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泣きながら肉片集めて蘇生屋に行ったら、おねぇがノリ軽すぎるんだが

「よーーう渇探流!!久しぶり———でもないな!!この間ぶり!!」

「愛生」


———生きている。

ホッと、渇探流は肩の力を抜いた。

それを見て、ウィルフレッドが眉をひそめる。

ここは、愛生の事務所兼、自宅だ。1階が事務所で2階が自宅になってるらしい。

そんな簡素な応接室に通されると、渇探流は真っ先に「最近、変わったことはないか?」と、愛生に聞いた。


「変わったこと?うーん。仕事で南の方へ行ったら神話事象に巻き込まれて死にそうになったぐらいかな?」

「よし、通常運転だな」

「だなー!!でさ、渇探流の依頼の方なんだけど———正直さ、芳しくない」

「……理由を聞いても?」

「バーストオーシャンが邪魔してくる」

「……やっぱりか」

「ネットはアイツらの独壇場だ。私は地道に足で情報を稼ぐしかないってことだな」

「愛生、危険を感じたらすぐにこの依頼から降りろ。もちろん報酬は支払う」


渇探流がそう言うと、愛生はキョトンとした表情をしたあと、豪快に笑った。


「アハハハ!乗り掛かった船からは降りない主義なんだ!ガチで命がやばかったら逃げるけど———まあ、期待しててよ!これでも伝手は色々持ってん———」


その時、外で、何かが加速した。

———だ。と言う声と、

ガラスが割れる音が、同時に響いた。


「なっ……!?」


そして、『それ』は、一瞬で行われた。

ガラスを割って、バイクが侵入してくる。

この時点で、渇探流はウィルフレッドの腕に抱え込まれた。

しかし、そのバイクは、愛生の方へ向かい———

そこだけ、スローモーションに見えた。

愛生の身体に、バイクが覆い被さり———

———グシャ。

肉と骨が、ありえない音を立てた。


「愛生……!!」


理解が追いつかない。

先程まで、笑って話してたじゃないか。

それなのに———


「渇探流君、こちらへ」


———皆吉愛生みなよし あおいは、引き潰されていた。


「えーっと……?うん、よーーーし!『壊れた』な!!」


愛生の『上』で笑うのは———先程の男。


「赤井……紅……!!」


渇探流は反射的に動こうとしたが、ウィルフレッドに引っ張られ、そのまま背後に回された。


「ウィルフレッド!!どけ!アイツの脳天ぶち抜いてやる!!」

「渇探流君の安全確保が最優先です」

「んじゃ!目的は果たしたし帰るわ!じゃーなぁ!!」


バイクはビチャリと愛生の血飛沫をあげると、そのまま本当に———いなくなった。


「くっ……愛生!!」


紅を追おうか一瞬迷い、しかし、渇探流は愛生の元へと駆け寄る『選択』をした。

そこには———既に、物言わぬ、肉塊。


「愛生……愛生?」


渇探流は、未だに現状を飲み込むことができずに、愛生の名を呼ぶ。

「伝手は色々持ってんだ」

そう言いながら、笑う愛生。

スピークイージーで、笑いながら酒を酌み交わした、愛生。


「なあ、愛生……愛生……返事、してくれよ……!!」


しかし———渇探流のその言葉に、返答はなかった。


「愛生……!!」


ハラハラと、渇探流の瞳から涙が出る。

渇探流は必死に愛生の肉片をかき集めながら———ずっと、このことを考えていた。

『蘇生屋』


「なあ……ウィルフレッド……蘇生屋の場所……知ってるか……?」

「はい、知っています」

「愛生を……そこに、連れて行く」

「渇探流君が、そこまでする必要はないかと」

「必要がない、だと……!?」


渇探流は、ウィルフレッドを睨みつけた。


「それを判断するのはお前じゃない。俺だ」

「……費用は3000万、かかりますが……」

「はした金だ。いくらでも払える」

「……後悔、しますよ。『蘇生』は、万能ではありません」

「それでも———」


渇探流は、愛生の肉片を集めながら、『選択』する。


「やらないよりは、よほどマシな、『選択』だ」

「……承知いたしました。では、なるべく多くの破片を集めて———行きましょう」


『蘇生屋』へ。


そして、愛生の破片を集めて向かった先が、蘇生屋『リバーシ』だった。

血まみれになりながら肉片を持って歩いていても、この世界の住人は誰も気にしなかった。チラリと視線を向けて、すぐ目を逸らす。そんな『些細な日常』の反応に、渇探流は戸惑った。

しかし、今は愛生の『蘇生』が、最優先だ。

怪しい占い館みたいな外観の扉を通り、ウィルフレッドの案内で奥へと進む。受付に———1人の男が、座っていた。


「あっら〜ん?ウィルちゃんじゃな〜い?どしたの?また『医里君』の蘇生?」

「いえ、今回は違います。この肉塊を、蘇生して下さい」

「あらぁ?ウィルちゃんが医里君以外の蘇生の依頼?めっっっずらしいわねぇ〜?」

「……違う。客はウィルフレッドじゃない。俺だ」

「あらぁ?貴方……人相は悪いけど……磨けば光るタイプね!?元は可愛いお顔してるじゃない!!」

「……ウィルフレッド」

「腕は確かです」


渇探流はウィルフレッドに視線をやったが、ふいと逸らされた。


「口座振り込みでいいか?銀行に寄ってくる時間がなかった」

「いいわよーん?っていうか……現金で払おうとしてたの……?旧時代的ねぇ……」

「ちょっとした事情があるんだ……それで、愛生は、蘇生出来そうか?」

「ん〜……パーツ、よし!鮮度、よし!完璧とまではいかないけれど、ちゃんと蘇生できるわよ!」

「そっ……そうか……!!そうか!!」


渇探流は、ようやっと見えた希望に、ただ喜んだ。

———それが、次の地獄の入り口だとは、知らずに。

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