表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/68

価値観バトルロワイヤル———金か、家族か、仲間か

「———あっ、本当だ。皆吉愛生、また生き返ってる……はぁ、また殺すのかよ。めんどくせぇな」


コーラを飲み干して、赤井紅あかい こうは、舌打ちした。

確か、蘇生代って3000万ぐらいするんだろ?一回死ぬだけで家一軒分とか、馬鹿かよ。これだから金持ちは。

赤井はバイクに跨がると、エンジンを吹かそうとして———その瞬間。

首筋に、冷たい刃が触れた。


「……ああ?誰だ?」

「みぃんな大好き、お金ぇも大好き、賀茂黄船かも きふねどす〜」

「賀茂……!?なんで、お前が……!?」

「なんでってぇ。そりゃあ、依頼どすからぁ」

「依頼ぃ?誰からのだよ」

「そりゃ、この状況から推測したらぁ、普通の人なら一発でわかりまっせ?———ああ、君ぃは頭の回転鈍いさかい。わからんかぁ?」

「このっ……!!相変わらずムカつく守銭奴だなテメェは……!!それぐらいわかるわ!!えっと……えーっと……皆吉愛生を守りたい人物ってことだろ……?えーっと……」

「……ほんま……回転鈍いなぁ」

「———わかった!医里渇探流だ!」

「せいかい」


ニッコリと、賀茂黄船は笑った。

その笑みは、『仕事』の顔だった。


———時は、少しだけ遡る。


「———機器不良」

「はい……原因不明でして……申し訳ございませんが、しばらくお待ちください」


———渇探流は、眉を顰めた。

今現在、渇探流達は銀行の受付で賀茂黄船かも きふねに『送金』をする手続きで躓いていた。


「なんとかなりませんか?急いでるんです」

「すみません……只今全力で対処しておりますので……」

「……そう……ですか」


渇探流は『また青山の嫌がらせか?』と思いながらも、席についた。

ネットで手軽に送金出来ればよかったのだが、渇探流のスマホは全て死んでいる。

そして、この銀行の、システム不良。

———嫌がらせが、とことん徹底しているな。

はあ。と、ため息を吐いて、渇探流は足を組んだ。


「私が肩代わりいたしましょうか?」

「いい。お前に借りを作ると、何を要求されるかわからん」

「渇探流君のためでしたら、この身を投げうつ覚悟ですよ?」

「……やめてくれ」

「……渇探流君が、そう仰るのでしたら」


ウィルフレッドは、うっすらと微笑んだ。


「私が侵食しているようで、何よりです」

「キモい。侵食してない」

「ふふっ。そういうことにしておきましょうか」


———その時点で、もう全ては『手遅れ』だった。

そして、現在。


「はっ。お前、依頼遂行できてねぇじゃん?皆吉愛生は、既に一度『死んでる』ぜ?」

「はあ。それはうちのせいやありませんしぃ」

「……どういうことだぁ?」

「送金確認が取れへんかったさかい。やからぁ、うちのせいやなくて———渇探流はんが、送金遅かったせいやな!」

「……この、守銭奴が……よっ!」


紅は、重心をズラしてナイフの刃から少し距離を取ると、バイクに差していた金属バットを引き抜き、横薙ぎに振るった。


「おっとぉ。野蛮どすなぁ」

「ナイフ突きつけて来たやつが何言ってやがる!俺の邪魔すんなら、お前も殺す!!」

「ははあ。もうあんさん、詰んどりますのに?」

「———あっ?」

「あんさんの大事ぃな『家族』、人質に取らせてもろてます」


その一言で、紅の顔色がザッと青ざめた。


「……てめぇ……!!」

「いやー。弱点がわかりやすい相手ぇは、楽どすなあ———こんなふうに、すぅぐ攻略できる」

「家族に手を出したら……!!どんな手を使ってでも、テメェを殺す……!!」

「殺されても、蘇生屋に蘇生してもろたらええ。あんさんところと違ぅて、うちは『金』があるさかい」

「金の亡者が!!」

「世の中、金で買えんものはないんですわぁ。絆?友情?親愛?恋愛?———それ、何の足しになります?」

「生きる糧になるだろうが!!本当に寂しいやつだなテメェは!!」

「はて———寂しいっちゅうのは、懐事情の話でっか?あいにくうちは潤ってますんで、関係ありまへんなぁ」

「……この……!!」


紅が怒りに任せて、バットを振るおうとした時———不意に、二人のスマホが『ジャック』された。


『———ストップ。二人とも』

「青山輝!?」

「あらぁ、青山はんやないの」


青山輝は、合成音声で、淡々と話し始める。


『今回、医里渇探流の『壊し』は、成功してる。だから、赤井。無理に戦う必要はない。賀茂———いくら積まれた?その倍出そう。僕の陣営につかないか?』

「青山!?」

「あらぁ。魅力的ぃなお話でんなぁ」


倍、倍かぁ———と、黄船は口の中で転がしてから、ニンマリと笑った。


「ほな、一応聞きまひょか?……200億、ポンと払えまっか?」

『にっ……!?』

「その反応やと———無理そうやね」


青山の反応を見て、黄船は興味を失った。


「今回ぃの『医里渇探流』は、えらい話のわかる男やさかい。余程の金額積まへんと、うちは動きまへんえ?」

『……あいつも、なりふり構ってないな……』

「まあ?うちが依頼されたのは『皆吉愛生』を守ることどす。このまま手を引いてくれはるなら、深追いは、せぇへんよ?———赤井ぃの家族も、解放しましょ」

「……青山……!!俺は、降りるぞ!!家族が一番だ!!」

『……君ならそう言うだろうね、赤井。まあ、今回いい仕事してくれたから、報酬は支払うよ———で、賀茂』

「なんやぁ?」

『君は、医里渇探流側についたんだね?』

「ちょおっと誤解がありまんなぁ?うちは、お金ぇの味方や。お金払いのええ方に、うちはつきまっせ?」

『……そう。考えておくよ』


その言葉を残して、スマホから青山輝が、消えた。


「ほな、赤井はん。手を引いてくれまっか?」

「引く!引くから———家族を、返してくれ……!!」

「はいはいぃ。焦らせんといてやあ」


黄船はスマホを取り出し、部下へと連絡する。その様子をハラハラとした表情で見つめる赤井は———つい先ほどまで、『2回目の殺人』を企てていた人物と、同一人物だとは、とても思えなかった。


「……ウィルフレッド」

「はい、渇探流君」


ウィルフレッドに手を引かれながら、渇探流は帰路につく。その手は、弱く握り返されていた。


「お前は……壊されない……よな?」

「ええ。私は、壊れませんよ。渇探流君」


だから、安心してください。

そうのたまうウィルフレッドに、渇探流は複雑な心境を抱えながらも———とりあえずは、頷いておいた。


「……怖い、な……」


ポツリと呟かれた言葉は、雑踏に踏み散らされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