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漆黒の狂戦士


「あっしさあ、麗香っていうの。母ちゃんが行けって言うから来たんだよね」


真っ黒な顔で、パーマのような髪を人差し指でくるくる回しながら話している。


唖然としながら橘彩が問う。


「あー、私は橘彩だ。なんと言えばいいのか、……ヴィーナスの娘……なのか?」


お腹を抱えて笑いだした。


「ウッヒッヒ! 母ちゃん、ヴィーナスって呼ばれてたんだよね。ウケる。表と裏でぜんぜん違うんだぜ。子供の頃なんて悪いことしたら、おしとやかな喋り方で、あっしのお尻叩きながら『今度悪いことしたら、エネルギーの矢をお尻から入れるからね!!』って、怒られるんだぜ。何回かやられたけど、めちゃめちゃ痛いんだよこれが」


さくらは思った。


(エネルギーの矢をお尻から入れる……普通は死んじゃうよね。やっぱり、魔法少女って強烈だわ)


橘彩だけでなく、反政府軍の十五人と竜も言ってることがわからず、聞いているしかなかった。


麗香は橘彩を見据える。


「橘さんって能力者だよね。体の周りの空気がゆらゆら揺れてるもん。あんたは母ちゃんと同じ魔法少女って名乗ってた人だろ。なんて名前だったの?」


「私はネプチューンだった」


「ネプチューンだって!! ウケる!!」


橘彩が困惑しながら確認する。


「あなたは、ヴィーナスの娘ってことだね?」


「日本語わかんないの? そう言ってるじゃん」


常に髪を人差し指でくるくるしているが、ところどころ縮れたところが見える。


「母ちゃん死んだよ」


橘彩は目を見開き、口を押さえた。


「ウッソだよ。生きてるよ」


そこにいる全員が、麗香の屈託のない笑顔に怒ることができない。


「母ちゃんきっと喜ぶよ。ずっと他の魔法少女のこと心配してたもん」


さくらに視線が向いた。


「ねえ、ガングロとか知ってる? 母ちゃんが持ってた雑誌ってのに載ってて面白いから真似しちゃった。この髪も鉄の棒温めてパーマってのやってみたんだ。何度か失敗して髪の毛が燃えちゃったんだけどね。あんたもやんなよ」


さくらは政府軍兵士の叫びを思い出した。


(漆黒の狂戦士って、ガングロの化粧……言えない)


返答に困ったさくらが、逆に尋ねる。


「あの……いくつなんですか? 二十歳ぐらいですよね?」


「あっし? 生まれて四十五年らしい」


(四十五歳でガングロ? あたしが生まれる前に流行ったんだよね。絶滅危惧種とは言いづらい。年齢もやることも古すぎる!!)


カオスな雰囲気の中、レストランのマスター本山が割って入った。


「助けに来てくれたんだよね。病院を守るために」


「母ちゃんが見にいけっていうから来ただけだって」


首を折られたふりをしていた佐山が尋ねる。


「どうやってここが危機だとわかった?」


「どんな病気も治せる病院が、どこかにあるって村まで届いてたんだ。村はずっと政府軍に狙われてたんだけど、急にそいつらが移動したんだよ。何かあるから、母ちゃんが見に行けって言うから、あいつらの後をつけてきたらここだったんだよね」


橘彩に視線を移した。


「あんた、なぜ能力を使わないの?」


床に寝ている五人を指差す。


「仲間が負傷しちゃったじゃん」


橘彩は視線を外した。


「あっしの村も、また政府軍に襲われるから、早く戻らないと。でも、ここもまた襲われるよね。母ちゃんはだめだって言うんだけど、政府の連中をみんなぶっとばしゃいいじゃん」


橘彩の口は重くなった。


「政府がなくなれば、また最低限の秩序まで失われる。それは、フランス革命などでも証明されている」


「じゃあ、母ちゃんとかあなたとか、仲間で政府を作ればいいじゃん」


「私は医者だ。それ以外はするつもりがない。それに力で倒しても、皆を幸せにする政治はできない。また百年前に戻るだけだ」


麗香がにっこりと笑顔を作り、視線をまたさくらに移す。


さくらは何を言われるのか恐怖さえ感じた。


「あんたさくらって言ったっけ。一緒に政府やろうよ」


「え! えええええ~~~~~」


「あっし一人であの程度の軍をぶっ潰すのは簡単だよ。あっしらで、新しいの作っちゃおうよ」


申し訳なさそうにさくらが答える。


「ごめんなさい。あたしは、この世界の人間じゃないんだ。元の世界、隕石が降る前の世界に戻るために、山城明音さんを探してるの。彼女なら何かを知ってるって聞いて」


橘彩は驚いた。


「さくらは、その時代からこの時代に飛ばされたのか。制服を着ている理由もそういうことだったんだな。それなら、その時の年齢はほぼ同い年じゃないか!」


「え! ええええええ!! マーズさんもジュピターさんもネプチューンさんも?」


「私は高校三年生で十八歳だった。マーズは十六歳。景子も十八歳で、剣道部で偉そうにしていたな。あれから百年以上も経過したのだな」


「橘さんは、山城明音さんの行方を知りませんか?」


「確かに明音なら、何かを知っているかもしれない。だが、消息は不明だ」


「そうですか。探す旅を続けるしかないんですね」


天然の明るさでさくらを誘う。


「あっしの村に来なよ。母ちゃんに聞いてみりゃいいじゃん」



◇◇◇◇◇◇



近くに二つの直轄地があるが、首都と呼ばれるそこは、石垣を隠す装飾が飾られ、絢爛な家と、いつでも撃てる砲が周りの石垣に備え付けられていた。


首都の中にある中央本部にガバメント病院がある。その中に、木山の運転する装甲車が入っていった。

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