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傾国の姫  作者: 安田鈴
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第七十二話

お久しぶりです…!

なかなか更新できなくなってしまって申し訳ございません。

長いですが、ちまちま書きためてた分です。

「まあ、本当にお人形のよう!可愛くてよ、ユリフィナ」

「ありがとうございます。太陽を宝石にしたようとたたえられるエシャンテ様に、そう言って頂けるなんてほんとうにうれしいです」

「ふふ、このお人形さんは頭もよくてとっても素敵。残念だわ、貴女が何の背景もない無力な子供であったらよかったのに」

 艶やかな微笑みを浮かべ、意味深に目を細められた。

 私はそれを、にこ、と無邪気に笑って受け流……


 ―――私は何も聞かなかった。何も聞こえなかったよ……!無力な子供だったらどうなってたかなんて、ぜんっっぜん考えてませんから!考えたくないですからぁ……!!


 ……せなかった。

 もはや脳内は一刻も早くこの場から逃げたいと、警報がかーんかーんかーんと鳴り響いている。

 聞き慣れた音だと感じてしまうのは私の気のせいだろうか。気のせいであってほしい。え、気のせいでしょ?

 私は今無我の境地に至っていた。そう、悟りという名の現実逃避である。この人生で最も必要なものを、手に入れてしまった。もう一度言おう。手に入れてしまった…!

 もう末期だって?

 知り尽くした上での悟りですが、何か?


 私は今慈悲深い菩薩の顔で目の前の隠そうとも隠しきれない迫力のむね…げふん!くびれ…げふげふっ……美女を見ていた。


 うん。………………………すごい。


「どうかして、ユリフィナ?」


 びくぅっと背筋が伸びた。

 そっと視線を上げれば、先ほどと寸分違わず艶然と微笑む美女の目と合う。

「な、何でもございません。少し……み、見惚れてしまいました……」

 耳まで赤いだろう顔を隠したい一心で俯く。


 私は男か!下心満載の青少年か!見惚れるならピンポイントじゃなく、この美女の全身に見惚れるべきだろ!なんだこの美しさは!けしからん体を…………………って違う!

 混乱したまま必死に膝に置いた自分の小さな手を見つめた。




 エシャンテ様はこの数週間で変わるわけないけど、変わらぬ美貌のまま、学院にいらっしゃった。

 悩ましい肢体を禁欲的な制服に包み、かえって色気を煽るという不可思議な現象を起こしているのが、故意か本人もどうしようもないことなのかはわからないが、彼女の来訪は学院に衝撃をもたらした。


 大陸中の数多の魔法使いが憧れ、畏敬の念を抱かれるエリート中のエリートが通うシヴァイン魔法学院だが、その彼らでさえ理性が本能に負けるという、悲しくも正しき典型的な例を見せてくれた。


 彼女が歩けば自然と視線は釘づけになる。

 どこにって、そりゃボンでキュッでボンなところですよ。


 コルセットなんてしてないのに、豊満な胸から腰にかけての誘うかのようなくびれの引力、ひざ丈のスカートからふとした瞬間に垣間見る膝裏や、その完璧な太くも細くもない足首への曲線。

 それはもう艶めかし過ぎた。とてもたった十五歳の少女とは思えない肢体に、理性が煩悩に負ける瞬間をこの学院にいる誰もが目撃し、体験した。


 しかも、だ。

 そのプロポーションに加えて…いや、それすら引き立て役にする美貌の顔。ちょっと傲慢に見えるはっきりとした目鼻立ちは、それさえもが魅力的だ。

 日々丹念に磨き上げられた美貌は、元々の素養を大きく成長させて輝くばかり。

 美は元がいい状態で磨かれると、ある種の破壊兵器になると体現するかのようだ。


 断言しよう。

 私が男なら跪いている。下僕志願さえ嘆願しただろう。


 女子生徒ですら思わずごくりと喉が鳴ったのだから、その破壊力の凄まじさをわかってくれるだろうか。

 知能は種の存続の本能には勝てないのかと、挫折を味わった青少年も多い。彼女が来てからというもの、色々なものを晴らすために演習場の稼働率が高いと先生が溜め息を吐いていたくらいだ。


