三回目までは大丈夫(※別世界線は含みません)
「……いらっしゃいませー」
——満員御礼の、廃遊園地で。
……なんで俺、いつか見た廃遊園地のスタッフとして、働いてんだ?
何故か、渇探流は———誰もこないはずの廃遊園地で、満員御礼の中、受付スタッフとして働いていた。
「大人2枚、子供2枚でお願いします」
「あっ、はい。楽しんでくださいね———」
———じゃ、ねぇんだわ!!
渇探流はいつの間にか被らされていた帽子を掴み、地面へと叩きつけた。
『ちょっとちょっと〜⭐︎夢を売るしょうば……ゴホンッ。夢いっぱいの遊園地のスタッフが、そんなことしちゃダメでしょ⭐︎』
「クソ兎……!!話がちげぇじゃねぇか!!3回目までは大丈夫なんだろ!?」
『えっ?うん、そうだよ?』
「なら、俺はまだあと一回『大丈夫な』はずだ!!なんでアウト判定喰らってんだよ!?」
『アハハ⭐︎だって君———ここに来るの、二回目だもん』
「んっ……?どういうことだ?」
『———そのままの意味だよ、別世界線の僕』
「ひっ……!?まっ、まさか———!!」
突如出てきた『以前の自分』に、渇探流は血の気が下がる。遊園地スタッフの制服を着ている『亡霊』は、ニッコリと笑うと、ペコリと頭を下げた。
『一回目は、僕が使っちゃってるんだ———だから、君は三回目を、使い切ったことになる』
「以前の自分の分もカウントされるとか聞いてねぇぞ!?」
『アハ⭐︎最初に説明したじゃない⭐︎三回目までは大丈夫———』
「———ちょっと待て。三回目『まで』は、大丈夫なんだよな?」
『………?そうだよ?⭐︎』
「四回目はアウトだが、俺はまだ三回目を使い切っただけの状態———つまり、まだセーフだろ!!」
『えっ……ええ〜……⭐︎』
「説明の仕方が悪い!!以上以下は回数を含むが、未満は含まれない———プライマリースクールで習う内容だ!!だからこの措置は無効だ!!無効!!」
『えっ……ええ〜……⭐︎』
「すみません、大人2枚で」
「あっ、はい。楽しんでくださいね」
楽しげな笑い声が横を通り過ぎる中、デッドちゃんは、しばらく考え込み———ポンッと音が鳴ると、『飯島晶』になった。
「……そのゴネが通るとなると……色んな前提が崩れてしまいます……ちょっと、上のものと相談して来ますね」
「あっ、おい!!」
「すみません、大人と子供1枚ずつで」
「あっ、はい。楽しんでくださいね」
『———意外と、楽しんでない?別世界線の僕』
「何も楽しくねぇ!!お前のせいで俺の完璧な計算が狂ったんだぞ!?責任取りやがれ『亡霊』!!」
渇探流がそう言うと、別世界線の『亡霊』は、困ったように笑った。
「……おい……士道……?士道……!?何があった……!?」
「渇探流君……渇探流君……渇探流君……」
「えっ、ちょ……響……この人、大丈夫……?血まみれだし、正気度直葬されてない……?」
刑事組は、ウィルフレッドと合流した。
ウィルフレッドは首のない死体と、眠っているようにしか見えない死体、二つの死体を抱えながら、虚空を見つめて、ひたすらに渇探流の名前を呼んでいる。
「士道……?おい、士道?大丈夫———では、ないようだが……カトゥールはどうしたんだ?……死んだのか?」
その言葉で、ウィルフレッドの瞳に、殺意が灯った。
「死んでません……!!渇探流君は、死んでなんかいません……!!三回目までは、大丈夫なはずなんです……!!」
「……士道……」
『あの』士道ウィルフレッドが、身も世もなく泣き叫ぶ姿は、正直、くるものがあった。それに、響だって渇探流が『死んだ』なんて、信じたくない。
唯一、渇探流を知らない貫太郎だけは、オロオロとしている。
響はとりあえず、ウィルフレッドを立ち上がらせようとして———その時、『全員』のスマホから。ザザッと、ノイズ音が聞こえてきた。
『……れ……こえ……ウィ……』
「渇探流君の声だ……!!」
「はっ?」
「えっ?」
突然の声に刑事二人組は困惑の声をあげたが、ウィルフレッドだけは、血で滑る手を懸命に動かして、スマホを取り出した。そこには、何故か遊園地スタッフのような服を着ている———『医里渇探流』が、映し出されていた。
「渇探流君……!!渇探流君!!」
『……こえ……はい、……園地……え……』
「渇探流君?何が言いたいんですか?無事なんですか?そこどこですか?渇探流君……渇探流君……!!」
ウィルフレッドが声をかける、その画面の中———渇探流の後ろに、『首無しの渇探流』が映り込んできて、ウィルフレッドの呼吸が止まった。
「渇探流君……!!後ろを見ないで……!!」
しかし、無情にも———ブツリと、映像は途切れた。
「…………………」
「これは……どういうことだ?」
「いっ、今の……医里渇探流、だよね……?」
「渇探流君が、存在している———確かに、渇探流君だった。私には……わかる。彼が困惑してる時の『クセ』が、出ていました」
ポツリとウィルフレッドは呟くと、ドサドサと、後生大事に抱えていた二つの死体を放り出し、立ち上がった。
その時、血の海に———廃遊園地の姿が、一瞬だけ、映り込む。
それを見て、ウィルフレッドは叫んだ。
「———遊園地、です……!!この近くに……廃遊園地があるか、探して下さい……!!」
「あの、廃遊園地、か!?いやっ、でも、カトゥールがいた場所、ずいぶんと賑やかだったぞ!?」
「なんかもうよくわかんない」
ただ一人貫太郎は置いてけぼりのまま、それでもスマホをスワイプした。
「やはり……渇探流君を選ぶべきだった……!!次は、絶対に間違えない……!!あんな、選択をした私は……愚かだった……!!」
血まみれの爪をガシリと噛んで、ウィルフレッドは唸った。
「———なあ、これ。音声……ちゃんと届いてたか……?」
『うーん。時空というか、次元が違うからなあ。わからないや』
「わからないじゃ困るんだが!?」
渇探流はハンディカメラを持った亡霊にキレたが、亡霊は困ったように笑うだけであった。




