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三日看病した護衛が全快→距離感バグ→寝たら神話事象に放り込まれたんだが

——三日間、寝ずに看病した護衛が、五秒で全快した。


「———というわけで、全快しました」

「医者に謝れ!!」


三日間、寝ずに看病した、俺の努力を返せ。


あの後なんとかウィルフレッドから逃げおおせた渇探流は、全力でツッコミを入れていた。

自分で自分に『治癒』の呪文を使ったウィルフレッドが、簡単に全快したものだから。

あれだけ———夜も眠れずに看病した自分がアホらしく感じるほど、ウィルフレッドはアッサリと、全回復しやがった。

渇探流は更に濃くなった隈で、更に悪くなった人相で、ウィルフレッドを睨みつける。

しかし当の本人は渇探流の睨みなぞどこ吹く風で、病院着から普段着に着替え出した。

——うわっ……傷、えぐ。

渇探流はウィルフレッドの晒し出された上半身を見て、軽く———いや、かなり引いた。

その視線に気がついたのか、ウィルフレッドはニコリと笑う。


「貴方を守った勲章です」

「1番コメントしづらいやつやめろ!!」


叫んでから、渇探流は先程までウィルフレッドが寝ていたベッドに突っ伏す。

———眠い。

実は丸3日、寝ていなかったのだ。身体の方がそろそろ、限界を訴えていた。

渇探流は顔をベッドに埋めて———スルリ。と、首筋にウィルフレッドの手が這って、飛び起きた。


「なんだよ!?ビックリしたわ!!」

「いえ……色っぽいな。と思ったので、触れておきました」

「気持ちの悪いことを言うな!!もういい!!ウィルフレッドも回復したし、俺は自室に戻るぞ!!」


そして寝る!!と渇探流は言い捨てて病室を出たのだが、当然の如く爆速で着替え終わったウィルフレッドが跡をついてきた。


「ここは安全地帯だろ!?ついてくんな!!」

「渇探流君、電子機器使えなくなってしまったんでしょう?前より離れられませんよ」

「なんで把握してんのお前!?怖っ!!」

「うっすら意識があったり無かったりを繰り返してたんですよ。そうしたら、渇探流君の声が聞こえてきて」

「内容まで普通覚えてるものなのか……?瀕死の状態なのに……?」

「渇探流君のことですので」


渇探流が顔を青ざめさせて、更に早歩きになる。しかし、ウィルフレッドはそんな渇探流の手を、当たり前のように掴んできた。


「今度はなんだよ!!離せ!!」

「『まずは手を繋ぐことから』でしょう?」

「ぐむっ……!!」


自分から言い出したことなので、渇探流は若干、口籠る。しかし、すぐに追撃をしかけた。


「会えない時間が、愛を育むらしいぞ?」

「そうですか。寂しい愛ですね」

「ちくしょうこの路線はダメか」

「なら、会っている時間で育てましょう」

「何をだよ!!何も育たねぇよ!!」


そう言いながら、渇探流は自室へと入る。当然の如く、ウィルフレッドの目の前でこれ見よがしに扉を閉めてやったら、普通に手が挟まって痛そうだった。


「なんで!!手を!!離さねぇんだよ!!」

「『まずは手を繋ぐことから』でしょう?」

「四六時中繋いでていいって意味じゃねぇんだわ!!」

「許可はすでにもらっていますので」

「出した覚えはねぇが!?」

「忘れたとは言わせませんよ」

「だから出した覚えがねぇんだって!!っつーか、手!!痛くねぇのかよ!?」

「痛いですが」

「離せよ!!」


渇探流はぶんぶんと手を振り回すが、ウィルフレッドの手は離れる気配がない。

しばらく格闘したが、相手に全く離す気がないし、振り解けもしないと諦めた渇探流は、扉を開けた。


「……こんなことしなくても、お前、普通に入ってこれるだろ……?」

「渇探流君に開けてもらうことに、意味がありますから」

「あーはいはい。そうかよ」


もう、勝手にやってくれ。と言った精神で、渇探流はウィルフレッドごと、ベッドに潜り込んだ。

そうしたらウィルフレッドは手を離して、渇探流を抱き込んできた。


「おい、これは許してねぇぞ」

「そうでしたっけ?」

「選択的健忘やめろ」


しかし、渇探流はもう、限界だった。ウィルフレッドの体温が高いのもいけない。ポカポカと温まる身体は、疲労に任せて———落ちるように、眠った。


「……可愛い。食べたい」


腕の中で死んだように眠る渇探流を見て、ウィルフレッドは、ペロリと、渇探流の唇を舐めてから———同じように、就寝した。


「今は、まだ……味見で、我慢しておきますね……」


ふふっ。と、笑ったあと、寝息が聞こえた。


———そして、目を開けた時には、何故か渇探流とウィルフレッドは、人気のない、廃遊園地のど真ん中で立ち尽くしていた。


「…………まっ………!!」

「神話事象ですね。『今度』は私もついてこれたので、僥倖です」


これから毎日一緒に寝ましょう。とのたまっているウィルフレッドを尻目に、渇探流は小声で———なんせ、彼は脱神話処女なので、軽率な行動は死に直結すると知っているので———小声で、叫んだ。


「また———この、展開かよぉ……!!頼むから……!!静かに、寝かせてくれぇ……!!」

「早めに帰って、寝直しましょうね、渇探流君」


にこり、とウィルフレッドが笑う。

——その余裕が、一番ムカつく。

……それでも。

ほんの少しだけ、安心している自分がいるのが———

1番、怖かった。

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