 本当に、本っっ当に、残念である。

 悲しい煩悩も、この美しい人が近く人妻になるということにも。

 ……いや、かえってそそるような気も……


 ………………………ごほん。

 とにかく、彼女は刺激的すぎた。

 その衝撃に沸く学院に、彼女の願いを叶えたレオヴィスは苦笑いを浮かべ呆れたような息を漏らしていた。

 いや、半分貴方のせいでしょ!?なんて命知らずな突っ込みはもちろん脳内で叫び、抹消した。

 ……言葉にした瞬間知られる気がするのは、小心者ゆえか。思わず振り返って背後を確認してしまった私は、王女なのにどこまでも小市民だ。


 まあとにかく。

 エシャンテ様は華々しい美貌と圧倒的な存在感で、一瞬で教職員を含む学院のほぼ全員を支配下に置いた。

 ……彼女のために至れり尽くせりと自主的に動く生徒や先生を見て、支配下に置いてないなんて考える人はちょっとどうかしてると思う。その目も思考も。

 かく言う私もお人形として、休日である今日も朝から彼女の部屋で彼女の目を愉しませるためだけの着せ替えごっこをしている。

 言う必要はないと思うけど、そこに私の意思などありませんでした。ええ。

 精神的には二十歳なんだけどなー……まあ、綺麗で可愛い服を着るのは大好きですが。

 鏡を見れば破壊的に可愛い美少女が出来上がっていれば、私の中に文句など出ようはずがなかったと今になって思う。

 ナルシストってこうやってできていくのかなーと、最近思う次第であります。




「ユリフィナ?」

「はい!」

 ちょっと裏返った声で慌てて返事をすると、エシャンテ様はくすくすと高貴な微笑みをこぼした。

「どうしたの?なんだか上の空ね。疲れてしまったかしら?」

 めっそうもない!とぷるぷる首を振って否定する。

 声もなく必死に首を振る私にエシャンテ様は慈愛ともとれる、それはそれは美しい微笑で、うそね、と呆気なく私の虚勢を看破した。

「全く知らない土地に来て、新しい環境に馴染むにはそれなりに時間がかかるものよ。それでなくとも私の相手をするのは疲れるでしょうしね」

「そ、んなことは!」

「あら、言葉が詰まったけれど?」

「っ」

「ふふ、そんなに青い顔をしないで?これでも私、自覚はしているのよ。私の相手をさせるのは精神的に苦痛を与えるって」


 えー…と、わかってて、それでも相手をさせるって……

 さすがユーリトリア王族。なんてドSを標準装備してるんだ。


「でもそれで相手のことばかり慮ったら、私の相手をしてくれる人なんていなくなってしまうじゃないの。私の身分に畏縮しようが媚びへつらおうが、そんなものは相手の勝手。真実私の手で畏縮させたことなどありはしないのに」


 ほんの少し目を眇め、けれど固定されたように高貴な微笑みは変わらない。

 ―――それが彼女の処世術であるのだろう。

「ユリフィナ?まだ人を知らぬ貴女にいいことを教えてあげる」

 楽しい内緒話でも話すかのようにほんの少し声を落として、彼女は微笑む。

「私はね、母の言葉しか聞かないわ。国王陛下である父の言葉さえ、私の意思に届くことはないの。王女に相応しい教養も才能も覚悟も、私は身につけた。国王陛下の駒として、どこに行っても十分に働けるようにね。それが私の生まれ持った環境だもの、不満などあるはずもないわ」


 美しいエシャンテ様。

 絶対君主の国王から、王妃である母と同じほどに溺愛され我が儘に振る舞い、彼女の扱いにくさを他者に知らしめる。小さな女王様を止めるためには王妃にお願いを奏上しなければならない。

