カトゥール・ウェンライトはここにいる
「———なあ!これこの世界終わってねぇか!?終わってねぇか!?」
「大丈夫です、渇探流君———終わっているのは『一般人』であって、貴方ではありません」
「それもっとやばくねぇかあああぁぁぁあぁぁ!?」
街の中には化け物化け物化け物。
増えすぎた化け物がそこら中を跋扈しており、その中で———
「社長ーーー!」
「えっ、うわっ、俺召喚者ああぁぁぁぁぁ!!」
「あれっ、社長食われてね?」
出て来たビルの近くでそんな光景を見たが、そんな光景もバイクのスピードの前では、一瞬で通り過ぎて行った。
「とりあえず、渇探流君の名前を言いながら東京湾に突っ込みますねー」
「そこだけ聞くとシンプルにヤバいな」
「渇探流はーん!お金落として〜!」
「カトゥール、最後まで気を抜くなよ。死ぬぞ」
「黄船は死ね!!響は忠告ありがとうだが、最後が不穏!!」
二台のバイクは、化け物達の間をすり抜けて、東京湾へと走り出す。真面目に車で行けば約30分。しかしそこを———猛スピードのバイクで走ったら、どうなるか。
半分の時間で、東京湾へと到着した。
「渇探流はん、愛しとうで〜」
「お前は俺の金を愛してるんだろ!?」
「渇探流君、愛してます」
「うるせぇウィルフレッドは輪廻転生して出直せ!!」
「カトゥール、無理はするなよ」
「俺の味方はお前だけだ響……!!」
そんなやりとりをしながら、着きました東京湾。
背後には化け物の群れ、全貌は———海。
「行きますよ、渇探流君」
「行きたくね〜!!特にお前といっしょなのが嫌だ〜!!」
「来世も来来世も、ずっと一緒ですよ渇探流君」
「死刑宣告なんだわーーー!!」
そんな気の抜けるやりとりをしながら———バイクは、飛んだ。
地面が、アスファルトから青い海面へと変わる。
猛スピードで海へ突っ込んで行ったバイクは———かなりの沖へと、落下した。
ドボン、と、海へ着水する。
重いバイクは、直ぐに深海へと、飲み込まれて行った。
その時———トラブルが起こる。
渇探流の白衣が、バイクに巻き込まれた。
ただでさえ自由の効かない海の中、渇探流はなんとか白衣を脱ごうと奮闘し———ウィルフレッドが、サバイバルナイフで白衣を切って、渇探流を浮上させた。
「———ぶはっ!!」
ウィルフレッドに抱えられたまま、渇探流は呼吸をする。
———あっ、危なかった。
ウィルフレッドがいなかったら、あのまま———
背筋に悪寒が走るが、ウィルフレッドに抱きしめられて、別の意味での悪寒が走った。
「ウィルフレッド———」
渇探流が、離せと言おうとした時、口を、口で塞がれた。
咄嗟に手がグロック19に伸びるが———ここは、海だ。拳銃は、使えない。
舌が、侵入してくる。
渇探流は抵抗する術がないまま———ウィルフレッドに、しばらくの間、好き勝手にされた。
しかし、そこで諦めないのが渇探流である。
口内で暴れる舌に、思いっきり歯を立ててやる。
血の味がしたが、それでも舌は引っ込められない。
渇探流は———それならばと、ウィルフレッドを海へと引きずりこんだ。
流石のウィルフレッドも、呼吸ができなければ口を離すしかない。
再度、今度は二人離れたまま海面へと浮上すると———そこは、地獄絵図だった。
化け物どもが、めっちゃくちゃ海へと落ちては、蒸発している。
「渇探流はん!?今士道はんとキスしてはりませんでしたか!?渇探流はん!?」
「カトゥールカトゥールカトゥールカトゥールカトゥールカトゥールカトゥール」
化け物どもから少し離れた位置で、黄船と響がそれぞれ、渇探流の名前を呼んでいる。
「ウィルフレッド———俺は、お前が許せない」
「渇探流君……?」
「俺は、唯一無二の、カトゥール・ウェンライト———医里、渇探流だ。『その他』と同じ扱いなど、許せない」
「……でも……渇探流君は……」
「鈍いな」
渇探流は、胡乱げな瞳で、ウィルフレッドを睨みつけた。
「『他』と、『俺』を区別できた時———その時は、考えてやるって、言ってんだよ、ウィル」
「………???……どういう、意味ですか……?」
「まあ、この調子じゃあ、そんな日は一生こねぇだろうな」
さざなみが、二人の間を割く。
———渇探流は、大声を張り上げた。
「カトゥール・ウェンライト———医里渇探流は、ここにいるぞーーー!!」
それは、存在証明以外の、なにものでもなかった。




