ターバンの女
「荷物は反政府軍に襲われるだろう。奴らの中のリーダーはマントをしている。そいつを捉えろ。できなければ殺してもかまわん。もし、荷物を奪われることがあれば、報酬はなしだ」
さくらは、木山が説明する仕事内容に納得がいかない。
「そんなのおかしい!!仕事に対しての報酬でしょ。成功報酬なんて書いてなかったよ」
木山は竜とさくらを無表情で睨んだ。
「お前たち二人は、奪われれば、一人500万の借金になる。払えなければ死刑だ」
爆発しそうな怒りをおさえ、静かに横を向きながら嫌味っぽく言う。
「荷物を守れば、あんたのお気に召すわけね」
「そのとおりだ」
竜が聞く。
「中身はなんだ。そいつらをおびき寄せて、おれたちもろとも、爆弾でドカンてのはなしだぜ」
「中身は言えない。嫌なら二人で一千万だ。それとも、何千人もいる我が治安部隊と戦うか?」
「わかってる。守ればいいんだろ」
「捕まえれば、全員にプラス五百万、合計で一千万だ」
三人がざわつく。
佐々木がつぶやくように質問した。
「ということは、捕まえるのも殺すのも無理なほど強い。と言う事ですよね」
「好きなように受け取れ」
がん鉄が聞く。
「まあいい、作戦は?」
「ここから、ガバメント病院まで荷物を運ぶ。それだけだ。平社員20人と一緒に物資を守ってもらう。平社員は、馬車の周りを囲む。お前たちは、反政府たちを寄せ付けず、平社員と物資を守ること」
木山がさくらと竜を含めた五人を案内する。
さくらは驚いた。二十人の騎馬隊に囲まれているのは、現金輸送車のような装甲車だったからだ。
「自動車……」
木山が怪訝な顔つきをする。
「お前はなぜこれの名前を知っている」
「なんで自動車があるの?」
「お前は伝承を知っているのだな」
竜が助け舟を出す。
「こいつの一族には口伝で伝えられてるらしい。それは、噂で流れている、まぼろしの文明の残りだな」
「文字で残すのも口伝で伝えるのも法律違反だ。この仕事が終われば、お前たちを本部に連れて行く」
「先に仕事の話をしろよ」
「ライフルマンが先頭。右翼にさくらと佐々木。左翼に瑠都がん鉄。平社員の騎馬が前後左右に五騎ずつの陣営で首都まで運ぶ。以上だ」
◇◇◇◇◇
荒野を騎馬と装甲車が、砂煙をあげて走っている。
ターバンを巻きマントを着ている一人を先頭に、全員ターバンを巻いている騎馬が、装甲車に向かってくるのがさくらに見えた。
運転をしている木山が、上部のスピーカーを響かせる。
〘反政府軍が来た。捕まえるか殺せ〙
拳銃では届かない距離だが、馬上でライフルマンが撃つ。
ターバンの男は倒れなかった。
焦るライフルマン。
「なぜだ!あたってるはずなのに」
ボルトアクションライフルは、連射ができない。
もう一度、狙って引き金を引く。
爆発音とともに弾丸がターバンの男の額に着弾する前に霧散しているのがライフルマンには見えた。
「化け物だ。しかも女。金より命が大切」
ライフルマンは、ライフルが壊れたと木山にジェスチャーを送り、後方へ下がっていった。
「混戦になったところで離脱だ」
ターバンの女は、右翼に回った。他の反政府は左翼に回る。
佐々木は、馬に載せているバッグに片手を入れ、掴んだ物をターバンの女に投げた。
それは、パッと開きターバンの女を包みこもうとする。
佐々木が投げたのは、投網だった。
ターバンの女は、片手で二メートル以上ある鉄の棒を開いた鎖の端に叩きつけ地面に落とした。
佐々木は左のバックから投網を掴みだし、頭上で回し始める。端に編み込まれている極太の鎖は風を切る音を立てる。
「さくらさん、賞金は僕がもらいます。見ててください」
装甲車と平社員の騎馬が走り去って行く。反政府の半数の騎馬が追いかける
竜の方をさくらが見ると、竜が五人を相手に戦っていた。スティックで鳩尾を突いたり首を叩き気絶させている。
がん鉄は、馬から馬へ飛び移り、金属でできたフィンガーグローブをはめた手で殴り倒していく。
視線を戻すと、佐々木がターバンを巻いた女に、鉄の棒で顎を突かれたところだった。
佐々木は落馬して動かない。
ターバンを巻いて、マントを着た女がさくらに迫る。
鉄の棒を持った片手でさくらを突いてきた。
それを刀で円を描くように跳ね上げるさくら。
ターバンの女は両手で打ちにきた。
刀と鉄の棒が打ち合う金属音だけが早いスピードで鳴っている。
棒が下からさくらの刀の柄を叩く。
握っていた刀の柄が、さくらの手から抜けた。
飛ばされた刀を追って、馬からさくらが飛ぶ。
空中で刀を掴み、一回転して地上で構える。
棒をさくらに突きつけたままターバンが聞く。
「防具の下は学生服なのか?何者だ」
その棒にリボンが巻き付いた。
竜をみたターバンが思わず口にした。
「その変な帽子とリボンスティック!!」
「変な帽子言うな!!」
竜がにやけた顔で煽る。
「あんた、相当強いらしいな!俺とやろうぜ」
ターバンから見える目だけが大きくなった。
「お前、よっちゃんの身内のものか」
さくらが刀を水平にした、一撃の構えのまま尋ねる。
「あなたが、山城明音さん?」
「明音を知っているのか?」
「違うのね。魔法少女と呼ばれていた誰かなの?」
そのリーダーは、号令を皆に伝えるため、音波のような声を発した。
「ここまでだ!!戻るぞ」
さくらと竜にも。
「お前たち、ついてこい!」
ターバンはハイヤーと言って、馬の脇を蹴り駆け出した。




