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中途半端は大変です!  作者: 平下駄
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表裏一体(8)

「勝負はまだ終わっていない、カードを引けよ」

 酒井は、夢路の残り一枚となったハートの7を乱暴に引く。これで夢路の手札は0枚。そしてハートの7とスペードの7を捨てて酒井の手札は一枚。勝負は決着を迎えた。


「この勝負は無効だ!」

 酒井が椅子から立ち上がり、咆哮した。

「どうしたいきなりそんな大声で」


「これを見ろ! 僕の手札に残ったカードはクラブの3。ジョーカーじゃない。夢路、貴様イカサマですり替えたな?」

 ソラと将棋部は体を硬直させる。一方当の本人はいつも通りの様子である。


「どれ、見せてくれよ」

 夢路は酒井の手元からカードを軽く引き抜く。そのカードを見ようとソラたちは夢路の元に傾れ込む。

「これのどこがクラブの3なんだ?」

 夢路の手にはジョーカーが一枚のみ存在している。


「本当だ、ということは先輩は順当に勝ったってことですか?」

「当たり前だ。先に手札を無くした方が勝ち、このルールに従って戦ったまで。何か文句があるか?」

 夢路はジョーカーを酒井に返却する。囲碁部の三人は苦虫を噛み潰したような顔でただ黙り込んでいる。


「では、この教室は今から探偵部のものになった。将棋部、囲碁部の諸君は速やかに退去してくれ」

 キッパリと言い放つ夢路。


「良かったな、チビ助。これで欲しかった支部室が確保したし、明日からここでも部活が出来る」

「いやいや、そんな話初耳ですよ」

「夢路さん、僕たちの相談は?」

 ソラは冷静にツッコミ、加藤は真面目な面持ちで尋ねる。


「ああ、そういえばそうだった。せっかく新しい寝室が手に入ったと思ったんだがな。依頼とは少しずれるが、この部室は将棋部に譲渡する。後は好きに使え」

 前半の話はなまじ冗談に聞こえないが、探偵部はこれで一先ず依頼人のニーズは完璧に満たした。後は彼らがどうするかである。


 加藤をはじめ将棋部のメンバーが囲碁部の元へ向かっていく。

「酒井、色々あったがこれでこの部室は再び将棋部のものになった。君は、去年からずっとこの部屋の乗っ取りを考えていたのかい?」


「……そうさ。はじめからそのつもりで計画を練って、勝負を持ちかけた。もっとも、それも最後の最後で夢路くんにしてやられたわけだが。言っておくが、加藤。僕たちに和解はない。お前たちはもう一回やり直そうなどとほざくつもりだろうがこちらにその気はない。そして、その甘さにつけこまれたということは肝に銘じることだな。そして夢路、覚えておけよ」

 それだけ言い残すと酒井は部室から出て行った。残りの二人も慌てて後を追った。


「ずいぶんと傲慢なやつだな。仲間に入れてやるなんて一言も言ってないのに

 自身への挑戦状は完全に無視した発言。いつか後ろから刺されるぞ。

「夢路さん、今回は本当にありがとうございました。部員はまた一から探さないといけなくなりましたが、これで部室は何とか存続できました」

 加藤は深々と頭を下げる。


「そのことなんだが、俺たち将棋部に入っても?」

「え、構いませんけどいいんですか?」

「あくまで名前を貸すだけだがな。そして、俺にとってはもう一つの寝室だ」

 部室を寝室と捉えている辺りは気になるが、その提案にソラも文句はない。こうして、将棋部の相談は幕を閉じた。


   ***


「そういえば、囲碁部の人たちのイカサマって何だったんですか?」

 探偵部の部室に帰る途中、ソラが夢路に尋ねる。

「おそらく、物質の表面を入れ替える能力だろう。かなり距離が限定的で隣り合うもの同士しか対象に出来ない」


 夢路は己の推理を話す。加藤との対戦でカードを手の平に置いたのはそれが理由か。後ろから見ている夢路に入れ替えの瞬間を見られないようにするための措置。囲碁部の一人が探偵部の見学に対して声を荒らげたのもこれが関係しているのだろう。


「なるほど、最後の最後、ジョーカーとの二択の時に使っていたというわけですか。あれ? でも先輩はどうやって勝ったんです?」


 夢路は酒井の3枚の手札から真ん中のカードを引き抜いていた。隣り合うもの同士を入れ替えるのなら、それが確定でジョーカーであるはずなのに、どうしてわざわざ選んだのか。そして、どうしてそれでジョーカーを回避出来たのか。

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