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トンネルで首が飛ぶジェットコースターとか聞いてないんだが

「———外れねぇ」


渇探流は、自分の手首に巻き付いているネクタイを、全力で引き剥がそうとしていた。


「ファック……!!クソ硬くて取れねぇ……!!」

「取る必要なんて、ないでしょう?」

「大いにあるんだが!?」


ウィルフレッドは、小首を傾げる。


「はて……私と渇探流君の愛の誓いに、なんの不備が……?」

「不備しかねぇんだわ!!」


バシン!!と、渇探流はウィルフレッドを叩いたが、ダメージが通った気がしない。

そんな化け物護衛は、渇探流にニッコリと笑いかけた。


「死が2人を分かつまで———ですよ」

「ネクタイにそんな意味はねぇ!!」


キーーーー!!と、渇探流は地団駄を踏んだ。そんな二人を見て、響は呆れたようにため息を吐いた。

——そんなやり取りをしながらも、渇探流達は『誰もいないはずの』アトラクションへと進んでいた


「おいバカップル。神話事象真っ只中なのにイチャつくな。そろそろジェットコースターに着くぞ」

「バカップルって言うのやめろ響!!」

「事実を言っているだけなので問題ないのでは?」


問題しかないわ!!と叫ぶ渇探流を引きずって、4人はジェットコースターへとたどり着いた。

そこには———一見、普通のジェットコースターがあった。


「……普通、だな……?」


渇探流が注意深く辺りを見回してみると、特定の座席に大量の血痕が発見された。全然普通じゃなかった。


「嫌な予感リターンズ」

「その予感は以下略」


とにかくジェットコースターに乗らなければ、スタンプが押せない。

渇探流達はそれぞれ———と言うか、響と晶ペアが前、当然のようにウィルフレッドと渇探流ペアが後ろで、ジェットコースターに乗り込んだ。


「たまには配置換えしてもいいと思うんだが……」

「渇探流君が上になるってことですか……?」

「お前はなんの話をしているんだ??」

『ようこそ⭐︎ワクワク⭐︎首切り⭐︎ジェットコースターへ!!』

「不穏しかない名前出てきたなおい!!」


渇探流がそう叫んで立ちあがろうとした時には、既に安全バーが降りてきており———まるで逃がさないとでも言うように押さえ込まれ、ガッチリと固定されていた。


『それでは⭐︎皆さーん⭐︎いってらっしゃ〜い⭐︎』

「おいっ!!もうちょっと前置きとか説明とか———」


渇探流がツッコミ終わるその前に。

ヒュゴッ。と、ジェットコースターは最大加速で発進した。


「………っ!!」


ゴウゴウ。と、風を切る音が耳を揺らす。ジェットコースターのコースはめちゃくちゃで、上下左右は当たり前、捻り、回転を加えて渇探流達の頭がおかしくなるほど振り回してきた。

もう、どっちが上でどっちが下か、一瞬でわからなくなる。


「トンネル———首、下げ———」


その時、晶が何かを叫んでいた。

ジェットコースターは物凄い勢いでトンネルへと突っ込んで行く。

———この、トンネル、異様に低くないか?

渇探流は反射的に、首を下げた。

そして———一瞬でトンネルを抜けた先で。

びしゃ。


「…………??」


目の前の響の『首』が無くなり、噴水のように血潮を吐き出しているのが、ハッキリと見えた。

ビシャビシャ。と、風に乗って、響の血液が渇探流の顔に当たる。

———ああ、座席が血に塗れてたのって、こういう……


「大丈夫ですか!?渇探流君!!」

「だいじょば———」


ない。と言おうとした時に、また次のトンネルが見えたので、再び渇探流は顔を下げた。

———そして、ジェットコースターは何事もなく、終着した。

ポタポタと髪から流れる、『響の血』。風が止んで、耳鳴りが治り———


「響……!?響!!」


渇探流は安全バーが外れるや否や、響に駆け寄った。

そこには綺麗に切断された、首から下だけの、響の胴体。

渇探流の顔が青ざめ、カタカタと手が震える。

響なら、大丈夫だと、無意識のうちに思い込んでいた。

込み上がる吐き気に、口を押さえ———


「……なんだ?ここは……おいっ、そこの君———……いや、君は……カトゥールか?」

「…………ひび、き……?」


ジェットコースターの入り口から入ってきたのは、私服姿の『白石響』だった。


「響……?」


ポカン。と、渇探流は口を開け、未だに血液が吹き出している、スーツ姿の響と、私服姿の響を交互に見る。


「お前……響なの……か……?」

「白石響様だが?そんなことよりカトゥール。また神話事象か?血塗れじゃないか。一体どんな酷い目に———ん?」


渇探流に歩きながら近寄る響を、ウィルフレッドが間に入って止めた。


「あなた、どっちなんです?」

「どっち……とは?」


白石響は、心底不思議そうに、首を傾げた。


「……というか、お前、あの士道ウィルフレッドじゃないか?なんでこんなところに———んっ?カトゥールを守るってことは……もしかして……カトゥールは、『医里渇探流』なのか?」

「……はっ……」


渇探流は、無意識に息を詰めた。


「それじゃあ、これからは『渇探流』と呼んだほうがいいか?……そっちの方が、いいよな?」

「ひっ、ひびき……!!」


渇探流はウィルフレッドを押し除けて、私服姿の響に駆け寄った。渇探流は、何かを否定しようとして———響の『首』に、真っ直ぐ、一本の線が引いてあるのを見つけて、また息が詰まった。

思わず、その線に手を伸ばす。

しかし、その線は———渇探流の指が届く前に、スゥッ。と、消えていった。


「響、お前……どこまで記憶がある?」


手を引っ込めた渇探流が、響に尋ねる。ふむ。と、響は顎に手を当てて話し出した。


「所々、曖昧な部分は、あるが……遊園地?に来て、カトゥールが……いて?それと……何かをしていたような……?」

「だいぶというかほぼ曖昧じゃねぇか」

「ふっ。この白石響様に出来ないことはないのさ」

「あっ、そうだ……スタンプカード……」


渇探流は、頭が無くなった響に近づくと、ゴソゴソとポケットを漁る。


「あった。よかったな、響。血飛沫で少し汚れてるが、まだちゃんとスタンプは押せるぞ」

「そうか、ありがとうカトゥール。じゃ、ない。渇探流」

「……響には、カトゥールと、呼んでほしい」

「そうか?それならこれまで通りといこう。俺もそっちの方が話しやすい」

「渇探流君、血を拭きますよ。他の男の体液に塗れてる貴方は解釈違いです」

「言い方が気色悪いんだわ」


そんなやり取りをする三人を見て———晶は1人、ニコニコと、笑って見ていた。


「———3回目までは、大丈夫。ですからね」


楽しんで頂けたようで、なにより。

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