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親友が死ぬ世界なんて認めない

「———死ぬ?」

「はい!私は今日、死ぬらしいです!!」


あっけらかんと言う寿々派に対して、菜月は深刻な表情で俯いた。

渇探流は額へと手を当てて———頭痛を抑えながらも、口を開く。


「それは、決定事項なのか?なんで死ぬんだ?」

「理由も、原因も様々だけれど……寿々派は今日、死ぬわ……」

「なぜわかる?」

「……未来が、見えるから……」

「そんなもの、捻じ曲げればいいだけだろう」


渇探流がそう言うと、菜月の表情が、激変した。眉を吊り上げ、口を大きく開き、目を細めて———叫ぶ。


「未来すら見えない人間が、無責任なこと言わないで!!」

「なっ、菜月ちゃん……!?おっ、落ち着いて……!!」


寿々派が菜月の腕に触れるが、ふーっ、ふーっ、と、菜月は肩で息をして、渇探流を睨みつけている。

渇探流は、両手を上げた。


「……デリカシーのない発言をしたことを、謝罪する」

「渇探流君は何も悪くありませんよ?」

「ウィルフレッド、とりあえず黙ってくれ」

「ええと……ええとぉ……!!」


オロオロ、と、寿々派は菜月と渇探流達を両方見やると、菜月の腕を取って、密着した。


「でっ、でも、菜月ちゃん、とりあえず今は時が止まってるから、私、今はまだ死なないよ!!……ねっ?」


その言葉を聞いて、菜月は———目元を緩めて、寿々派に笑いかけた。


「そうね、時が止まったんだもの……寿々派は、死なない……ずっと———このままで、いられる」

「……なあ、菜月とやら、この時間停止———引き起こしたのは、お前か?」


渇探流の問いに、菜月は呆気ないほど簡単に、首を縦に振った。


「そうよ」

「えっ、ええーーー!?そうだったの!?」

「……寿々派のため……か?」

「それ以外に……なんの理由があるの……?寿々派は、私の……親友だわ……親友が死ぬ世界なんて……認められない……!!」

「『蘇生屋』があるだろう。死んだとしても———」

「『蘇生屋』で生き返らせても、寿々派は死ぬのよ!!」


また、菜月は叫んだ。ボロボロと涙を流しながら、渇探流に訴えかける。


「何度も……!!何度も未来を見たわ……!!十回じゃない……百回でも足りない……!!全部同じ結末だった……!!蘇生屋に持って行っても……寿々派はすぐに死んじゃう……!!まるで、世界が『寿々派を殺せ』って、言ってるみたいに……!!」

「菜月ちゃん……」


わっ、と、しゃがみ込んで、菜月は泣いた。

渇探流は、ボリボリと頭をかく。

こういう手合いを相手にするのは、正直言って苦手だった。

理論よりも感情が先行する相手との討論ほど、無駄なものはない。


「あー……菜月。寿々派の意見は聞いたのか?その様子だと、聞いてなさそう……だが……」

「聞かれてません!!けど、菜月ちゃんがそうしたいっていうなら、私は———」

「寿々派。いっときの感情に流されるな、自分の頭で、ちゃんと、考えろ———お前は、この時間が止まった空間で、一生暮らしていきたいのか?」

「………………………それは………………」


寿々派は口ごもる———それが、答えだった。

菜月は、寿々派に縋り付く。


「寿々派?このまま時が進めば、貴方は死んじゃうのよ?死ぬって、どういうことか、本当にわかってるの?」

「……わっ、わかってる……つもりだよ」

「全然、わかってないわ……!!」


菜月は髪を振り乱して、寿々派へ掴み掛かる。


「死ぬって、痛いのよ。死ぬって、もう寿々派がいなくなるってことなのよ?もう、私と一緒に甘いものも食べられないし、私とお泊まりだってできないし、私の料理だって、もう食べられなくなるのよ?」

「うっ、うん……それは……嫌だけど……でも———菜月ちゃん」


寿々派は、静かに息を吸った。


「この、止まった世界で———生きてるって……ホントに……言えるのかな……?」


ひゅっ、と、今度は、菜月が息を呑んだ。


「答えが出たな」

「はい、鈴木菜月。時間停止を解除して下さい」

「いやよ……!!いや……!!絶対に……この時間は、動かさないわ……!!」


菜月はそう言いながら、自分の腕時計を押さえ込んだ。

———それか。

渇探流は、『秒針がまったく進んでいない時計』を見て、この時間停止のコアを、発見した。

しかし———無理矢理事を進める時ではない。


「寿々派は、どうしたい?」


そのための布石を、渇探流は打った。

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