カーチェイス・オブ・ザ・デッド
なんか知らんが、化け物が増えた。
「なんで増えた!?なんでいきなり化け物が増えた!?」
「わからん」
「なんででっしゃろ」
「なんでですかねぇ」
「思考停止チームかよ!!考えられるのは教団の干渉か———また理不尽クソルールか!?」
「それならば、私のせいかもしれません」
「マジかよウィルフレッド最悪だな死ね!!」
「渇探流君の殺意高すぎません?泣いて良いですか?」
「そんなことより原因を教えろ戦犯!!」
「いえ、さっき———名前を呼ばれて、ついバックミラー越しに化け物と5秒以上、見つめあってしまいまして」
「……見た秒数で増えてる……ってことか!?ふざけんなこの仕様!!ってかバックミラー越しでもカウントかよ!?運転中詰みじゃねぇか!!いや、5秒以上見つめ合わなければいいのか……?というかウィルフレッド、お前よくアレと5秒も見つめ合えたな引くわ……」
「褒められたら愛しか出て来ませんが」
「お前の脳みそ花畑か???」
そんでやっぱりお前が戦犯じゃねぇか!!と、渇探流はガクガクとウィルフレッドの肩を揺すった。
「あかんで渇探流はん、あの化け物、二体で街の住人パクツイとりますわ」
「うむ、異形も人間も関係ないみたいだな」
「響は頼むから運転に集中してくれ!!」
「しかし渇探流———問題が起こった」
「なんだ!?何が起こった!?」
響は———とても深刻に、こう言った。
「———渋滞だ」
「詰んだ!!追いつかれるぞ!?そしたら俺は生贄確定だ!!」
「ここはできる男、ウィルフレッドの出番でしょう」
「嫌な予感しかしないが時間がない!!頼むぞ公式チート野郎!!」
「バイクに勝る機動力なんて、ないんですよ」
そう言って、ウィルフレッドはドヤ顔でスマホを操作する。ついでに黄船も同じように操作をするのを見て———響も、スマホを操作し始めた。
すると、3台分のバイクが、無人運転で『出現した』。
「出たな異世界の謎技術!!」
「よし、渇探流———誰のバイクに乗る?」
「もちろん私ですよね、渇探流君。あっちにもこっちにも、テクニックには自信があります」
「もちろんうちでっしゃろ?金次第でなあんでもできる賀茂黄船に任せとき!」
「響!!頼む!!」
「よし、飛ばすぞカトゥール!!」
渇探流は一瞬の迷いも見せず、響のバイクの後ろに乗った。
そのまま走り去る二人をしばらくウィルフレッドと黄船は見つめて———後ろから轟音と共に追いかけてくる化け物に、八つ当たり気味にアサルトライフルと拳銃をぶっぱなしてから、バイクに乗り込んだ。
ちなみに、銃は全く効いていない様子だった。
「ちなみに響!!バイクの腕に自信は!?」
「ふっ、任せとけカトゥール———俺は、優秀な刑事だ」
「答えになってないんだが!?」
渇探流は一瞬選択をミスったかと思ったが、そこは流石何様響。車の間をスイスイと滑らかに移動して、怪物との距離を離していく。
二体の怪物は———渋滞にハマってる車をパックンチョするのに忙しいらしく、追跡する動きが鈍っていた。本当にこれを召喚した教団はもうちょっとちゃんとやるべきだったと思う。
「よし!このまま撒いちまえば———ダメなんだった!!コイツら教団まで引っ張っていかねぇとダメなんだった!!」
「何か案はあるか?カトゥール」
「よし!全員俺の名前を呼べ!!めっちゃ連呼しろ!!」
「カトゥールカトゥールカトゥールカトゥール」
「渇探流君渇探流君渇探流君渇探流君渇探流君渇探流君」
「渇探流はん渇探流はん渇探流はん渇探流はん渇探流はん」
「こええよ!!念仏か!?なんでしかも全員揃ってるんだよこええよ!!リズムまで一緒かよ!?」
「言えいうたのは渇探流はんでっせ!?」
黄船のツッコミが入る中———化け物二体が、ピタリと動きを止めた。
かと思ったら———ものすごいスピードで、渇探流目掛けて走って来た。
「そこまで注目しろとは言ってねええぇぇぇ!!」
ヒュー!!と、道路にいる住人たちが口笛を吹き、手を叩いて囃し立てる。そんな住人たちを弾き飛ばしながら、化け物は渇探流に向かって、一直線にうにょってきた。
そんな中、四人はバイクに乗って疾走した。
「道路バッキバキだし住人轢かれまくってるが大丈夫か!?」
「異形はんの謎技術があるさかい!!金はかかりますが大丈夫でっせ!!金はかかりますが!!」
「一周回ってブレないお前のこと、カッケェと思っちまいそうだぜ……」
「惚れまっか!?それは惚れた言うことでええどすか!?」
「何を言ってるのかまるでわからない」
「渇探流君がお前に惚れることなど、たとえ宇宙が崩壊しようがありえない」
「はーーー?渇探流はんに惚れられるどころか、嫌われとるザコがなんか言うとりますなあー!?」
「頼むからもうこれ以上名前を言うなお前ら!!ターゲットはもう確実に俺になってるんだよおおぉぉぉぉ!!」
渇探流は、ビュンビュンと過ぎ去りゆく景色の中、必死に声を張り上げた。
化け物二体は———何故か、三体に増えていた。
「誰が見やがったああああ!?増えたぞ!?」
渇探流のその言葉に、全員が首を横に振った。
「———あっ、これ、住人もカウントされんのか?」
渇探流のその言葉を皮切りに———化け物が三体、四体、と、ねずみ算式に、増えていく。
「本気で世界崩壊するぞこれえぇぇぇぇ!!」
渇探流は叫びながら、必死に響にしがみついた。




