お化け屋敷で俺だけ首なし死体に案内されてるんだが
「最後がお化け屋敷とか……嫌な予感しかしないんだが……?」
馬鹿の一つ覚えのように、渇探流はそう口走ったが———その予感は、正しかった。
目の前には『おっばけやしき〜!!』と書かれた看板と———どう見てもシャレになっていない、廃病院がある。
「その感覚は大事にした方がいいぞ、渇探流」
「それあっちの響にも言われたわ……」
「渇探流君は何が遭っても私が守りますんで、大丈夫ですよ」
「前科持ちは黙っててくれ」
「とても楽しいですよ、ここ」
晶は1人、ニコニコと皆を先導した。
「ホラーは大丈夫なんだが、ジャンプスケアが苦手なんだよな……」
「目と耳塞ぎましょうか?」
「それ逆に怖すぎるやつだからな!?ぜっったいにやるなよ!?いいか!?フリじゃねぇからな!?」
「わかりました。フリですね」
「機微がわからない男って嫌いだわ」
「ジャンプスケアとか最悪ですよねわかります」
「おい、バカップル。いいから入るぞ」
「バカップルって言うなって!!」
「……今初めて言ったが……?」
「さっきも言ってただろうが」
嫌な予感を引きずったまま、渇探流達はお化け屋敷の中へと入っていった。
———そうしたら受付に、首のないスーツ姿の———先ほど首を刎ねられたばかりの響(故人)がいて、渇探流は大絶叫をする羽目になった。
「ぎゃあああああああああ!!」
「渇探流君!?」
「どうした、カトゥール」
渇探流を心配する2人とは対照的に、晶は無言でニコニコと笑っている。
「そっ、そそそっ、そこっ、くっ、首のない———」
———響の、死体が。
その言葉が出てくる前に、2人から疑問の声が上がった。
「そこ?……ただの、受付ですが」
「カトゥール、流石に入り口でビビリ過ぎだろう」
「えっ……!?おっ、お前ら……これ……見えて……ねぇの……!?」
「「これ?」」
2人は渇探流が指差す方向を見て———バッチリと首なし死体が見えているはずだ———しかし、首を傾げた。
「……受付ですね」
「……だな、無人の受付だ。まあ……不気味に装飾はされてはいるが……そこまでビビるか……?」
———俺以外、見えてないってことぉ!?
渇探流は目の前が、一瞬真っ暗になった。
黙る渇探流に何を思ったか、2人の男はそっと渇探流の肩に手を置く。
「以前の渇探流君もホラー系は苦手でしたからね。本気で目と耳塞いでいてもいいんですよ?お運びします」
「カトゥール、無理はするな」
「無理があるんだわ!!」
渇探流はうごうごと動き出した首なし響に対して、なす術を持っていなかった。とりあえずここから離れようと2人の手を掴み、どんどん先へと歩いて行く。
すると———首なし響も共についてきて、渇探流は2度目の絶叫を上げた。
「本当何がしたいのお前ええぇぇぇぇ!!」
「渇探流君……」
「発狂か?精神分析をお待ちのお客様は……いないだろうな」
「渇探流君、大丈夫ですよ、私が居ます」
「そう言う次元じゃないんだわ!!」
渇探流達がそんな話をしていると、道が二手に分かれている場所に出た。
どちらに進む?と皆が思ったところで、響(故人)と、晶が動く。
「こちらがオススメですよ」
「…………………………」
晶は左の道を、響(故人)は、右の道を指し示している。
———これは……どうするべきだ??
「オススメと晶が言っているなら、こっちじゃないか?」
「どうでしょうね……その『オススメ』、本当に信じられます……?」
「うっ……あっ……」
響とウィルフレッドが相談し合う中、渇探流は別ベクトルで焦っていた。
首なし響が、『絶対にこっち!!』という動きをわしゃわしゃとしていて、2人の会話が耳に入ってこない。
歯車大回転並みの動きをしている響(故人)の主張に、渇探流は負けた。
「おっ……俺は……こっち、だと……思う……」
首なし響が指し示している方向を、渇探流も指差した。
「渇探流君がそう言うならそうしましょう」
「まあ、カトゥールがそう言うなら、信じよう……即死トラップは勘弁してくれよ……?」
「そうなんですか?こちらの方が楽しいのに」
晶は相変わらず、ニコニコと笑っている。
しかし、渇探流は選んだら、迷わない性格である。
「よし———行くぞ」
と言って進んだ先は、地獄でした。
比喩なしに。
「八寒地獄と八熱地獄とか、ガチの地獄出すなああああああ!!」
渇探流は極寒の寒さと、その逆の灼熱の熱さに対して全くもって正当なる主張をした。
———でもまあ、理不尽なのが地獄なわけで。
本気で凍傷と火傷を交互に負いながら、渇探流達は満身創痍で、地獄ゾーンを抜け切った。
「うっ……嘘つき……嘘つきぃ……」
全身を覆う火傷や凍傷に耐えながら、渇探流は首なし響に恨みつらみを訴える。
しかし、首なし響は『これでよし!!』と言わんばかりに、親指を立ててきやがった。
渇探流はそんな響(故人)に中指を立てながら、ウィルフレッドと響と、晶に謝罪する。
「すまん……判断、ミスった……」
「大丈夫ですよ、渇探流君」
「そうだぞ渇探流。傷は時間が経てば治るが、失った正気は取り戻せん。身体にくるダメージ系で良かったじゃないか」
「…………そう、か………?」
渇探流は罪悪感から、視線を下にさげた。そうしたら、首なし響が視界にスライディングしてきて、『どんまい』という、やたらと達筆な習字を見せて来たので、純粋に殺意が湧いた。
「……ほら、次の分岐ですよ。俺のオススメは、こちらです」
今度の分岐も、左右二つに分かれていた。
晶は右を。
響(故人)は左を。
それぞれ、示してくる。
「…………どうしよう」
渇探流は、迷子になった子供のような声を出してしまった。




