けるのに、あの裏山からの砲撃が邪魔だ。潰してきてくれるか?」と彼女はたった一人で行けと言う。


「武器を動かす兵なら潰せるが、鉄は切ったことねぇ。無理はしねぇよ、師匠との約束があるんでね」


「わかった。頼んだぞ!」


ヘリコプターが、サーチライトを点けて村のある山へと飛んでいく。


それを見て、ジュピターは即座に村へと馬を走らせた。


残された竜は馬を降り、先ほど光った場所へ視線を据える。


「約八百メートルってとこか。闇に隠れて近づくとするか」


殺気を消し、音を立てぬように走り出した。二百メートルまで接近したところで、ようやく敵軍の全容が視界に入った。


前方に戦車が鎮座し、その斜め両脇を機関銃付きのジープが固めている。そこからさらに二百メートルほど後方に、二門の迫撃砲が据えられていた。


「ったく、とんでもねぇ大軍じゃねぇか。簡単に潰せって言ってくれるぜ」


腰を深く落とし、身を低く伏せながら、前方で迫撃砲を操る歩兵へと、音もなく近づく。一門に三人。号令を出す砲長が一人。


「撃て」


砲長の合図とともに迫撃砲が再び火を噴き、砲弾が夜空へ打ち上がり、弧を描いて山を越えていく。


「七人か。このあと戦車だろ。銃声がしたらアウトだな。ったく楽しすぎるぜ」


ゆっくり立ち上がると――


(始めるか)


砲長の背後から、リボンスティックで首を強打して気絶させると、音を立てず寝かせた。


リボンを振って、三人の砲撃手を一瞬で斬り伏せる。


もう一門の三人が異変に気づいたが、まず一人を両断。逃げようと背を向けた二人の首を撥ね飛ばした。


「あとは戦車だが、機関銃を積んだジープの横を通らないといけないな」


賞金稼ぎの計算が頭を巡る。


(一度距離を置いて前に回り込むか? いや、機関銃の餌食になるな。……よし、これだけやりゃ十分だ。離脱しよう)


去り際、竜は残された迫撃砲に目を留め、ニヤリと笑った。


「見てたが、この砲弾のピンを抜いて、この筒に落とせば発射されるんだよな。じゃあ、この筒を水平にして前に向ければ……」


と、竜はやってみることにした。


轟音が響き、固定されていない迫撃砲の筒は、強烈な反動で弾丸のように後ろへ吹き飛んだ。


砲弾はヒョロヒョロッと数百メートル先で待機していたジープのすぐ横へと落下した。


直撃こそ免れたものの、車内でくつろいでいた運転手と機関銃手は慌てて飛び出した。


直後、爆風がジープを跳ね上げ、地面の上で何度も激しく横転させた。


「もう一発あるぜ!」


二発目も、もう一台のジープの至近距離で炸裂し、その車体を吹き飛ばす。


「戦車までは壊せなかったが、混乱してる間に山へ隠れるのが上策だな」


「どこからの攻撃だ!?」


と誰かが叫んでいる。


竜は闇に紛れて一度距離を取り、半円を描くようにして前方へと回り込もうとした。


だが、運悪く竜の影を捉えた兵士が指を差す。


「あそこにいるぞ!」


歩兵たちが一斉にライフルを構え、無数の銃弾が竜を狙う。


竜は手元でリボンを高速回転させ、弾丸を弾き飛ばす。


だが、ライフルの銃弾は拳銃とは違う。衝撃が手首へと伝わってくる。


「こりゃ、リボンがもたねぇな!」


背後で激しい銃声が響いている。竜はすでに山に入り込み、木々の間を登っていく。


遠くから『追え!』という指揮官の冷徹な命令が聞こえてきた。


「追ってこいよ。楽しく狩ってやるからよ。……それより、さくらのやつは生きてるだろな」


その時、山の向こう側から地響きのような戦車の砲撃音が轟いた。


「あっちの方向か」


竜は迷うことなく、そちらへ向かった。

 

◇◇◇◇◇

 

「さくらはここで待ってて」


「でも……!」


「その刀、何か特別な力はありそうだけど、銃弾には無力でしょ」


「そうだけど……足手まといだよね。わかった。このあたりで隠れてる」


「じゃあ、また後でね」


麗香は山林の道なき道を五分ほど疾走した。木々の隙間から、村へと向かう軍の姿が視えた。


「どれだけ離れてようが、この目で捉えられればこっちのものだよ」


麗香は弓を上空へと掲げ、矢を番えた。

「まずは、スターダストで――」


言いかけた瞬間、戦車の巨大な砲身がぐるりと麗香の方向へ照準を合わせた。


直後、鼓膜を裂くような轟音が炸裂し、大気が激しく震動する。


「なんで居場所がわかったんだ!?」


密集した木々に阻まれて回避が遅れた麗香は、咄嗟に全身へエネルギーをまとわせた。


しかし爆風の直撃を受け、さくらを待たせている方向に吹き飛ばされてしまった。


地面を転がり、麗香は顔をしかめた。


「イテテテ……防御は苦手なんだよ。それにしても、なぜ見破られた? もしかして『武道』の達人でもいて、あっしの殺気を察知したってのか?」


先頭に位置する、機関銃を搭載した二台のジープがエンジン音を唸らせ加速してくる。


ジープは麗香が吹き飛んだ斜面へ向けて、激しい連射を浴びせながら迫ってくる。


麗香の危機に、さくらが木々の合間から道へと躍り出た。


「こっちだよ!」


さくらは両手を振り叫ぶ。戦車の砲身やジープの機関銃がさくらへと向けられる。


だが、麗香はその隙を見逃さなかった。弓を引くと矢が右手から現れた。


「あんた、面白いじゃん!」




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