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中途半端は大変です!  作者: 平下駄
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表裏一体(7)

『先輩、まさか彼らを見殺しに?』

 頭の中が混乱して、足がフラフラする。ソラは力無く夢路の方を向く。


「へえ、将棋部と囲碁部はこの部室を賭けていたのか」

「ええ、そうです。部室がなければ実質部活動は出来ませんから、夢路くんも入るなら是非囲碁部の方に」

 酒井の笑顔の申し出を受けた夢路は、今度は囲碁部の面々の正面に回る。つまり、将棋部の方へやって来る。


「それもいいが、もうひと勝負といかないか?」

「勝負? ですがもう賭けるものがありませんよ。この部室は全て僕たちのものですから」

「探偵部の部室とこの部屋で、ってのはどうだい?」

 その場にいた全員が夢路の方へ視線を集める。


『そうか、先輩は初めからこれが狙いで』

 ソラと将棋部はここで夢路の意図を理解する。あくまで先の一戦は、夢路にとって情報収集が最大の目的。その時点で相手のイカサマを暴き、次の戦いでそれを叩き潰す。なるほど、理にはかなっているような気がする。しかし、


『それでも一言言っておいてくださいよ!』

 いくら相手に違和感を与えないようにだとしても、こちらの安心とかその辺りも考慮しておいてほしい。


「いいでしょう。探偵部と囲碁部、互いに部室を賭けての勝負受けます」

 酒井が少し考えてから、勢いよく返事をする。

「おい、大丈夫なのか?」

「そうだよ、相手はあの夢路だぞ?」

 囲碁部の他の部員が慌てて尋ねる。


「何、いつも通りやればいいだけさ。どうする? いつもは僕たちは三対三でやっていたが、どうせなら一対一でどうだい? 部員を連れて来るのはたいへんだろ?」

「いいねえ、そっちの方が手っ取り早い」

 こうして酒井の配慮もあり、探偵部と囲碁部の勝負が始まった。


「ディーラーはチビ助でいいか? 一応探偵部の人間だが」

「ああ、ということは君が今際さんか。別に構わないよ、カードを配るくらい。それと、いつもは新しいトランプを使って戦っているんだけど、さっきのを使い回しても? 生憎もう用意がなくてね」

 封切りを使っているので、囲碁部のイカサマはカードそのものにはない。おそらくその仮説をソラは立てていたが、夢路はどう返答するのか。


「こっちも構わないさ。さっき見た限り特に変なところもなかったしな」

「……ありがとう。では、今際さんカードをシャッフルしてください」

 ソラは言われるがままカードをシャッフルし、二人にカードを配る。


「一応ルールを確認しておきたいんだが、互いにカードを引き合う中で数字が同じペアを捨てていき、手札を最後に無くした方の勝ち。これで異論ないよな?」

「うん、大富豪みたいにローカルルールが沢山あるようなゲームではないからね。シンプルにそれだけさ」

 ゲーム開始前に夢路がルールの確認を行う。


『待てよ。先輩は簡単に部室を賭けるなんて言っていたけど、もしこの勝負負けたら私たちも将棋部みたいに存続が……』

 配り終わってから恐ろしいことにようやく気づくソラ。己が心血を注いでいる部活すら簡単にチップにしてしまう男をまっすぐ見つめる。


『先輩、頼みますよ!』

 探偵部と将棋部の命運、どちらも背負った夢路は何を思っているのか。


 先程とは打って変わって、ゲームの進行は驚くほど早い。あっという間に最終局面へ。夢路が残り二枚、酒井が三枚に。ソラの目にはスペードの3とハートの7が映っている。


「これはさっきよりも厳しい確率を乗り越えないといけないのか」

 酒井が口を開く。確かに先程の加藤との一騎打ちの場面と違い、今回は三分の二で夢路が勝利する。不利なのには変わりないが、酒井は顔の前でトランプを並べながら落ち着いている。さっきみたいに追い詰められてトランプを手のひらに並べることはしていない。


 ソラにはその姿が余裕たっぷりに見える。しかし、それは夢路も同じ。鷹揚と手を伸ばし、夢路はど真ん中のカードを引き抜く。


 夢路はすぐさまテーブルにスペードの3とクラブの3のペアを投げる。その様子を見て、ソラは歓喜の声を上げる。

「先輩! やりましたね!」

 遅れて将棋部が安堵のため息を吐くのが聞こえてくる。その様子に、囲碁部は唖然としている。

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