 それがどんな意味を持つか……ふと、脳裏に浮かんだ考えにはっとした。


「不満などない……なら、その環境を維持しなくてはいけないわ。私の身分も顔も、私の全てを使ってでもね。……溺愛される王妃の地位が揺らぐなんて、そんな馬鹿な考え周りの者が改めなくては。いくら優秀な側室の息子がいようと、王妃は民の母。その地位が愛人に取って代わられたら不愉快極まりないわ」

「……」

「私は私のために私が持っているもの、持っていると周りが勘違いしているもの、そのすべてを使うわ。

だから、ね。ユリフィナ。貴女ももう少し我が儘になっていいのではなくて?いい子でいるのはとても窮屈で、とても簡単で楽なこと。だけど、貴女は貴女だともっと主張しなければ、周囲の強い力にもっと振り回されて、振り回された挙句に潰されかねない」

「それは……」

「―――ふふっ貴女を一番振り回してる人間の姉が言うことではないわね」

 エシャンテ様は一言そう言って、無機質とも呼べるほどの高貴な微笑みで命令する。


「さあ、こんな話はおしまいにして、次のドレスを着てみて?」

 美しい女王様の絶対のお言葉に、私は引きつった顔で精一杯笑って頷いた。







「―――さて、と……」

 レオヴィスは台の上に乗せた黒猫の死骸を見やり呟く。

 キールの町からここまで持ち帰るのに些細な労力を払ったが、それでもこの死体(・・)は必要だった。

 ルーフィンというだけで証拠となるこの死体が、どれほどの情報を持っているかはわからない。取り戻しに来ないところを見ると、証拠ではあるが重要な情報までは持たせていなかったのだろう。

 最終的には状況証拠にしかならないだろうな、と冷めた思考で物言わぬ姿になった哀れなトカゲのしっぽを思う。

 だが、こんな些細な証拠でも積み上げれば黒幕の正体につながるのだ。


 目星だけは、ついている。

 だが徹底的に、神経質なほどに証拠を残さずに、こちらの邪魔をしてばかりいた黒幕につながる重要な手がかりだ。

 何としても、ほんの小さなことでもいいから情報という証拠を集めたい。


「腐らせないよう凍る直前まで冷やしておいたが、うまくいったか?」

「そうですね、腐敗臭はしませんし、眼球も腐り始めていませんので大丈夫でしょう。お願いします」

 リィヤの言葉に軽く瞬きをして返し、黒猫の死体に手をかざす。

 ぼぅ、と光が一瞬吸い込まれ、やがてじわじわと滲むように光が漏れ始めるとその姿が変わっていった。


 凡庸な、と表現するのがこれほど似合う容姿はないだろう。

 平均的な背丈によく見る色合いの髪、顔立ちは良くも悪くもなく人の波にのまれたら間違いなくすぐには探し出せないほどこれといった特徴がない。

 まさしくルーフィンにふさわしい人材であるといえよう。


 リィヤとは正反対の人材だな。


 かつて姉に、この国では珍しい「魔力がない貧困層の奴隷」として見いだされ、奴隷にふさわしくこれ以上ないほど振り回された挙句にルーフィンの者として教育をされた子供。


 明かり一つでさえ、この国では魔力が必要なほど魔法が浸透している。ファスカやスリファイナならばほとんど必要もない魔力が、この国では重要な力の一つとして人々の思想の根本にあるのだ。

 魔力が少ないだけで就ける職業が極端に減り、単純な肉体労働でしか賃金を得られず、その賃金も少ないとなれば、必然魔力がないだけで貧困層に陥る。

 金もなく蔑まれ惨めに生きていくだけの人生。それが、この国で魔力がないというだけで生まれた瞬間に決まる運命だ。


 そんな中、すべてに絶望し、諦め、やり場のない怒りすら沸き起こることもなく暗い顔をして姉に連れられてきたリィヤという年上の少年は、姉が連れ歩けるようにと身綺麗にして、姉のそばにいることを許されるくらいには小奇麗な顔をしていたが、それだけだった。

