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よろしくねぇわ馬鹿野郎!!

いいわけないだろう。馬鹿かお前は。

頭ではそう思っているのに、身体が言うことをきかない。

ウィルフレッドは確信した瞳で、渇探流を射抜く。

やや乱暴に渇探流の顎を上向かせると———再び、口付けた。


「むっ……!!」


渇探流は、ウィルフレッドを押し返そうと、両手を上げる。しかし、その両手はウィルフレッドを突き飛ばすどころか———服をすがるように掴んで、引き寄せた。


「むっ……むぅ……!!」


違う。違う。こんなの、『俺の意思』じゃない。

しかし、我が物顔で口内に入ってくるウィルフレッドの舌には積極的に絡みにいくし、流し込まれる唾液も、嬉々として飲み込んでしまう。

———気持ち悪い!!

『気持ち良い』

———嫌だ!!

『好きだ』

———嫌いだ!!

『愛してる』

相反する感情がぐちゃぐちゃになって、頭がオーバーヒートを起こす。

ボロボロと涙をこぼす渇探流の頬を伝う雫を舐め取って、ウィルフレッドは渇探流をベッドに押し倒した。


「渇探流君———『いい』という、解釈で、よろしいですね?」


よろしくねぇわ馬鹿野郎!!


「……ああ……だい、じょうぶ……だ」


何も大丈夫じゃねぇぞ俺の身体!!おい!!ポンコツ!!動け俺の身体!!

ウィルフレッドがスッと、渇探流の病院着に手をかけた、その時———ウィルフレッドの胸ポケットから、スマホの着信音が鳴った。

ウィルフレッドはスマホを取り出し、その着信相手を見ると舌打ちをする。

どうやら、無視できない相手のようだった。


「渇探流君———少し、待っていて下さい……ね?」


ウィルフレッドは渇探流の額に口付けると———病室を出て行って、通話に出たようだった。

ウィルフレッドの姿が見えなくなった瞬間———渇探流は、素早く行動を起こした。

まず、治癒の呪文を使用し、自分の傷を全快させる。

そして素早くいつものセット(白衣・黒T・ジーパン・グロック19)を装備すると———病室を、飛び出した。


「…………へっ?」


病室の外へと出ると———そこは、ワンダーランドでした。


「……なんでだ!?」


渇探流は今出て来たばかりの病室を振り返るが———そこには、鬱蒼と続く、森が広がるばかりである。


「なんでだ!?」


悲鳴のような疑問符をあげる渇探流に対して応えたのは、のんびりとした猫の声だった。


「やあ、アリス。そんなに久しぶりでもないねぇ」

「……チェシャ猫!?俺をアリスと呼ぶな!!」


木の上にダランとした態度で寝こけていたのは、そんなに久しぶりでもないチェシャ猫であった。渇探流の叫びに、チェシャ猫はくああ、と、あくびをしながら、のんびりと話す。


「マッドハッターに、ずいぶんと気に入られたんだねぇ、アリス。だから君は、ここから逃げられないんだにやぁ」

「……ちょっと待て……ここから逃げ切れてなかったって、ことは……」


『———医里渇探流は、士道ウィルフレッドを愛している』


「……あれも……継続してたってことか……!?」

「あれがどれのことかわからないけどぉ、その言葉は、すっごくすっごく、重かったんだろうねぇ。マッドハッター以外の言葉が現実に残るなんて、よっぽどのことだよぉ?」

「ひええ……」


渇探流は、二重の意味で震えた。

しかし、やるべきことはただひとつ、このクソ傍迷惑な世界とオサラバするために———

そう思ったはずなのに。

———どこかで、『もう一度会える』と期待している自分がいた。


「……は?」


自分で、自分に引く。

とりあえず、ハートの女王ないしは、マッドハッターに会いに行かねばなるまい。

その前に、渇探流は自傷覚悟で、この言葉を連呼した。


「医里渇探流は士道ウィルフレッドを愛してない医里渇探流は士道ウィルフレッドを愛していない医里渇探流は士道ウィルフレッドを愛していない———ゲボッ」


案の定吐血したが、渇探流はスッと、頭の中に植え付けられた違和感が消え失せていくのを感じて———あの不快な『混ざり合った感情』が、ようやく消えたことを悟った。


「……はっ、やっとかよ」


渇探流は吐き捨てた。

白衣は血に塗れていたが、気分はやけに清々しかった。

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