「止まっても、死ぬんだよなぁ......!」
「このままじゃあ教団に着く前に世界が滅ぶぞ響いいぃぃぃぃぃ!!」
「大丈夫だカトゥール!!この先の橋を渡ったら教団はすぐそこだ!!」
響はそう言ってアクセルを吹かすが———その橋、真ん中からポッキリ、折れてました。
「詰んだ!!第三部完!!」
「いいや!まだ詰んでいないぞカトゥール———キッチリ俺に、しがみついておけ!!」
「なっ、なんだ!?何するつもりだ響!?」
「チッ……渇探流君に合法的に抱きつかれるとか……妬ましい」
「男の嫉妬は醜いで〜?士道はん」
「同じ目で見ていて何を言う」
「はっ?」
「はい?」
「シリアスシーンにギャグを挟むな!!お前らも響に続け!!」
響は、体全体を前に倒した。
空気抵抗を極限まで減らして、真ん中が崩れた橋に向かって、猛スピードで突っ込んでいく。
渇探流は心臓がバクバクと脈打った。
こいつ、やるつもりだ。
失敗したら、死———
だが。
「止まっても、死ぬんだよなぁ……!!」
もう、何体かも数え切れない化け物が、うにょうにょとしながら渇探流を追いかけて来る。
そんな中、響が操るバイクは最大音量を響かせて橋へと突っ込み———飛んだ。
「……………っ!!」
胃の腑がひっくり返るような、浮遊感。
渇探流は風によって乾いた目に涙が滲み、景色もぼやけた。
響のバイクは、グングンと向こう岸の橋へと近づいていき———前輪だけ、向こう岸に引っかかった。
「あっ———」
グラリ、と、車体が後ろへ———川へと、傾く。
———死。
そんな二人を———
神がかり的なテクニックで横づけした二台のバイクから、二人の手が伸びた。
「やはり私の後ろに乗せるべきでした!!」
ウィルフレッドの手が、渇探流を。
「堪忍やで渇探流はん!!この事件のお支払い、まだでっせ!?」
黄船の手が、響を。
二人は引っ掴んだ相手を、そのまま己のバイクの後ろへと乗せる。
———ボチャン。
川へ、バイクが一台、落っこちた。
「二人分の重さでは、やはり無理があったな」
「あんさん余裕ぶっこいてますなあ!?一応助けたさかい、現金は払ってもらいますえ!?」
「まかせろ、経費で落とす」
「渇探流君、やはり私の後ろが、貴方の居場所です」
「助かりはした、ありがとう。だがその言葉は全力で否定させてもらう」
わー!と、追って来た化け物たちが、ボチャボチャと川へ落ちていく。
しばらくは持ちそうかと思った、次の瞬間———川へと沈んだ分身達を踏み台にして、他の分体たちがワラワラと川を越え始めた。
———それだけ、数が増えているということだ。
「おいいいい!!ホントにこれ間に合うのか響いいいぃぃぃぃ!!」
半泣きで渇探流は叫ぶが、当の響はケロリとしている。
「教団に行けば、退散の資料もあるだろ、たぶん」
「本当にあるのか!?都合よくあるのかそんなもん!?」
「もちろんだ、カトゥール」
響は、ニヤリと笑った。
「クリアできないゲームは、ゲームとして終わっている———俺たちは『探索者』だ。必ず道はある」
「その探索者ってのがあまり理解できてねぇんだがあああああぁぁぁ!!」
渇探流は叫ぶが———バイクは止まらない。
響のナビゲートのもと、教団本部は———新宿のとあるビルの地下にあるとのことだった。
というわけで、四人はバイクで新宿のとあるビルに、『ダイナミックお邪魔します』をかました。
何人か弾き飛ばした気がするが、そんな瑣末なことを気にしている時間はない。
「怪しい場所はどこだ!?社長室とかか!?」
「いや、どう考えても地下室だろうカトゥール、地下へと行く階段を探して———」
「……しょうがないですね」
「……ウィルフレッド?」
ウィルフレッドは、懐から方位磁石を取り出した。
「渇探流君、この事件が終わったら、正気度が回復するお寿司屋さんに行きましょうね」
「フラグを立てるな!!」
フラグ……?とウィルフレッドは首を傾げながらも、方位磁石を握りしめる。
「うぐっ……」
すると、みるみるうちにウィルフレッドの顔色が悪くなり、それに呼応するように、方位磁石が———輝き出した。
「アーティファクトか」
「貴重なもん、持ってはりますなあ」
「……??………???」
響と黄船は訳知り顔で頷いているが、渇探流は何が何やらわからない。
とりあえず、ウィルフレッドの体調が悪くなっていっている———ということは理解できたが、それでこの状況が好転するとは、とても———
その、瞬間。
その方位磁石から、光が三方向へと伸びていった。
「いや、誘導が露骨過ぎるだろ!!しかも三方向って、結局どこに行けばいいんだよ!!」
「全部だな」
「全部です」
「全部や」
「地獄か!?———いや、最初から地獄だったわ!!」
渇探流は頭を抱えて、叫んだ。




