4-2.打合せ
4-2.打合せ
ルイザの案内で、応接室に通された。
「おいでになりました。」
とカーネギーが言うと、伯爵がすっくと立った。デリヴァもそれに習った。
茶髪の長い髪のドレスの女と、パンツスタイルで帯剣している背の高い赤毛の女騎士が入ってきた。
伯爵夫妻とともに頭を下げていると、
「面を上げて下さい。」
と騎士が言った。
「初めまして。第3王女ニコラです。こちらは護衛騎士のザシャと申します。」
「初めまして。治癒師のデリヴァです。」
デリヴァも頭を下げた。ザシャは値踏みをするようにデリヴァを見ていた。
「護衛をうけたまわるに当たり、ニコラ様の生活習慣を把握させて頂きたいのですが。かまわないでしょうか?」
デリヴァは伺いを立てた。
「え、あ…。」
ニコラは困ったようにザシャに視線をやり、ザシャが頷くと漸く、返事をした。
「はい。お尋ね下さい。」
ニコラは肩を上げ、息も浅かった。
「私は味方です。そうおびえずとも大丈夫です。お互い初対面で信用しろというのは難しいかもしれませんが。こう見えて300年はあちこち旅をして、モーンゼーン伯爵家とは浅からぬ縁です。」
「モーンゼーン伯爵は忠義の士。貴族の中でも命を預けるに足ると言われて頼って参りました。」
「はい。仰せの通り、モーンゼーン伯爵は信じるべき家系でしょう。私も控えておりますので、どうぞ安心してお任せ下さい。それでは、早速ですが、お好きな食べ物、苦手な食べ物、普段の就寝時刻や、起床時刻、朝夕のルーティンがあれば教えて頂けませんか?私自身も食事や入浴の時間を設けたいですし。ザシャさんが貼りついている時に、個人的な身の回りのことを済ませたりしたいですし、食習慣を知っておけば毒殺の予防を考えることも出来るかもしれません。」
「わかりました…。夕食が終われば比較的早く休む習慣で長く寝ます。好きな食べ物は、お肉全般です。特に鶏肉が好みです。苦手なものは、ズッキーニやパプリカが食べられないことはありませんが好みません。ピクルスも苦手です。朝は夜明けとともに起きて、洗顔をしたり、髪をとかしたりしています。」
「ふむふむ。よく分かりました。ザシャさん、後で交代で休めるよう分担しましょう。」
「承知した。」
ザシャも頷いた。
「後は・・・、なぜ狙われているのか?ニコラ様なりのご想像はありますか?お母様のご実家が弱いとか。ニコラ様は実質女王にふさわしいという噂が立ったとか。」
「兄が、二人おり、頭も良いですから。私を担いで何が良いのでしょう。私など外国の王子か、忠臣の高位貴族に嫁に出されてそれで良いと思うのですが…。確かに、私は王妃ではなく、更衣の子で、母の実家は領地の狭いカナーイ伯爵家です。ですが、カナーイ伯爵領は遠く、おじいさまに匿ってもらう前に道中襲われる可能性を危惧して、モーンゼーン伯爵領にお願いしたのだと思います。ロミルダ様は、母の妹になります。」
「なるほど。あまり王位継承順位が高くないのにどうして狙われているんですか?」
「分かりません…。第一王子、第二王子のお兄様同士が不仲で、そこは深刻です。二人の姉は婚約者がいますから、王籍離脱が内定しているのではないでしょうか。私なんか王位についても、きっと大臣の言いなりです。」
デリヴァは、その夜から、これでもかと言うほどごちそうになった。ただし、アサシン撃退の日まで飲酒は控えることにした。何度も食べ物に釣られて罠に掛けられたはずなのだが、たいがいの罠からは生還できてしまうせいか、いつまで経ってもご馳走には弱い。串焼きや鶏肉が出され、確かにズッキーニやピクルスは王女を気遣っているのか並ばなかった。
そして、ニコラ王女は夜が早いとのことで、早々に自室に戻った。
――来るなら比較的早めだろう。数日以内に仕掛けてくる。
デリヴァは簡単な結界を天井裏や廊下に張っておくことにした。
丑三つ時。
キーン。
デリヴァのエルフ耳に分かる高周波の音が鳴った。
――来たな。




