東京湾に行こうぜ!!
「響ーーー!!黄船ーーー!!」
「渇探流はん、何か見つけはりました?」
「カトゥール、身体は無事か!?」
「いやむしろお前らが無事か!?」
渇探流は血まみれで出て来た響と、埃まみれで出て来た黄船に対して、素でツッコミを入れてしまった。
とりあえず血まみれになっている響に渇探流は近づき、身体の状態を診る。
これでも医者の家系で、一時期は医者を目指していたこともある身だ。専門家にはもちろん負けるが、わかりやすい異常ぐらいは見抜ける。
「ああ、ちょっと頭をやられてな。出血量は派手だが、動けはするさ」
「頭!?ちょっ、ちょっと診せてみろ!!」
渇探流は響の頭を覗き込み———本当に皮膚が裂けて、出血しているだけのようで、ホッとした。骨までは衝撃がいっていなかったらしい。
「本当に皮膚が裂けただけみたいだが———この件が終わったらすぐに、病院行けよ」
「わかった。ふふっ、カトゥールは———心配性なんだな」
「はっ?心配性??俺が??」
「……全員にじゃないところも、ポイントが高いぞ」
「なんのポイントだ!?」
「ちょお、渇探流はん、うちのことも心配してやー!」
「あっ、ああ……黄船、お前はどうしたんだ?埃まみれで」
「それが聞いてーやー。光る先を見に行ってみたらぁ、こんなんがありましてぇ」
そう言って、黄船は五芒星の真ん中に、何か書かれたペンダントを見せる。渇探流は興味深そうにそのペンダントを見るが、渇探流の知識の中には、こんなものの情報は無かった。
「なんだ?これ」
「これは———いや、悪いものじゃない」
「響?」
「カトゥールが狙われているんなら、カトゥールがつけるべきだろう」
「もー、これ取ろうとしたら、物がたくさん落ちて来てん。最悪でしたわ」
「まあ、黄船に怪我がないようでよかった。響は?何か情報はあったか?」
「俺の方はハズレだった。召喚用の魔法陣と———ブービートラップがあっただけだったよ」
「そうか、俺のところは収穫があったぞ!!これを見てくれ!!」
そう言って、渇探流はウィルフレッドにしたのと同じように、バッと、本を広げて見せた。
二人の視線が、文字を追う。
「———海水、でっか?」
「ふむ、先ほど渡らせたのは川だったから、効果がなかったのか」
「そうみたいなんだ!!だから———海、行こうぜ!!海!!」
「海……うっ、閉鎖的な村……嫌な思い出が……!!」
「海と言っても、東京湾で充分だろう。こうなると———」
「———また、カーチェイス、ですね」
ウィルフレッドが、するりと会話に入ってきた。
渇探流は若干警戒したが、ウィルフレッドは淡々と、話を進める。
「渇探流君の名前を呼べば、あの化け物が食いつくのは実証済みです。渇探流君を海まで運んで———」
ここで、ウィルフレッドは少し躊躇った後———言い切った。
「海へ放り投げるのが、最適解かと」
「おおいウィルフレッド!?お前、お前えぇぇ!!」
渇探流はガクガクとウィルフレッドの肩を掴んで揺するが、ウィルフレッドは申し訳なさそうに———しかし、渇探流から視線は逸らさずに、言い切った。
「『貴方なら』、同じ結論に達しますよ」
「ぐう……!!」
渇探流は謎の敗北感に腹が立ったが、しかし、ウィルフレッドが言っていることは理にかなっている、ということは、理解できていた。
「俺は……バイクは運転できねぇぞ!?」
「そこは大丈夫です、渇探流君。私と一緒に死にましょう?」
「助けてくれ響!黄船!!サイコパスと心中させられる!!」
「頑張れ、カトゥール」
「こればっかりはしょうがありませんなぁ」
二人の実質の肯定に、渇探流は叫んだ。
「こっ、このっ……!!裏切り者ーーー!!」
その、言葉と共に。
ドォン。
と、音が鳴った。
「あきまへん……!!」
「化け物が追いついて来た!!バイク拾って、東京湾に行くぞ!?カトゥール!!」
「うぉっ、引っ張るな響!!」
渇探流達は一階へ急いで降りて行き、バイクを拾い———東京湾へと、走り出した。
ウィルフレッドの後ろに渇探流、黄船の後ろに響、といった陣形だ。
これは、これは———
「ウィルフレッドと心中とか、死んでも嫌だぞ俺はああああああああぁぁぁぁ」
渇探流はそう叫んだが、爆音と、バイクの音と、人々の囃し立てる音、諸々によって、誰にもその言葉は、届くことはなかった。
———クライマックスだ!!