 姉のどんな我が儘にも無茶ぶりにも何一つ顔色を変えることなく、淡々と返事をし行動し、生きることを足掻く素振りもしなかった。


 世界を呪うことさえも諦めた、正しく無気力な子供だった。


 姉は初め何をしても受け入れる便利な道具として喜んでさえいたが、やがて何をしても眉ひとつ動かさない諦めきった顔の子供に興味をなくし始めた。


「なんだかつまらない子」


 そう言って段々と無茶なことをさせるようになっていったのを、呆れながら見ていた。


 今すぐ赤いバラがほしいの、とバラの咲かぬ季節に命令され、困った顔をするでもなくこくりと頷き外に出ていこうとしたのを見たときは、いったいどうするつもりかと興味半分に後を追った。

 リィヤは庭に出て青々とした葉が茂るだけのバラ園に足を運び、何度かゆっくりと瞬きをし、踵を返した。なかった、と馬鹿正直に言って嫌味を混ぜた罵倒をされに戻るつもりかと、さらに呆れた。


 当然戻る際にはその後を追っていた主の弟に出くわす。

 少しは狼狽するかと見上げながら観察すると、年上のその子供は一瞬こちらに視線をくれただけですぐに視線を落として礼をとった。


 姉が徹底的に教育させた最低限の作法。作法などというものは身につければそれぞれの個性が出るというのに、何か月たっても教えたままの、教科書通りと呼ぶにこれほどふさわしいものはないくらいの無個性だった。


「お前は無になりたいのか?」


 呆れ果てて思わずそう聞けば、年上のその子供は微かに視線を揺らして考えこむようにまた落とした。

 答えないか、ともはや興味もなくしてその場を後にしようとしたとき、小さくその口が動くのを見た。


「……消えるのが無になるなら、そうなりたい」


 なんと愚かな、と苛立ちが眉間を走り抜けた。


「ならば今すぐ消えればいい。姉上ももはやお前に残す興味はほぼないだろう。探しもしない」

「……」

「まさか消えることすら人任せか?姉上も酔狂な人だが、飽きた道具にかける情などないぞ。ある日突然姿を見せることもなく侍従の判断に任せて、お前を宮の外に放り出すだろう。それとも死にたいという意味か?この宮の外に出て一か月もすれば望むようになる。……お前は本当にただの道具だな。人であることを捨てて自分の運命を誰かに任せるなど、命と資源の無駄だ」


