木山
首都の入り口は、鋼鉄の扉が開くようになっており、見張り台から合図が送られ、電気で開閉される仕組みになっていた。
装甲車を護衛していた平社員たちは、何もない土がただ続く首都の外で待っている。
木山は病院の駐車場に装甲車を止めると、鍵をOFFと書いてある位置に戻し、エンジンを停止させた。 光っていたインジケーターが消える。
病院のどこからか現れた案内人が、木山のいる運転席の横に立った。
「ご苦労。もう帰っていい」
中肉中背、カッターシャツにネクタイ、スラックスと革靴という出で立ち。 だが、言葉の端々に木山を見下しているのが分かる。
ドアを開け降り立った木山の最初の言葉。
「約束通り金貨も貯めました。反乱も起こっておりません。ガバメント病院で妹を診ていただけますよね」
目を細め、ジロリと木山を見つめる。
「お前は治安部隊の部長になった。だから金貨次第で診てやると言った。だが肉親は別だ。肉親が使えるのは、社長以上だ」
木山の声には、困惑と怒りが混ざっている。
「そんなこと言ってなかったじゃないですか。薬がないと妹は死ぬって言われました。お願いします」
「じゃあ、今このときから社長になれるように頑張れ。大体、お前の支給は5000万円だ。そのへんの医者に診せるには十分の金額だろ」
「いや、そうじゃなくて、医者に唯一助けられるのは、この病院だって言われたんです。ここなら薬があるかもしれないと……どうか先生に会わせてください。この通りです」
木山は土下座をした。
「お前は、反政府軍に薬を奪われるたびに、土下座しているじゃないか。見飽きた」
足音を聞いた木山は、走って案内人を追いかけ、再び頭を下げながら裾を掴んだ。
「誰かと話をさせてください。妹をガバメント病院で診てほしいのです。お願いします」
感情のない冷たい声が響く。
「誰かいないか。こいつを外に出せ。抵抗するなら殺して構わん」
防衛大臣が奥の十字路を通りかかった際、木山たちの様子が目に入り、歩み寄ってきた。 土下座の木山を見ながら、案内人に尋ねる。
「何をしている」
「申し訳ございません。今こいつを外に出しますので」
「何があったかと聞いている」
「それが、妹をガバメント病院で診てほしいなどと訳の分からないことを言っております」
「そうか。土下座しているお前、どんな仕事をしている」
「治安維持部隊で部長をしています。薬も護衛を連れてここまで運んできております」
「何度か薬を奪われてるな。死刑にならなくて良かったじゃないか。前任は処刑されたぞ」
木山は下を向いているしかなかった。
「お前、誰が薬を奪っているのか知っているのか?」
「いえ」
「部下に命じて、お前たちを尾行させておいた。そいつの報告によると、反政府軍と呼ばれる奴らは、山の上にある病院にいるらしい。そのリーダーを捕まえるか、殺してこい。そうすれば、お前の妹はここで診てやろう」
一点の希望が、思わず木山の顔を上げさせた。
「本当ですか?」
「嘘は言わん。ただし、できなければお前は処刑だ。どうする」
「私が死んだら、誰が妹を……」
「そんなことは聞いておらん。やるのかやらないのか」
「……やります」
案内人の男に指示を出す。
「軍の社長から病院の地図をもらってこい。それをこいつに渡してやれ」
「はい、承知しました」
「後で、軍の社長を私の部屋へ来るように伝えておけ」
「承知しました」
◇◇◇◇◇
首相、財務大臣、法務大臣、防衛大臣が会議室で話し合っている。
「金は我々が調整しなければ混乱が起こる」
「金の出る村は、我々の管轄に置かれなければならない」
「そうだ。金貨という絶対的なものが失われる」
「知る者は皆殺しだな」
「口外されては面倒になる」
「金脈があれば、金貨をいくらでも作れる」
「子々孫々まで我々が大臣でいなくてはならないからな」
◇◇◇◇◇
防衛大臣の部屋へ、軍の社長がやってきた。
「あの村を潰せ」
「村は潰せますが、それは全員殺せということですか?」
「当たり前だろ」
「しかし、あの村には漆黒の狂戦士がいます」
「お前は分かっているのか。金が他でも手に入るという意味を。金の価値が変わると言う事は、お前の持っている金貨も価値を失うぞ。かまわんから、すべての兵器を使え。燃料も兵隊も気にするな。絶対に潰せ!」
姿勢を正し、敬礼をした。
「承知しました。金の村に全力を注ぎます」
「そうだ。病院の方へは別の者を向かわせた。死にものぐるいで動くだろう。漆黒の狂戦士の村の者は全員抹殺だ。忘れるな」
◇◇◇◇◇
竜は病院に残り、さくらと麗香は一緒に麗香の村へと旅立った。
一方、木山は首都へ即座に戻り、もう一度賞金稼ぎを集め始めた。 防衛大臣から命じられた山の病院――そこにいるという反政府軍のリーダー、ネプチューンこと橘彩を捕まえるために。
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