楽しいフィールドワークのはずが、護衛に攻撃された
「———で?亡霊。その『核』とやらは一体、どこにあるんだ?」
『ごめん……言えない……』
「なんで言えないんだ!!この役立たずめ!!」
『ごっ、ごめんなさい……!!ルールに抵触しちゃうから……!!言えないの……!!』
ビャッ!!と、亡霊は飛び上がると、遊具の隙間に隠れてしまった。
その様を通りすがる人達は珍しそうに見たり、または遊園地のアトラクションに夢中でまるで気にしてなかったりと、賑やかに騒がしい。
渇探流は舌打ちをしながらも、まるで猫を呼び寄せるように亡霊を手招く。
恐る恐る出てきた亡霊の首根っこを掴まえると、彼は若干ワクワクとしながら、遊園地探索へと乗り出した。
「それじゃあ、まずはフィールドワークだな!!とりあえず前に行った順番で、メリーゴーランドから行ってみるか!!」
『うっ、うん……行かない方がいいかもだけど……スタンプラリーに出てた遊具は重要施設だし……いいと思う……あっ、あと』
「ん?」
『呪文、あげるね』
「あっ」
そう言われた時には———頭の中に『押し込まれる感覚』がした。
まるで、誰かの記憶が———混ざるような。
「———あの遊園地と構造が近い遊園地は———ここだ、士道」
「なんで遊園地なの……?」
「ここに……ここに渇探流君が———いますね。います」
ウィルフレッド達は、東京都の某所にある、廃遊園地へとやって来ていた。
そこは都会の喧騒とは全く外れた、正に『忘れ去られた場所として』、静かに佇んでいる。
ウィルフレッドは、車から降りるや否や、施錠された廃遊園地の入口を蹴り壊した。
「おい!?ウィルフレッド!!やり過ぎ———」
響が嗜めようとした時、ザザッと、再びスマホにノイズが走る。
『で……メリーゴーランド……』
「……メリーゴーランドって……『あの』メリーゴーランド、か……?」
「行くしかないでしょう。私は止められても行きますよ」
「おいおいおい……!!まだ一人禁止ルールは生きてるんだぞ……!?暴走するな士道!!」
「渇探流君に早く会うためです。早く会わないと———私が保たない」
「士道さんって……かなり……ヤバい人……?」
貫太郎はウィルフレッドにも廃遊園地にも怯えながら、一同はメリーゴーランドへと向かうのであった。
「……普通に、楽しそうなメリーゴーランドだな……」
『うっ、うん……見た目はね……』
渇探流と亡霊は、普通のメリーゴーランドに到着していた。ちなみに、亡霊からもらった呪文は『夢見』とかいう、今この状況ではクソの役にも立たない呪文だったので内容は割愛する。
キャッキャと楽しそうに乗るカップルに、親子連れ、一見して平和なメリーゴーランドであるが———と、渇探流が見ていると———一瞬。
大人から、子供まで、『ある一点』をジイっと、見つめだした。
「……なん……?」
渇探流がその視線を辿ると———そこには、半透明になった、ウィルフレッド、響、と———知らない誰か。
「はっ……?」
『……うん、時間……あんまり、ないかも……』
亡霊は、心配気にそう言った。
「渇探流君……!!」
士道はメリーゴーランドに着いた途端、半透明の渇探流を発見して、走り出した。
しかし———みっしりと、メリーゴーランドに詰まった『人影』の目が、自分を見ていることに気がつく。
それでも、彼の足は止まらなかった。
「渇探流く———」
その、伸ばされた手の先で、『渇探流』だったものは、『黒い人影』に成り替わり、ケタケタと、笑い出す。
『ゲゲゲゲゲゲゲゲゲ!!』
「———このっ……!!残骸が……!!」
「士道!?ちょっ、まっ———」
ウィルフレッドは『以前のように』、右手を振るった。
———ガリッ。
「……えっ……?」
人影から出た『人間の血』に、ウィルフレッドは、血の気が下がった。
「かっ……渇探流……君……?ちがっ……これは……違う……!!違うんです……!!」
「いっ……つう……!!」
渇探流は、己の腕から流れる血液を見て、青ざめた。
———ウィルフレッドに、攻撃された。
それは、思ったよりも、かなりの衝撃で。
渇探流は泣きそうになりながらも、破けた服を腕に巻いて、応急処置をした。
「ウィルフレッド……?……なんで、だよ……」
『大丈夫?別世界線の僕』
その、瞬間。メリーゴーランドに乗っている『全員』が、大笑いをし始めた。
まるで、楽しいショーを見ているかのように。老若男女問わず、おかしくてたまらないと、涙を流しながら笑っている。
渇探流はそれを見て、歯を食いしばった。
ムカつく。
———こんな世界、ぶっ壊す。
渇探流は笑う群衆を睨みつけてから、親指を立てて、下へと向ける。
———ウィルフレッドが、壊れる前に。
『……行こう……別世界線の僕……』
「……ああ、行こう……次は———観覧車だ」
———突然、メリーゴーランドにみっしりと『詰まって』いた人影達が、爆笑し出した。
不愉快な音響が、静かな廃遊園地に響いて行く。
「ぬぁっ、なに!?なんなの!?何が起こったの!?」
「下手に動くな、貫太郎———死ぬぞ」
「うう……この世界って、本当にこんなんばっか……!!」
『観覧車』
スマホからは、静かに、その声だけが聞こえた。
響は、立ち尽くしているウィルフレッドの肩を叩く。
「士道。ショックなのはわかるが———」
「渇探流君を……傷つけてしまいました……」
「……それはまだ、わからんだろう」
「私にはわかります……信用を失ったら……もう……」
「ウィルフレッド……」
「どうやって……取り戻しましょう……」
「笑い声は……ガン無視なの……?」
貫太郎の震える声は、笑い声にかき消された。
———笑い声だけが、いつまでも止まらなかった。