 どうしてこんな簡単なことを自分のものでもない奴隷に教えてやらなければならないのか、甚だ不本意だった。

 当時僅か三歳だったが、膨大な魔力を持って生まれた者は総じて早熟な子供になる。

 思考能力は大人と同じだと言って差し支えもないくらい、その頃には知能が発達していた。


「いのちとしげん……?」

 心底不思議そうな顔で反復され、ため息すら疲れる気がした。

「そうだ。……お前は何もかも人にされるのを待つだけか?知的好奇心すら持たないとは、人間として生まれて恥ずかしいとは思わないのか」

「はずかしい……」

 ぼんやりとした言葉の繰り返しは、まるで生まれて初めて聞いた言語を呟いているかのようで。

 この世界の最下層に生まれた人間が辿る人生を垣間見たようだった。


「……いい。どうせもう顔を見ることもないだろう。生きることを足掻くことなくこの宮で生き抜くなどできない。姉上もお前に飽きているだろうしな」

 酔狂なことがお好きな姉上にしてはまともに扱っていたほうだろう。

 おそらくは魔力がないという珍しさと、顔が好みだったか。

 どちらにせよ、そう興味が続くものではない。

「ではな。次にもし出会うことがあれば、その時は……そうだな、お前にこの世界の行く末を見せてやろう」

 その時お前が生きていれば、と口には出さずに踵を返した。


 もし、など仮定したところで現実にならなければ意味はない。

 けれどもし(・・)生きていて、その時に生きることへの気概があるのなら……


 その時は、この珍しい姉の奴隷を道連れにするのも悪くないだろう。

 魔力があること、複雑な思惑が絡む第三王子であることで日々煩わしい人間関係に心底辟易していた。

 生きることへの気概のなさ以外は、この年上の子供は静かで己の立場をよくわきまえていて、頭もそれなりに回転が速いところがいい。

 理想に近い従者だと思えた。




 ……その後何がどうしてあんな性格になったのかわからないが、リィヤは微かな姉の興味を精一杯引きづり生きながらえ、これもまたどうしてそうなったのかわからないが、いつの間にかルーフィン一族に引き取られ見事な教育を施されて、魔力のない珍しい奴隷の年上の子供は再び目の前に立った。

 隙のない柔らかな美貌とその顔に浮かぶ微笑は、まさに姉の好み通りだったのが印象的だった。


 影に徹するはずのルーフィン一族にとっては、この美貌は異端児であったろうに。


 そしてまた約束通りにリィヤを道連れにするには、目立ちすぎる。

 そうは思ったが、それすらはねのけ生き抜いた気概はどれほどのものだろうと、かつて失せた興味が湧き上がるのを感じた。

 リィヤはその顔のせいで『ルーフィン』としてはほとんど使えない。

 だがルーフィンという名前の威力を身にまとわせることはできる。

 煩わしい人間関係をこれ一つで振り払えるのだとしたら、もうこれ以上望むべくことはないだろう。


 顔以外に残る興味などほとんどないだろう姉の説得をし、リィヤを侍従とした。

 狙い通りにリィヤ・ルーフィンという名は、この身に群がる煩雑な人や物事を一気に減らしてくれた。


 主以外には『死神』となる気性だけが知られる、ルーフィン一族。

 実際に真偽を確かめもせずに侮って群がり手を出してきた者たちを、言葉通りに減らしてくれたのは従者として置いてからわずか半年の間のことだった。

 半年の間にこの世から減らしてくれた人数は、近づかないように脅した人数より遥かに多い。

 しかもこちらが後始末をしなければならないような、そんな杜撰なやり方をしなかったこともリィヤに対する評価を上げた。

 証拠などない。だがその半年の間にいなくなった者たちの共通点は、『第三王子』に取り入ろうと群がっていたこと。

 それを周囲が理解するのは割と早かったように思う。




 このリィヤを除けば、ほかに誰がそうであるのかを誰も知らない。

 死体でない限りは主にも同胞を教えないのは、そのように頭の中に直接魔法を組み込まれているからだと言う。





 ―――そのルーフィン一族の、リィヤの兄弟子。


 死体を眺め、レオヴィスは唇をゆがめた。


 死体でなければ、リィヤはこれを自分の兄弟子だと言わなかっただろう。

 あの時、ユリフィナが力を暴走させなければこれは死ななかった。

 さらに言えば……ユリフィナがお忍びに出かけなければ。


 あの死神がユリフィナの手助けをしなければ―――


 たらればの話はただの偶然を後になってこじつけているだけに過ぎない。

 だが、こうも望んでなかなか手に入らなかったものが、ユリフィナを傍に置いてから手に入り始めると思わずにはいられない。


「傾国の姫……運命を死神に定められた、哀れな生贄、か」


 この滅びゆく世界にとって、その人生は正か邪か……

 それとも、彼女を手に入れた者にその判断が委ねられるのか。

 どちらにせよ、あの少女はもう過酷な運命の入り口に立った。いや、立たせたのだ。

 立たせたからには、責任を取る。




 ―――それが彼女にとっていいことなのかは、彼女にしかわからないことだけが、唯一気がかりといえば気がかりだった。




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